43:死亡フラグをへし折る方法


「それで、訓練は進んでる?」


 アレから数日経った。

 今はお昼の食堂でタバサさんに俺達の現状を聞かれていた。


「ぅん、少しずつ防御壁の持続時間を伸ばして、他の魔術と同時展開を練習してるょ」


 アガサさんは未来が視える事がある。

 悪用しようとする輩が多いからツカサさんに口外しないようにと言われた。

 すごい力に驚いた。が、それより予言内容にそれ以上の衝撃を受けた。


 俺は【リューシクス杯】と言う学園対抗の魔法術大会で死ぬらしい。


「流石アガサお姉様ね、ケイオスの死を防ぐ為には……アガサお姉様の聖魔術の防御壁がキーなのよねきっと」


 アガサさんの予言を聞いたツカサさんが出した結論は闇属性の特殊効果による死だった。

 闇属性に対して唯一の防御手段は反属性の聖属性。

 アガサさんは固有スキルで聖属性を扱えるから守ってもらいながら戦う事になった。

 ちなみに測定の時の超カッコいい光の剣は聖属性だったらしい。


「しつこいようですが、参加しないとかはダメなんですよね?」

「それは……私達が組まなかったり参加し無かったら、もっと多くの人が亡くなるのが視えて……」


 逃げ場は無かった。

 真っ向勝負し勝つしかないようだ。

 相手がどんな奴なのかはわからないが。


「それよりアンタの方はどうなの?」

「俺は攻撃に特化したいので新たなスライムを探してます」

「水と土以外のスライムを?」

「そうですね、今のままでは相手の属性次第で俺の攻撃が無力化されると思うので……」

「でもスライムってほとんど水色ばかりで他は見た事ないわね……」

「そうなんですよね……土も実は中々居ないらしく、他もほとんど情報がなくて……」

「ギルドに通い詰めて情報を集めるしかないわね」

「そうですね、タバサさんにまで心配かけてすみません」

「ば、馬鹿ね! アンタの事もあるけど【リューシクス杯】で好成績……いや、優勝してもらわないと!」

「そ、そうでしたね……」


【リューシクス杯】は学園同士の戦争。

 毎年各校の2年生が2人1組で出場して戦う。

 そして優勝校は最下位の学園を吸収合併出来る。

 リューシクスには、以前はたくさんの学園があったそうだ。

 この大会による吸収合併により年々減っていき今では大手の5校だけになってしまったらしい。


 水と雷を得意とする【青龍学院】

 土と水を得意とする【玄武館】

 風と土を得意とする【白虎塾】

 そして火のみに特化【朱雀学園】

 それに加えてうちの【キャス学】


 ……うちの学園だけ名前が変じゃない?

 逆か? 他が仰々しいだけか?


 今年うちが最下位になると他校に吸収される。

 故に最下位は必ず避ける! かつワンチャン優勝!


『アガサちゃんとケイオス君なら余裕よ♪』


 ツカサさんにそうお願いされたんだった。


「私、他の堅苦しい学園なんて嫌だからね! ケイオスアンタにかかってるのよ!」

「は、はぁ……」


 かかってるのは俺の命じゃなかったっけ?






「ケイオスさんっ、気になる情報がありますっ」


 学園が終わった後、ギルドに訪れた俺にターニャさんが駆け寄って来た。


「気になる情報?」

「はいっ、実は……」


 廃村となった村の跡地に謎の生き物が住み着いているらしい。

 廃村周辺は魔物が多く冒険者達のキャンプ地として利用されていた。

 しかし、最近廃村に住み着いた謎の生き物により冒険者達が村から追い出されているとの事。


「謎の生き物……って?」

「それが……見た事も無い魔物? っぽい生き物だったみたいでっ」


 緑色と紫色のムキムキの人型の生き物……だそうだ。

 

「人型……人じゃなくて?」

「はいっ……大きくなったり小さくなったりするみたいで……」

「それは人じゃ無さそうですね……」

「はいっ……廃村から出れば追ってこないみたいですが……」

「うーん、スライムが擬態してたりとか言う都合の良い生き物だったりしないかな……」

「実は私もそう思ったんですっ、緑色の方は風魔法術を、紫色の方は雷魔法術を扱うみたいでっ」

「気になりますね……誰かが退治する前に、俺見て来ます」

「はいっ、困っている冒険者も多かったので……ギルドからケイオスさんへ指名依頼を出しておきますっ」

「それはありがたいです、ご飯代を稼がないといけなくて……」


 食堂のご飯が美味し過ぎて食費がヤバい。


「ふふっ、それではお願いしますねっ!」

「はい、いつもありがとうございます。行って来ます」





 噂の廃村まで来た。

 ギルドからは少し遠かったが俺なら超ジャンプですぐだ。


「うーん、それらしい生き物は……居ないな」


 廃村は静まり返っている。

 見た感じ人の気配はないが……


「この匂い……なんだろう」


 なんか獣臭いと言うか、動物の匂いがする。


「少し見て回るか……」


 一件一件空き家を見て回る。

 冒険者がキャンプ地として使っていたと言う事だけあり廃村の割に綺麗な家も結構ある。


「ん? この家は……」


 廃村の中で一番大きな家、入った瞬間、強烈な獣臭がした。


「この匂いは……人じゃないな、例の生き物が関係してるのか? しかし……」


 この獣臭……とてもスライムとは思えないので少しがっかりしていた。

 噂の生き物はスライム以外なんだろうか?


「少し待ってみるか……」


 生き物であればエサを探しに外に出ているのかもしれない。

 俺は廃村を一望できる丘の上で待つ事にした。






 長い時間、じっと待っていたせいで眠気が……

 うつらうつらとしていた……

 ん? なんか……物音、いや話し声か?


「兄者、これでワン様も喜ぶかな?」

「そうだな、ワン様が今日こそ満足してくれたら良いな……弟者よ」


 廃村の方を見ると……

 なんだアレは……

 緑色と紫色のムキムキ巨人が魔物を抱えて歩いている。

 巨人が抱えている魔物は……そこそこ強い魔物だ。

 と、言うことはそれよりは強いと言うことか。


「ミィ、チィ、戦えるか?」

「キューイ!」


 肩に張り付いていたミィが顔面に張り付いて来た。


「キュー!」

「んん? ミィどうした?」

「ケイオス、ミィは戦うのが嫌なのよ、私もだけど」

「戦うのが……嫌? 今までそんな事は無かったのに……」


 急にどうしたんだろう? ミィとチィが居ないと俺は戦えない……


「そうね……でも私達……同族を倒すのは嫌なの」


 えっ? 同族? アレが?





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