illud

まれ

第1話 あれ、彼を

「あれ、ください!」

 私は勇気を出して、店員さんにそう言った。

 普段、自分から話しかけることもなく話しかけられることもない自分にとってこの行為はハードルの高いものだった。

「これでお間違いないでしょうか?」

 私がどきどきしてるなんてこと知るはずのないその店員さんは冷静に商品の確認を取る。

 私はこくりと小さく頷いた。

 すると店員さんはすぐに値段を言い、商品をギフト用のラッピングをし始める。

 私がお金を払うと同時にラッピングを終わらせた。

 店員さんは軽く見てからありがとうございましたといいラッピングされたそれを私に手渡す。

 受け取った私はすぐにお店を後にした。

「さむっ」

 私は思わず冷たい風の吹くこの街に言った。

 それもそのはず、もう十二月も中旬だ。

 今年ももうすぐ終わる。

 今年何してたかなと少し考えても何も思い浮かばなかった。

 何もしてないんだろう。

 あっという間に時間が過ぎていく。

 それよりも大事なことがある。

 来週に迫ったクリスマスだ。

 一緒に過ごす恋人は私にはいない。

 でも、今年は大切な友達と過ごすことになっている。

 今日はそのプレゼントを買いに来た。

 正直今でもあれを買ったのは恥ずかしい。

 待ち遠しいような来て欲しくないようなそんな気持ちだ。

 恥ずかしさで体が火照っているのか少し寒さが柔らだ気がした。




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