32:喋るのバレると焦るとトラブる
「馬鹿な! また特殊個体! しかも会話が可能だと!」
ゲッスール先生は驚愕していた。
そりゃ喋る魔物は聞いた事が無い。
しかもそれがスライムであればなおさらだ。
会場がかなりざわついている。
「しかし、いきなりそんな個体の援軍などルール違反ではありませんか!」
「は? あなたのその亀も後から現れたと思うんだけど、何が違うのかしら?」
ツカサさんが怖い顔でゲッスール先生に反論してくれている。
「そ、それは……」
「何? 私のいう事が間違ってると言いたいのかしら?」
ツカサさんが強烈な雷を纏いながらほぼ脅しに近い形でゲッスール先生を追いつめる。
「た、たかがスライム1匹くらい、どうという事は無い! 勝手にしろ!」
なぜか俺に向かって怒鳴っているゲッスール先生。
ツカサさんが怖いからって俺に八つ当たりするなよ。
「じゃ、問題ないわね? ケイオス君、チィちゃん、がんばってねー♪」
ツカサさんの表情がぱっと笑顔に代わり俺に手を振っている。
――え? あの受験生、あの伝説のツカサ様とも知り合い?
――タバサさんだけじゃなくてツカサさんとも親しげ……
――何者だ、あの受験生は! うらやましいの極み!
タバサさん同様、ツカサさんも有名人らしい。
多分ツカサさんに関しては学園でって言うより世界的に有名な気がする。
それくらい強い。
それはそうと、チィとツカサさんの乱入で闘技場がかなりざわついている。
「ふん! 形勢逆転とでも思ってるだろうが……残念! 吾輩は土障壁を使えるのだ! 展開!」
こいつは会場の雰囲気なんて気にしないんだな。ある意味大物だ。
亀の水バリアの中に居るゲッスールが更に黄色のバリアに包まれる。
「フハハハハ! そのスライムは土スライムだろう? 依然として吾輩の有利は変わらんのだ!」
「そうですかね?」
見た感じ、水バリアは亀と先生を包んでるけど、土バリアは先生しか包んでない。
「ケイオス! 私も擬態できるようになったわよ!」
「おお! さすがはチィ! さっそくやれる?」
「もちろんよ! ミィは右手よね? 私は足にしたの! 左右どっちがいい?」
「おーそりゃいい! んー左右バランス取れる様に左足で!」
「わかったわ!」
「ミィも頼む!」
「キュイ!」
ミィとチィはプルプルっと震え出した。
そしてミィはいつもの様に右手のグローブに。
チィは左足のロングブーツになってくっついた。
「おお! すげえなこりゃ! 二人とも最高だ」
「ふふ、そうでしょう!」
「キュキュ!」
「な! 喋る上にスライムが装備に擬態だと! そんな話聞いた事も無いぞ!」
「んじゃ、今から倒しますけど、降参はしないんですよね?」
「はっ! 馬鹿か? 無力な相手に降参などするわけが……」
「はいはい、わかりました、せい!」
俺は亀に向かって【黄色い左足】で回し蹴りを放った。
バリィーン! ドゴォン!
黄色の蹴りで水障壁は破れそのまま亀を蹴り飛ばした。
「な!」
「んで、次はアンタを……えい!」
ゲッスール先生に向かって【水色の右手】でフックを放った。
バリィーン! べゴォ!
土障壁は破れゲッスール先生の顔面に右フックが炸裂し吹っ飛んだ。
「ぶべっ!」
「まあ順番にやればいいだけですよね、この人先生なのに馬鹿ですね」
「ケイオス君カッコいい! 最高! 結婚して!」
「お、お姉さま! 落ち着いてくださいまし!」
「はーい! 試合しゅうりょー! ケイオスさんの勝ちですねー」
ゲッスール先生と亀は気絶してピクピク痙攣している。
死んでは居ない様だ、よかった。
魔物をモノの様に使っている姿は吐き気すら感じるほど嫌悪したが流石に死なれたら後味が悪い。
試合は終わったがまだ観客達はざわついている。
きっとチィが喋った件だろう。
どうしよう……どこかに連れていかれたら困る……
「あー! あの黄色いスライムちゃんは私の魔法で喋れるようになったの! だから気にしないで!」
ツカサさんが観客にフォローを入れる。
しかし、それはさすがに無理があるんじゃないか?
「「「「「なるほど納得」」」」」
納得するんかい!
どんだけツカサさんはすごいと皆から認識されてんのよ。
そういえば【ルーム】とかいうぶっとんだ固有魔法が有ったな……
うーん、ツカサさんならまるっきり不可能じゃなさそうだから怖い。
「それよりケイオス君ごめんねー! 遅くなって! お詫びとご褒美♪」
ツカサさんが飛びついてきて抱きしめられた。
すごく良い匂いがして気絶しそう。
「お、お姉さま! 大勢が見てます! 自重してください!」
「あら、タバサちゃん、私は別に誰に見られても良いの……まさか妬いてるのかしら?」
「は、はぁ? なんで私が! そんなわけないでしょ!」
「やだーツカサさんが乙女な顔してる! 可愛いー!」
「ヘキサちゃんありがとうねー私のケイオス君の面倒を見てくれて」
「いえいえー私も楽しんでいますのでー」
「チィの事ありがとうございました。擬態まで覚えたみたいで」
「そうそう、おしゃべり出来るから一緒に居るのが楽しくって」
「私、頑張ったのよ! ケイオス!」
「キュイ!」
「しかも足装備に擬態だからなー、良い感じだった!」
「えっへん!」
「これで2属性は対応できますねー、逆に言うと2属性対応されたら困る感じでもありますが」
「それは普通の魔道士も同じよ、そもそも2属性の魔道士が大半だから」
「それもそうですねー3属性目からは雷か無とかもしくは固有スキルですしね」
「そうそう、全く同じ組み合わせの2属性魔道士でもない限りは大丈夫よ、今回みたいなパターンだと同じでもいけそうだけど」
「テイマーだと色んな属性使えそうですけど、別々に対応されたらって感じでしたね」
「それでもケイオス君を見てるとテイマーの可能性を感じるわ」
「ケイオス本人が強いってのが一番大きいでと思うけど」
「「それはそうかも」」
急ににぎやかになった。
話しているうちにゲッスール先生と亀はどこかに運ばれていったようだ。
「所で次の相手は……」
「今の試合を見る限り中々相手をしてくれそうな人は居ないかもですねー」
「そうねぇ……私が戦いたい所だけどさすがに試験としてどうかと思うから、ヘキサちゃんかテレサちゃんはどうかしら?」
「お姉さま! お二人とも試験の相手としては強すぎると思うのですが……」
「でも、相手が居ないんじゃ……」
「私は多重起動の3属性使いですが水が出来ませんからねー多分秒殺されそうですー」
「ならテレサちゃんかしら? テレサちゃんは全属性イケるわよね?」
「承知しました、私で良ければ」
「「「「!」」」」
振り返るとテレサさんが居る。いつのまに。
「しかし、もし私が負けた場合、私はケイオス様の伴侶になりますがよろしいですか?」
急に現れて爆弾を落とすテレサさん。
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