24:あれ?これ再放送?
「どう? 終わった?」
「半分くらいです」
「まだ半分なの! このエロ男!」
「せめてゼロ男にしてください」
エロくない男なんて居ないだろ! とはもちろん言えない。
あれからタバサさんに弟子入りした俺は毎日、この毒舌美少女と一緒だ。
ちなみにミィとチィはターニャさんに預けてある。
俺の説明でいっぱいいっぱいだったので擬態するミィと喋るチィの説明が面倒だったからだ。
「嬉しそうにするんじゃないわよ! いやらしい! いいからさっさと書きなさいよ!」
今、俺がやっているのは様々な魔術の魔法陣を紙に1枚ずつ書く作業だ。
魔力が0の俺は魔法では無く、魔術を使い方を教わっている。
魔術には魔方陣と代償が必要だ。
熟練の魔術師は、指から魔力を出し軌跡で魔方陣を展開し発動するようだ。
俺はそれが出来ないので紙に書かされている。
試しに、書いた紙に魔力じゃない何かを込めて念じると魔術が発動した!
魔力が無くても魔術が使えた!
と、かなり興奮して息を荒くしているとタバサさんに変態! と罵られ我に帰った。
通常は魔力を消費するらしいのだが俺の魔力0だ。
身体に異常は見られないので、何が消費されたかは気にしないでおこう。
「早く書き終えてダンジョンに行くわよ!」
「はぁ……ダンジョンですか……」
魔方陣を書いた紙を持って魔物相手に魔術を練習する様だ。
死骸処理をしたくないからダンジョンでやるらしい……
ダンジョンなら死骸は消えるからね……
俺はダンジョンには良い思い出が無いんだよな……
死ぬほど潜ったし……
ー・ー
「ついたわ、ここよ!」
「こんなに近くにあったんですね」
「そうよ! エロ男は何も知らないのね!」
「異世界人ですし、俺」
「未だに信じられないわ……」
「そりゃ、俺も信じられ……あ、いや知ってたな」
「何? どういう事よ?」
「元の世界に異世界から召喚された勇者が居たんですよ」
「……勇者を異世界人に頼るなんて!」
「この世界は勇者居ないんですか?」
「聞いた事無いわね? 魔王とかも聞いた事無いわよ」
勇者も、魔王も居ないのか……そりゃ平和そうで何よりだ。
「過去に居たって話もないですか?」
「私が知る限りではおとぎ話レベルね」
「なるほど……」
「でも異世界でそういうのがあるんなら、いつかリューシクスにも……」
「リューシクス?」
「はぁ? この世界の名前よ!」
「初めて聞いたかもしれません」
「はぁ……知らない事ばっかりで困ったエロ男ね」
「せめてゼロ男で……いやケイオスと……」
タバサさんは俺を無視してダンジョンに入っていった。
ー・
ダンジョンだー。
前と同じだなー。
なつかしいなー。
「アンタ、なんかヘラヘラしてるわね! 私にえっちな事をしようと……」
「違います! 前の世界でもダンジョンに入った事があって同じだなと!」
「そうなの? てっきり人が居ないのをいい事に可愛い私を……」
「はいはい、行きましょ」
「馬鹿! 勝手に進まないでよ!」
っと、角が生えたウサギの魔物が出て来た。
「出たわ、やってみなさい!」
俺は頷いて、魔方陣の書かれた紙を取り出し念じる。
魔方陣が俺の足元に浮かび上がる。
【風刃】が魔物に向かって発動し魔物は倒れた。
「おお! 俺の魔術で魔物が!」
正直かなり感動した。
「あんた! ちゃんと風術展開! 風刃! って言いなさいよ!」
「え? な、なんか恥ずかしくて、てへ」
「きっも! 恥ずかしがってんじゃないわよ!」
いや、恥ずかしいのよ。
これまで使った事無かったモノだし。
剣術でテンション上がった時に自分で考えた技名叫ぶのはよくやってたけど。
「次はちゃんと言いなさいよ! どの魔方陣からどの術が発動するか覚える意味もあるのよ!」
「はい……タバサさん口は悪いですが、ちゃんと大事な事は教えてくれますよね」
「当たり前よ! お姉さまの妹だもの! 展開内容を言うと魔術の効果が上がるから忘れないでよね!」
よっぽどお姉さまが好きなんだな、タバサさんは。
たしかに美人ですごい魔道士だったら憧れるわな。
でもタバサさんも俺から見たら美人でスゴイと思うが。
それでも弟子の弟子なんだよなー。
ツカサさんって一体……
「この辺じゃ楽過ぎるわね」
「そうですね、一発で倒すと威力アップも体感できません」
「もう少し奥に行きましょ! いざとなったら私が倒すし」
「それは頼もしい、行きましょう」
「なんか棒読みじゃない?」
「そんな事ないですよ、ハハハ」
「ん? なんか急に人が……」
奥から冒険者達が走ってくるのが見えた。
「ん? なんかあったんですかね?」
「逃げろおぉぉ! オーガの変異体だ!」
見ると通常よりも巨大で真っ赤なオーガが暴れている。
「なんであんなのがこんな所に!」
この世界でも【ネームドモンスター】は居るのか。
ネームドは何かの拍子に進化した魔物で階層の縛りを超えて登ってくる。
下層で育ったヤツが徐々に登ってきたのだろう。
「やべーのが居ますね、オーガのネームドですよ」
「あんた! なんでそんなに落ち着いてるのよ!」
「タバサさんが居れば大丈夫ですよ、きっと」
「あんなの……お姉さまじゃないんだから勝てるか……わからないわよ!」
タバサさんは震えていた。
俺の師匠と言ってもこの子は俺より1つ年下でまだ若い。
無理も無いだろう。
俺は魔力0だし、ここは逃げるしかないか。
「でも……ここで食い止めないと! 沢山の人に被害が!」
「……」
震えながらも勇気を振り絞り戦おうとしている。
逃げても誰も責めないだろうに……良い子だ。
「私がやるわ! あんたは死なない様に隠れて……」
「危ない!」
オーガの口から炎の光線が発射された。
咄嗟にタバサを抱えて回避する。
「あ、あ、あ」
「大丈夫、俺が守ります」
「!」
タバサが顔を真っ赤にして驚いた顔をしている。
師匠に対して失礼な発言だったか?
っと、まだ攻撃の気配がする。
「すみません、このまま飛びます」
「え? え? え?」
オーガは大量の火球を生み出し飛ばしてくる。
さすがは魔法の世界、筋肉オーガも魔法で来るのね。
シュッシュッシュッシュ!
次々と飛んでくる火球、タバサさんをお姫様抱っこしたまま避ける。
「っ!」
タバサさんは必死に俺の首にしがみついている。
落としたら後で何を言われるかわかったもんじゃないから大人しくしていてくれて助かる。
「グオォォォ!」
しばらく避けているとオーガが唸り声をあげ始めた。
「まずいな」
「な、何?」
オーガの右手に魔力が集中しているのを感じる。
「俺が守ります! だからタバサさんはアイツに攻撃を頼みます!」
「えっ? だ、だいじょうぶなの? それに倒すとなったら私も全力で撃つからアンタも巻き添えに……」
「知ってるでしょ? 俺はしぶといんだ、死なねえから撃って!」
あれ? 前にもこんな事なかったっけ?
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