18:仲間なら間に合っています
「俺の勝ちですか? それともトドメを刺しますか?」
「ッ! ……お前の勝ちだ」
悔しそうに唇を嚙みながら副ギルド長が俺の勝利を宣言した。
判断材料が少ないがコイツの様子も変だ……
副ギルド長があんな素行の悪い奴に肩入れする素振りを見せるのはおかしい。
「す、すごいですっ!」
ターニャさんが嬉しそうにこちらに走ってくる。
ターニャさんを抱き止めようと手を広げて待つ。
だがしかし抱きしめられたのはミィだ!
「ミィちゃんすごいねっ! ケイオスさんを助けてくれてありがとうっ!」
「キュ!」
俺は無表情で広げた両手をだらりと下げる。
悔しいっ! でも確かにミィには助けられた。
まさかスライムにあんな事が出来るとは思わなかった。
なんだかミィとは意思疎通が取れている感覚がする。
「魔力0が……なぜガイアを……」
副ギルド長はぶつぶつと何かつぶやきながら去っていった。
怪しい……が、問い詰める程の証拠も、力も今は無い。
「大丈夫です、生きてます」
治療師がガイアを診ているが無事なようだ。
スライムの攻撃方法は魔力を全身に纏った体当たりだ。
そのスライムのミィが魔力を纏い俺の【グローブ】になった。
その【グローブ】に俺の物理【スピード】を乗せて殴った。
ミィの魔力は多くないが、そこに俺の【スピード】で威力が加速度的に跳ね上がった様だ。
「キュイ!……はむはむ」
ターニャさんに抱かれていたミィは俺の肩に乗りだらしなくひしゃげた。
「ふふっ、ミィちゃんに好かれてますねっ!」
「これは好かれているんですかね……いつもはむはむ言ってますが」
「あまがみしているんじゃないですかねっ! 動物にはよくありますっ」
そう言われると肩のあたりが微妙にちくちくしている気もする。
気になるほどではないが……まあおとなしくしてくれるからいいか。
「コイツのおかげで助かりました」
「あんなの初めて見ましたっ!」
「攻撃方法が無くて攻めあぐねていたら……ミィが変化して咄嗟に……」
「【3つ星】のガイアさんを倒したんですっ! もう誰もケイオスさんを馬鹿にしませんよっ!」
「キュウ!」
「気になったのですが【3つ星】とは?」
「あっ! ご説明しますねっ! ギルドに戻りましょうっ!」
ターニャさんと一緒に訓練場を後にした。
ー・ー
「あんた、登録したばかりだろ? うちのパーティに入らないか?」
ギルドの方に戻ると野次馬だった冒険者達が声を掛けて来た。
「おいおい! おまえんとこより、うちがいいだろ! うちは【4つ星】だぞ!」
次々に手のひらを返した冒険者達からのパーティ勧誘合戦が始まる。
しかし、先ほどまで魔力0と馬鹿にし、俺の生死をかけた決闘を嬉々として見ていた連中だ。
「すみません、俺は魔力0ですし、仲間ならコイツが居るんで」
「キュキュイ!」
ミィが俺の肩の上で飛び跳ねる。
「そうですよっ! みんなさっきまでガイアさんの味方していたくせにっ!」
「「「「「うっ」」」」」
ターニャさんの言葉を聞いて野次馬冒険者達は居なくなった。
「すみません、ありがとうございます」
「いえっ! ケイオスさんはまだ登録したばかりですし、パーティ選びは慎重にっ!」
「キュイ!」
「ミィちゃんも居るしねっ!」
「そうですね、そうします……それで【星】とは?」
先ほど勧誘してきた冒険者も【4つ星】と言ってたな。
多分冒険者ランクの事だとは思うが
「はいっ! まずはこれをっ」
改めてギルド証をターニャさんから渡される。
先ほどは受け取る暇もなく決闘を申し込まれた。
名前 :ケイオス
ランク :★
レベル :34
スキル :【眼】【レベル制御】
パーティ:登録なし
魔力値 :0
と記載されている。
【眼】と【レベル制御】の事を言った記憶は無い。いつのまに……
レベル制御はレベル100超えた時に覚えたスキルで任意のレベルに【手加減】出来る。
しかし、レベルの表記はこの世界でも【下2桁】だけしか表示されていない。
この世界もレベル上限99というのが共通認識か。
「ギルド証は持ち主の魔力と同期されていますっ! スキルは自動的に表示されていますっ」
「なるほど、言ってないのに何故と思いました」
「はいっ、スキルが増えたりレベルが上がったりすれば勝手に書き換わりますっ」
リアルタイム更新なのか……
ギルドで情報更新してもらうわけでは無いのか。
魔法が進んでいる世界だからか? 便利だな。
「そしてケイオスさんのカードは自動色の白色ですが得意属性が出てくればカードの色が変わりますっ」
そう言ってターニャさんは自分のカードを見せてくれた。
綺麗な水色のカードだ。
名前 :ターニャ
ランク :★★★
レベル :51
スキル :水魔法4、風魔法2、治癒魔法3
パーティ:登録なし
魔力値 :612
「私は水属性が得意なので水色にっ!」
魔力値はさっき魔力計で見た値と同じだ。
というかレベル51もあるのか!
治癒とかあってスキルも有能そうだし……
ギルド職員にしとくにはもったいなくないか?
「扱える属性の色であれば任意の色のカードに出来ますが、申告がなければ自動色になりますっ」
なるほど、最初に属性を聞かれたのはソレか。
有るかどうかわからんがピンクとかになったらヤだしな……
「ターニャさん普通に強そうですね、冒険者にはならないのですか?」
「私、ランクが★★★になっていますよね? 以前は冒険者でしたっ」
「なるほど、道理で」
「私は人に攻撃がどうしても出来なくて色々あって向いてないって……」
なるほど、冒険者は盗賊と戦ったり、手配犯を捕えたりする事もあるからな。
「それで知り合いだったここのギルド長にスカウトされて職員になりましたっ」
「ギルド長と知り合いなんですね」
副ギルド長がアレだったが、ギルド長はまともそうだ。
「はいっ、近いうちにケイオスさんをギルド長にも紹介しますねっ」
紹介? 何故? と思ったが素直にうなずいておいた。
「★は依頼をこなしたり推薦で上がっていきますっ」
そこも前の世界と同じだな、魔力値による受注制限なんかが無ければいいんだが。
「★の上限は無いんですが今は【7つ星】の人が最高ランクですね」
7つ星って……トンデモない強さなのだろうな……
それより気になる事があったから聞いておこう。
「依頼についての受注制限なんかはありますか?」
「受注制限?」
「例えば……この依頼は魔力500以上しかダメ! みたいな」
「そういうのは無いですっ、危険を伴う依頼の時はこちらで考慮して辞退してもらう事はありますっ」
よかった、前の世界よりは縛りは少なそうだ。
まずは力をつけるまでは目立たずおとなしくしていたいな。
現状、負けないが勝つためにはミィ頼りになる。
【剣士】なのに拳で殴る! ってのも少し抵抗がある……
「早速なにか受けてみますか?」
そう言うとターニャさんは、依頼のリストを見せてくれた。
「……じゃあこれを」
「えっ? スライム大量発生駆除ですかっ!」
「キュウウウウ!」
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