第12話 初ドライブ
「…ひぐっ、げほっ。」
山の
「はぁはぁ。」
「落ち着きましたか。」
「は、はい。自動車?でしたっけ。こちら世界の人たちは、いつもあんな乗り物に乗っているんですか。」
「まぁ、…そうです。」
「すさまじいですね。」
フェリエッタは、そう答えると、
「うー、やっぱり外は寒いですね。コート、ありがとうございます。」
フェリエッタは、黒薙から借りたコートの
「えっと、ここが最初の石化犠牲者が、見つかった場所の近くなんですよね。」
「はい。そうです。」
二人がいる旧道の周囲には、草木が生い茂っており、道から少し外れると黒い
林の中は暗く、いかにも何かいるような、そんな気配がしている。
「コカトリスの巣は、この辺りにあるのでしょうか。」
「んー、それは分からないです。何か
「分かりました。この辺りを、少し
「あ、あの、ちょっと待ってください。クロナギさん。」
先に歩き出した黒薙を、後ろにいるフェリエッタが呼び止める。
「どうかされましたか。」
「もしかしたら、コカトリスがいるかもしれないので、石化対策をしましょうか。」
フェリエッタはそう答えると、右手を突き出し、念じる。
「“我が
フェリエッタが
フェリエッタは、魔法で生み出した水球を顔の上にもって行き、まるで目薬をするかのように、目の中に
「クロナギさんも、これを目に入れてください。」
「…それを目の中に入れるのですか?」
「はい!」
フェリエッタは、手のひらに浮かぶ水球を差し出してくる。
黒薙は、得体のしれない水滴を目に入れることに対して、イヤそうな顔をする。だが、人懐っこい笑みで水球を差し出すフェリエッタを見て、観念したようだった。
黒薙は、フェリエッタに近づき、目の中に水球を入れやすくなるように顔を上げる。
「これでいいですか。」
「もうちょっと、上に向けますか。」
フェリエッタはそう言うと、上を向いている黒薙の顔に手をかざし、彼女の両眼の中に水球を水滴入れた。
水滴が入り、
「はい、もう大丈夫ですよ。」
「これは、一体何だったのですか。」
黒薙は、まだ慣れない目を押さえながら、フェリエッタに問いかけた。
「この水は、コカトリスの目から出る特殊な光の波長を、
「ただ、何ですか。」
「数時間たつと、効果が無くなるので、そこだけは注意してください。」
「…分かりました。気を付けます。」
「ほんとは、同じような構造を持つ
フェリエッタはそう言うと、黒薙と共に歩き出した。
山への旧道は、アスファルトでかろうじて
フェリエッタは、周囲をきょろきょろ見回しながら歩いていた。
「何かありますか。」
フェリエッタの様子が気になった黒薙は、彼女の背後から声をかける。
「え! いや、何もないですけど、どうかしました?」
「すみません、周囲を警戒されていた様子でしたので。」
「あー、ごめんなさい、この世界に来て初めて外に出たから、いろいろなものが目に入ってしまって。」
黒薙は、それを聞き、運転中のフェリエッタは、初めて乗る自動車に
「どこか、変わっているところでもありますか。」
「んー、でも、世界の外も私のもといた世界と、あまり変わらないんですね。」
「そうなのですか。」
フェリエッタの予想外の反応に、黒薙は少々驚く。
「い、いや、もちろん全然違いますよ。魔法がないし、魔物もいない世界なんて、
フェリエッタは、黒薙が驚いている様子を見て、
「空が青かったり、人がいたり、木が生えていたりすることは同じだなってことです。」
「なるほど。確かにそれは思うかもしれません。」
「でも、こっちの世界の方が、何か
「…。」
フェリエッタの言葉を聞き、黒薙が少し黙る。フェリエッタは、そのことに気が付かず、黒薙に話しかける。
「私、元の世界なんかよりこっちに来て良かったのかもしれないです。」
「! …どうしてですか。」
「向こうの世界にいる時に、私ちょっと辛いことがあったんです。不謹慎かもしれないけど、私は
「…そうなのですか。」
「そうなんですよ!」
フェリエッタは、黒薙に向かって、笑顔で答えるのであった。
日が
夕暮れ時になり、寒さも限界を迎えたため、二人は車まで戻って来ていた。
「んー、何も見つからなかったですね。」
「やはり、
「そうでしたねー。もうちょっと、コカトリスの居場所を絞り込めるような、何かが必要みたいです。」
「どうなのですか。コカトリスは、この時間も活動しているものなのでしょうか。」
「えーと、コカトリスは、
「分かりました。冷えてきましたし、本日はこの辺りにしておきましょう。」
黒薙は、そう答えると、車のエンジンをいれた。
「それでは、戻りましょうか。」
「あ、あの、すみません。帰りは、もう少しゆっくり走ったりできますか…。」
フェリエッタの願いもむなしく、黒薙は
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