第2話 これ、貴方に

 一週間後、つまりクリスマス当日だ。

 今年のクリスマスは平日で人通りは少しだけ少なかった。

 それでも、普段の私なら人混みに酔っていただろう。

 今は少しわくわくとどきどきでかき消されていた。

 私は駅のシンボルにもなっている時計台の下で待っていた。

 約束の時間の一時間前からここにいる。

 気温が低いせいか手がかなり冷たくなっている。

 でも、私は寒いとは感じていなかった。

 そろそろ時間になる。

 彼もきっとそう遠くないうちにここへ来るだろう。

「ごめん、遅れた」

 そう告げられて私は顔を上げた。

 彼だった。

 彼は遅れたと言うが右腕につけた腕時計はまだ約束の時間を指してはいない。

「ううん、遅れてないよ。約束の時間までまだ数分あるし」

「でも、待ったろ?」

「ううん、待ってないよ。それに来てくれてありがとう」

 実際、彼がここに来れない可能性はあった。

 なんせ彼は私の親友の彼氏なのだから。

 普通は相手がいる人とデートする者はない。

 しかも、クリスマスの日に。

 イヴではないからまだマシかもしれないが普通彼女側は良しとしない。

 これは彼女のおかげだろう。

 彼女は私が彼を好きなことを知っていて、それでも彼が私を好きになることなんてないという自信の表れがこの結果だ。

 私は彼女のことも好きだ。だからこそ、この状況は感謝している。

 私から誘ったわけだが、デートプランとかは彼に任してある。

 なんでも、自分で決めたいそうだ。

 どんな感じのがいいのかコンセプトは聞かれたが、”できるだけ人の少ないところ”がいいと答えていた。

 それからいい感じに回った。

 そして私は彼に先週買ったプレゼントを出した。

「こ、これ、あの……ぷ、プレゼントです!く、クリスマスの」

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