第4話 病王の賭け

「敵はこう考えるであろう」


 ボードゥアン王は部下達にそう語った。


「なるほど、我々は王都にて籠城していると敵に思わせるのですな」


 家臣が得心した。そして頷いた。敵の放った軍の一部を壊滅させ、それを英雄王に悟らせない。

 

 これも作戦の要であった。


「してガリアン卿よ。ここからが汝らの出番だ。まず、近隣の村や町から兵を集え。英雄王に悟られぬ範囲で良い。三千も集まれば上等であろう。そして、もう一つ、確か王都に向かう途中に湿地帯があった筈だ。英雄王の軍勢はそこを通る可能性がある。我々が先回りする為の道をそなたは知っているか?」

「はっ。四千程度の兵なら通れる裏道があります」

「そなたは善き君侯なり。ガリアン卿よ。兵が集まり次第その道へと出立する」

「しかし、王よ、危惧する点が。万が一、敵の斥候にみつかれば我々はお終いでございます」

「その時は……」


 王は家臣に聴こえる様に静かに説いた。


「私達のこれまでの行いが神の御前において全て間違っていたという証明だ。祈るしかない」


 早急に兵を集め、三千四百程の兵となった。しかし、それでも尚英雄王の軍の三分の一程である。


 家臣達に持たせた「例のもの」が勝敗の鍵を握るであろう。願わくは使うべき時を誤ってはならないと感じながら行軍していく。


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