第16話 決戦
黒薙が羽を追いかけた先にあったのは、林の中でも少し開けた場所だった。空を
「この辺りに、飛んでいったと思ったのだけど。」
辺りを見回した黒薙だったが、羽は見当たらない。しかし、黒薙は、
「もしかして、これがコカトリスの巣穴?」
その穴の周囲の地面は、
黒薙は、自分のコートから羽ペンを取り出し、それを右手に構えて、ゆっくりとその穴へと近づく。穴の入り口近くには、巨大な鳥の
黒薙は、周りを
入り口から
そこに、コカトリスの姿はなかった
「別の場所にいるのか。」
張りつめていた
“
それを見た黒薙の
黒薙は、コカトリスの巣穴から少し離れた場所で、飛ばしたはずのコカトリスの羽を見つけた。その羽の横には、引きちぎられた
その羽を拾った黒薙は、何か嫌な予感を感じ、
バァン!
「さすがだな! これを避けてしまうとは。この俺を、負かせただけのことはある。」
黒薙が声のする方を見ると、離れた場所に
「
男は、ニメルス
森石の姿を確認した黒薙は、羽ペンを構えた状態で、近くにあった大木の陰へと
バァン!
黒薙が先ほどまでいた場所に、銃弾が撃ち込まれた。
「くそっ!
森石は、ボルトを操作し、
「森石数馬! お前たちの目的はなんだ! なぜ、別の世界のものをこの世界に呼んだ!」
「なぜって、それが
「救済だと!?」
バァン!
黒薙の隠れる木に
「あぁ、救済だよ。私たちの一員が増える、喜ばしいことのはずだ。それなのに、貴様らにはなぜそのことが分からない! この
カシャン!
森石が、ボルトをはじき、
黒薙は、
森石は、ライフル銃を構える。
さっきは、感情に任せてしまい、少々弾を
(俺は、本当は
しばらく待っていると、しびれを切らしたのか、狙っている木の陰から黒い影がのぞき出る。森石は、その
バァン!
森石の持つライフル銃から、4発目の
「やった。」
森石が、小さく
貫いたはずの黒い影とは、反対方向の木の
「放て! “
黒薙の持つ羽ペンのペン先から、インクが
「くそっ!」
森石は、その全身を木に慌てて隠す。
バコンッ!
2発目のインクの弾が、鈍い
「救済だって!? お前のそんな身勝手なエゴのせいで、彼女たちはこの世界に来たなんて、そんな、そんなことが許されていいものか!」
黒薙の怒声と共に、ペン先からは次々とインクの弾丸が形成され、放たれる。
バカンッ! バコンッ!
森石の隠れている木は、黒薙が連続で放つインクの弾丸によって、徐々にえぐられていく。あたりには、木の破片が飛び散っていた。
「いや! 私は許さない!」
黒薙は、森石の隠れる木に向かって歩みを進めながら、攻撃をし続けていた。
バガンッ!
「ヒィッ」
森石は、それに怯え、木の陰に
(いいぞ。もっと近づけ。俺の本当の力を見せてやる。)
森石は、ライフル銃のボルトを動かし、次の弾丸を装填するのであった。
黒薙が、森石の隠れている木から、数メートルのところまで来た時である。
黒薙は、足に絡まるワイヤーに引っ張られ、その姿勢を崩してしまう。彼女は、うつ伏せに倒れこんだ
「ハハッ、かかったな。」
森石が、木の陰から
「くっ!」
追い詰められてしまった黒薙は、コートのポケットに右手を突っ込み、引き抜く。その手に握られていたのは、笹平から
手に持った札を、森石に向かって投げつける。
「“雨立ちの 崩れて見ゆる
投げた札が森石の手に貼りつくと同時に、黒薙は唱える。札が光り、森石の全身に黄色い
「な、なんだ!?
森石の全身は、雷に打たれたかのように小刻みに震えていた。立っていられなくなった森石は、ライフル銃を落とし、その場にへたり込んだ。
黒薙は、森石がライフル銃を落としたことを確認すると、
「こんなものが、お前の切り札か。森石数馬。」
黒薙が、外した罠を投げ飛ばす。
黒薙は、森石に近づくと、ペン先を、痺れて動けない森石の顔に向ける。
「お前には、いろいろと聞きたいことが残っている。組織の本部まで、来てもらう。」
冷たく言い放った黒薙の言葉を聞き、森石はへたり込みながら、にやりと笑みを浮かべる。
「近づいたな。貴様。」
「え!?」
ドゴッ!
現れた影は、
「うっ。い、一体なにが!?」
痛む腹を抑えながら、
それは、半身が雄鶏、もう半身は蛇の異形の姿をしており、その
その鶏と蛇の生物は、
「これが、…コカトリス!」
「そうさ! そして、これが俺の本当の切り札だ。ハハハハッ!」
コカトリスの前で、森石は
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