第4話 底辺配信者、チャンネル登録者数が増える。
勘違いを防ぐことができた俺は、美月たちとの会話をやめて星野さんたちの配信を見る。
「さて、次にウチらをレッドドラゴンから助けてくれたヒーロー、中島裕哉さんに登場していただきます!」
「えっ、俺!?」
「そうよ。遠慮なんていらないわ」
俺は園田さんと足立さんから手を引かれ、カメラの前に立たされる。
「ど、どうも、初めまして。チャンネル登録者数2人の底辺配信者、中島裕哉です」
〈お兄ちゃん、頑張れー!〉
〈ユウ、シャキッとする〉
〈え、チャンネル登録者数2人!?冗談だよな!?〉
〈チャンネル名を教えてください!〉
「えっ!チャンネル名!?えーっと、一応『yu-ya』という名前で活動してます」
〈『yu-ya』というチャンネルを探せ!〉
〈あった!ってマジで登録者数2人やん!〉
〈いや、今確認したら1037人だったぞ〉
〈増えすぎww〉
どうやら俺のチャンネルを登録する人がたくさんいるようで、持っているスマホの通知が鳴り止まない。
「マジかよ。数秒で1000人も登録者が増えたのか。みんな、俺の配信はダンジョンに潜ってモンスターを狩るだけの動画だからな!妹と幼馴染を楽しませるためだけの配信だから、それ以上のことを求められても応えられないからな!それでも良いよって人だけチャンネル登録を頼む!」
〈それが面白いんだって!〉
〈もう次の配信が楽しみで仕方ない〉
〈だって『yu-ya』が今配信してるサムネ『ちょっと空飛ぶトカゲ狩ってくるわ』だぜ?〉
〈『ちょっとコンビニ行ってくるわ』の軽いノリでレッドドラゴン討伐しとるww〉
「ま、まぁ、好きにしてくれ」
なぜこんなにチャンネル登録者数が増えているのかは分からないが、嬉々として登録しているようなので、放置する。
「えーっと、自己紹介はこれくらいでいいですか?」
「はい!ありがとうございます!」
俺は足立さんとバトンタッチして、自分のスマホを確認する。
「おぉ…チャンネル登録者数が10000を超えたぞ。しかも知らない間に俺の配信見てる人もおるし」
〈お兄ちゃん!一気に有名人だね!〉
〈2人しかいなかったのが嘘のよう〉
「ははっ!そうだな」
美月と紗枝以外にも俺の配信を視聴しており、美月と紗枝以外のコメントを発見する。
〈レッドドラゴン討伐を見ました!カッコよかったです!〉
〈次はいつ配信しますか!?私、絶対に見ます!〉
「そうですね。基本的に妹と幼馴染の2人から希望がある時だけ配信してるので、いつするとかは……」
〈お兄ちゃんは明日暇だから、明日配信するよー!〉
〈ユウは明日の13時から配信する予定。楽しみにしてて〉
〈ホントですか!?明日の13時からは空けておきます!〉
〈明日もカッコいいところ見せてください!〉
「………」
俺の意見など聞かずに明日の配信が決定する。
だが、俺は2人を楽しませるために配信をすると決めてるので、2人の希望を叶えてやる。
「2人が見たいなら明日も13時から配信するか」
〈やったー!お兄ちゃん、ありがとー!〉
〈さすがユウ。明日も楽しみにしてる〉
〈明日の13時から『yu-ya』の配信決定!これは拡散しなきゃ!〉
〈私も拡散します!〉
「あ、拡散はしなくても……まぁいいか。俺はいつものように美月と紗枝を楽しませるだけだ。他の人が文句言ってきても無視しよう」
そんなことを思いつつ、星野さんたちの配信が落ち着くのを待った。
その後、星野さんたちは視聴者に話すべきことを全て話し終えたようで、3人が俺の下に来る。
「お待たせしました。それと私たちが配信してる間、護衛していただきありがとうございます」
「えぇ、とても助かったわ。ありがとう」
「普段ならこんなところで配信なんかしないが、裕哉くんがいるから安心して配信できた」
「これくらい問題ないですよ。結局モンスターは来ませんでしたから」
俺は頭を下げる3人に問題ないことを伝える。
「では、星野さんたちの配信が落ち着いたようなので、俺は先に進もうと思います」
「えっ!先に!?帰らないのですか!?」
「そういえば裕哉くんってどっから来たんだ?アタシたちと同じように罠に引っかかって強制的にこの場所に来たんじゃないのか?」
「いえ、普通にダンジョンへ入る前に90階を選択してここに来ました」
「「「………」」」
俺の発言に星野さんたちが固まる。
〈ヤベぇやん!選んで90階に来たんかよ!〉
〈てか、好きな階を選べるのって、その階のフロアボスを倒さないとダメだったよな!?〉
〈ってことは『yu-ya』はすでに90階のボスを倒してるってこと!?〉
〈そうなると89階までしかクリアされてないって情報も嘘になるぞ!90階をクリアしてる男がいるからな!〉
〈なんでそんな奴が底辺配信者してるんだよww〉
「アタシら、裕哉くんと一緒に帰還しようと思ってたんだが」
「え、もう帰るんですか?」
「当たり前だ!レッドドラゴンの巣窟にずっとおれるか!」
「そうですか。なら、ここでお別れですね。俺はもう少しここのモンスターを倒す予定なので」
「「「え?」」」
「いや、そんな『絶望』みたいな顔をしないでください。俺も星野さんたちと別れるのは寂しいですが、今後もダンジョンには潜る予定なので、どこかでまた会えますよ」
〈そうじゃねぇよww〉
〈誰かコイツにレッドドラゴンの危険性を教えてこい!未だに雑魚モンスターだと思ってるぞ!〉
「待ってくれ!アタシたちの実力じゃ、ここのフロアボスを倒せない!しかもレッドドラゴンと遭遇せずに移動するなんて至難の業だ!」
「確かに、数が多いのであのモンスターと遭遇せずに移動するのは難しいと思います。ですが、あのモンスターを含め、ここのフロアボスも弱いのですぐに帰還できると思いますよ」
「え?ここのフロアボスって弱いのか?」
「はい。図体が大きくなっただけですからね」
「めっちゃ強いじゃねぇか!」
星野さんから大きな声でツッコミをもらう。
〈レッドドラゴンを雑魚モンスターと思ってる人とS級モンスターと思ってる人の会話が成り立たねぇ!〉
〈すれ違いまくっとる!見てて面白いけどなww〉
〈そして今気づいたんだが、この『雪月花』の配信、同接者が200万人超えてるぞ〉
〈マジやん!〉
〈SNSで拡散されてたレッドドラゴンを瞬殺した男を見に来たが、レッドドラゴンを雑魚モンスター扱いしてるとはww〉
(ここのフロアボスなら何度も討伐してるんだけどなぁ。でも信じてくれないし……あっ!そうだ!)
「なら俺が今からここのフロアボスを討伐します」
「は?」
〈え?〉
〈マジ?〉
「どうやら俺が口頭で弱いことを説明しても分かってもらえないようなので、実際に弱いところを見てもらおうと思います。一緒にフロアボスを倒しに行きませんか?」
「ツッコミどころしかないがアタシらは裕哉くんについて行かないと死ぬ運命だ。それに帰還するためにはフロアボスを倒すしか方法はない」
星野さんの発言に園田さんと足立さんが頷く。
「アタシらも裕哉くんと一緒にフロアボスを倒しに行くぞ!」
こうして、俺は星野さんたち3人とフロアボスを目指し、先へ進むこととなった。
〜『雪月花』視聴者視点〜
〈急遽、90階のフロアボスに挑むらしいぞ!〉
〈どんな敵か、情報すら出回ってない敵だからな!これは見逃せねぇぞ!〉
〈そして『yu-ya』の実力が分かる絶好の機会!この配信は見ねぇと損するぞ!〉
〈拡散だ!拡散せよ!〉
同接していた200万人の人たちが一斉に拡散し始め、着々と同接者を増やしていった。
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