第15話
「重い病気ではないですね。おそらく風邪でしょう。暖かい場所でしっかり食事をとれば2、3日で回復するでしょう。」
たどり着いた病院の待合室には、老若男女が10人くらい座っていた。
20分ほど待って医者に診てもらえたが、言われたのはこの一言だけだった。
『ありがとうございます。』
口で言うことができないので、持ってきた紙にそう書き、病院を後にした。
「クリスティーナ。聞こえるか?回復するまでしばらく避難所で生活しよう。」
「...わかった。色々ごめんね。ありがとう。」
そう、話し終えた途端、背後でドカーンッと爆発音が炸裂した。
「なんだ!?」
後ろを振り返ると、病院に爆弾が落とされ、真っ赤な炎が燃え上がっていた。
「そんなっ。中には患者さんとお医者さんがいるのに!うっ。ゴホッゴホッ。」
「クリスティーナ、無理に喋るな。」
「でも!」
そう言っている間にも炎は燃え広がり、夜の暗さをかき消すほどの明るい光が辺りを照らした。
「とにかく離れるぞ!」
目の前で起きている出来事が信じられず呆然と立ち尽くすクリスティーナの腕を引き、避難所の方まで走った。
避難所に着くと、何人かが外に出てきていた。
そのうちの一人がクリスティーナに何があったのか尋ねた。
「君たち!大丈夫だったか。何が起きているか分かるか。」
「ミ、ミサイルが落とされて、それで、」
言葉がまともに話せなくなっているクリスティーナを見て、
「一旦中に入って落ち着こうか。」
室内に入りクリスティーナが少し落ち着くと、
「じゃあゆっくり話してもらってもいいか?」
「はい。あの時私たちは病院から出ました。そしてその後、病院に爆弾が落とされて、燃えました。炎がみるみると燃え広がっていったのを見ました。それで私、怖くて。」
「大丈夫だ。よく無事でいてくれた。もちろん君もね。」
と、俺の方を向いた。
「よくこの子を守ったな。立派だ。」
そして避難所に避難している人全員にこう言った。
「みなさん、聞いてください。ここも完全に安全ではありません。この近くにある病院に爆弾が落とされました。ここを出て、違う場所に避難することも検討した方がいいかもしれません。」
避難所が一気に騒がしくなり、明日ここを出よう、と言う声もいくつか耳に入ってきた。
だが、俺たちはクリスティーナのためにも、もうしばらくここに残ることにした。
「アルティオム、ごめんね。私のせいでここから出られない。」
「大丈夫だ。案外、外よりもここの方が安全だったりするかもしれないぞ。」
「ありがとう。」
この物語はフィクションであり、実在の人物とは必ずしも一致しません。
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