22:綺麗な花はトゲ多め
「弟子の弟子の弟子」
「そう、もう少ししたら私の魔術の弟子の弟子がここに来るから」
「ツカサさんの弟子って言うわけじゃないんですね」
「私が魔法も魔術も手取り足取り教えたい所だけど、こう見えても忙しくて……」
そんな事を上目遣いで言われるとドキッとする。
ふと気づくとターニャさんがジトっとこちらを見ていた。
「お、お忙しいんですね!」
「そうなの! アレがアレだから余計に……だからよく知ってる子に任せようと……」
アレ? がアレとは……
よく知ってる子?
それより……魔法と……魔術?
何か違いがあるのか?
剣技と剣術みたいなもんか?
ん? これは同じか?
違い……あるの……?
知ってる前提で話が進んでも困るので恥を忍んで……
「魔法と魔術は何が違うんでしょうか?」
そんな事も知らねえのか!
魔力だけじゃなくてインテリジェンスも0か! って思われそう。
後でこっそりターニャさんに聞けばよかったかもしれない。
「ええ、明確に違うわよ」
「はぁ……明確に……無知ですみません……」
「気にしなくていいのよ? ケイオス君は私が知らない事を知ってそうだし♪」
弟子の弟子の弟子を取ろうとする人に知らない事があるんだろうか……
ツカサさんの怪しい笑みで俺を見ている。
妖艶な顔を見て【魔女】と……頭によぎった。
「何か失礼な事を考えていないかしら?」
「いえ! 妖艶で魅力的な微笑だなーと……」
気づかないうちに、怪しい魔法をかけられそうで怖い。
ケイトの苛烈な魔法とはまた違った身の危険を感じる。
「うふふ、ありがとう♪ それでね、魔法と魔術が違うって話なんだけど」
「あ、はい」
「【魔法】は魔力を媒介として特定の詠唱で起こす現象の事ね」
概ね思っていたイメージ通りだ。
魔術は何が違うんだろうか?
「【魔術】は魔方陣を介して特定の代償を払い展開するものね」
魔方陣、見た事はあるが……
特定の代償? 展開?
あまり聞いた事が無い話ばかりだ。
「知らなかったようね、今まで魔道に興味は無かったのかしら?」
「そうですね、ずっと物理一筋で……」
「物理? それを私は知らないから逆に聞きたいわね」
やはり……物理という概念はないんだな。
攻撃が通用しないのは【世界の理】のせいか。
現に魔物や人に対する物理的な力は無効化されている。
俺とこの世界の相性最悪すぎない?
追放されたけど無双しますってよく聞くから甘くみてたけど、夢破れました。
運無さすぎ問題。
「実は……俺の出身が問題でして……」
「田舎から出て来たばかりって言ってましたよねっ?」
「……田舎っていうよりは【異世界】というか……」
「「【異世界】!」」
「そ、そうなんですよね……ハハハ……」
「な、なんか変だなとは思ってましたっ……」
「【異世界】ねぇ……あまり前例が無いわね」
あまり無いという事は0ではないんだな。
「物理っていうのは【異世界】の魔力とは別の力の事です」
「別の力?」
「刃物で斬ったり、拳や鈍器で殴ったりして戦う力です」
「ふむ……この世界では使えないわね」
「俺は魔法に向いてなくて、そちらを頑張っていたというか……」
魔法に向いてないと言うか試した事すらなかったが。
「でも、異世界人の魔力が0だなんて話は聞いた事がないわよ」
「そ、それは俺にもなぜ0になったかわからなくて……」
「以前は0ではなかったのかしら?」
「多少はあった気がします……多分……」
あまり自分のステータスは見ないからなぁ。
手加減する際に自分の物理の値は良く見てたけど。
「原因はこの世界に来た事が起因してるのかしら……」
「生物には必ず魔力が有るはずっ、0だなんてっ」
「そうなのよね……ケイオス君がどうやって動いてるのか不思議で……」
「体力……いわゆるHPがある限り動けますが」
「体力なんて気休め程度じゃなくて? ……それよりHPって何?」
HPの概念も無かった件。
「えっ! それじゃダメージを負ったら何が減るんですか?」
「魔力を消費するけど」
「え!」
衝撃、MPが生命線だった件。
「魔力の量ってMPですよね?」
「MP? って何?」
「ええ!」
MPすら(略
「どうやら俺の居た世界とはかなり違うようですね……」
「そうみたいね、聞くほどに知らない話ばかり出てくるわね」
「そ、そうですね……初心に戻って1から……いや0から頑張るか……」
魔法関係を学ぶなら本当に0からだしな。
「初心に戻ってって……ケイオス君は元々戦いに長けていたの?」
「そうですね……前の世界では1人で魔王に勝ちました」
「「え」」
「勇者に黙って俺が1人で色々やっちゃったもんだから、揉めに揉めて……」
あげく世界から追放されましたが。
「そ、そう……それは勇者が可哀そうかもね……ケイオス君すごい人なのね……」
「す、すごすぎますっ」
「魔力0ですけどね……」
「もしかしてガイアの攻撃に平然としてたのはそのせい?」
「そうです、俺の攻撃は通用しないんですが、魔防と敏捷は健在みたいで……」
「そ、それはほとんど無敵ね……1人で魔王を倒す人だもの」
「でもここでは俺の攻撃はまったく通用しないんです」
不思議なんだよなぁ。
物なんかは壊せるのに、魔物や人にだけ通用しないだよな……
「話が逸れてしまったけど、聞きたい事がどんどん増えるわね」
「俺もですが、とりあえず魔術の件と弟子の弟子についてを……」
「そうね、その件を先に説明するわ。魔法と魔術は違うってさっき言ったと思うけど」
「はい、きちんと理解はしてませんが……」
「簡単に言うと魔法はともかく、魔術の代償は魔力じゃなくてもいいのよ」
「!」
「普通は魔術師も魔力を代償にしてるからあまり注目されないんだけど、ケイオス君は魔力0よね」
「はい! もしかして代償はHPとかでもいけますかね?」
HPには自信があります!
「HPが何なのかわからないから即答出来ないんだけど、可能だと思うわ」
「おお!」
それはテンション上がる!
俺が魔法を使える? いや魔術か!
考えた事も無かった。
「それは……楽しみになってきました!」
「ケイオス君、急に凄く元気になったわね」
「はい!」
「よかったですねっ! ケイオスさんっ」
ターニャさんが自分の事の様に喜んでくれている。
何この子、優しい、惚れてまう。
と、盛り上がった所で部屋にノックの音がこだました。
「タバサです、弟子の件で来ました」
「ああ、来たみたい、入っていいわよ」
師匠(仮)が来たようだ。
というか、また女性の声だ。
ギースさんみたいなおっさんとかの方が気を使わなくて楽なんだが……
「失礼しま……ってアナタ!」
「あ、あの時の」
ギルドの入口で見かけた緑色のローブを着た美少女だった。
「邪魔カスクソダサ魔力0インチキゴミ野郎じゃない!」
初手で過去最高の罵倒を頂きました。
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