仲良し

グカルチ

第1話

 Cさんの小学生時代の話。


 ある仲のいい少年AとBがいた。Aは明るく話が面白く人気者。Bはむしろ暗い感じで、A君に突っ込む事があっても、そのキレが強すぎ、周りが引くほどにA君に強くいうので、彼がつっこむと場が少し微妙な空気になっていたりした。


 あるとき、そのことを誰かに言われた事をきにしてか、A君とB君が大喧嘩をしたそうだ。A君はB君が大親友であり、周囲の事を気にするなというが、B君は、俺が邪魔なんだろうとつっかかる。それからしばらく口を利かない日々が続いた。


 そんなあるとき、A君とB君、そして二人の幼馴染の女の子Cさんが一緒に遊園地にでかけた。家族も一緒にいったので安心しきっていた。遊園地から割と早くかえってこれたので、家族は先に帰り、A君とB君は、家の近くの公園で夕方まで話していたらしい。この日をきっかけに仲が修復した、そこまではよかった。とA君は語る。


 だが、二人が一緒に公園を出ようとしたその時。

《キキイィイイ!!》

 すさまじいブレーキ音がして、公園の入り口に車が突っ込んだ。そこでB君は、不運にも下敷きになりなくなった。即死だった。A君は奇跡的に無傷だったそうだ。


 A君は暫く落ち込み、学校を休みがちだったが、Cさんの励ましによって登校をはじめた。実は、CさんはもともとB君は、A君を突っ込みとはいえおもいきり叩くし、陰気な感じがするし少し苦手だった。死んでしまえとは思わなかったものの、事故の件も、彼が何かを仕組んだのではないかとさえ思っていた。


 というのも、B君には霊感があったのだ。時々独り言を話していることもあったし、気味の悪いこともいう。予言めいたことをいってあてたこともあった。(運動会の天気、友達が風邪をひくとか、怪我をするとか)

 

 正直、ほっとした部分もある。そのことを隠してA君と接していたのだが、ちょうどA君が登校を再開し始めてから、B君の影を見るようになったのだ。はっきりではなく、目の端にぼんやりと、A君が元気になっていくとそれはより強くなっていくようだった。


 オカルト的に考えると、もしやA君を呪っているのでは?と思うこともあった。それが、確信に変わったのは、A君が放課後よくふざけている踊り場での事だ。踊り場で、A君の後ろにB君の影がみえたかと思うと、A君の背中をそっとつつくのだ。

(これはまずい)

 でも、A君にいっても話を信じてくれるだろうか?嫌われるのでは?と思っていた。CさんはA君の事が好きだったのだ。


 あるとき、音楽部だったCさんが、放課後のの練習中にA君が、2階と1階の間、踊り場付近で倒れているところを発見されたというので、すぐにかけつけた。A君はサッカー部で、同じサッカー部の部員がいつも騒がしい彼がいないことに気づいて探しにきたら倒れていたそうだ。


 Cさんはすぐにかけつけて、今まで見たことや、幽霊が見えるようになったことをいった。すると、A君は意外な事を言い出した。

「いや、違うんだ、踊り場の近くにいくと、むしろ後ろからひっぱられるんだ、あいつ……心配してんじゃないかな、あいつ、公園の階段をおりたところで、車にひかれたからさ、皆にはいってなかったけど、警察がいうには……あの時も、どうやら最後の力で俺をかばったらしいんだ、もし奴がかばってなければ、俺も今頃は……」

 Cさんが保険医に倒れていた原因を尋ねると、A君は軽い熱中症のようなもので、あの階段は関係がなかったそうだ。


 それから、Cさんは教室でA君がふざけていると、時折はっきりとB君の姿が見えるようになった。以前のように強くつっこむのではなく、A君と同じ格好をして、同じおどけ方をして踊ったり、変な顔をしていたりする、その姿にCさんは思わず吹き出すのだ。

(ああ、そうか、彼はA君みたいになりたかったんだな、不器用だっただけなんだ)


 Cさんは大人になった今でも、悪意がなく不器用な人はいるのだろうな、と優しもの見方をするようになったそうだ。


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仲良し グカルチ @yumieimaru

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