悪役貴族に転生したので、推しキャラを正ヒロインに導こうと思います あれ? ヒロインたちに好かれているのは気のせいだろうか?
煙雨
入学編
第1話 転生
「ダイラル・ラッドリア……」
15歳の誕生日を迎えた日、MMORPGの悪役キャラに転生したことに気づいた。
【魔法学院アストレア】の悪役であり、主人公の邪魔をしたりするキャラクター。
「俺、転生したのか?」
(確か、今日は家で寝ていたはず……)
すぐさま鏡の前に向かい、自身を確認しに行く。すると案の定、金髪の美男性が目の前に立っていた。
「なんでこいつなんだよ……」
俺が一番好きなゲームでもあるアストレア。その中で一番嫌いなキャラがダイラルであった。
主人公と友達でありながら、ヒロインとの邪魔をする存在。それに加えて、最終的にはラッドリア国の第三王子でありながら、国を滅亡に導こうとした人物。
シナリオ通りなら、2年後には惨殺される運命である。
(そんなの嫌だ)
一回でいいから主人公やヒロインを見てみたい。話してみたい。だけど、そんなことは一つの要因にすぎない。
(俺はニーナを正ヒロインに導きたい‼︎)
悪役令嬢であるニーナは、ダイラルほど酷くはないが、辺境伯に追放されてしまう。
だけどヒロインと同じで、主人公が好きな女の子でもある。
この世界には公爵令嬢、隣国の王女、平民がヒロインになっている。
でも、3人のヒロインなんておかしく無いかと思っていた。
普通は4人や5人。絶対に制作者が途中でニーナを正ヒロインから外したに違いない。
俺はそれを許さない。だからこそ、俺がニーナを正ヒロインとして導きたい。
「どうすればいいかなぁ〜」
俺がそう呟いた時、お茶を持ってきたメイドが部屋に入ってきた。
(レミだ・・・・・・)
処刑される時でさえ、ダイラルのことを信じていてくれた唯一の存在。
ダイラルの幼馴染であり、王族に代々支えている専属メイド。
だからなのか、悪役のダイラルもレミにだけは心を許していた。
「ダイラル様、明日から魔法学院に通うのですから、王族としての立ち振る舞いをお願いしますよ」
「うん」
お茶をおき終わったレミに、一つ尋ねる。
「平穏に暮らすにはどうすればいいかなぁ?」
すると、レミはお盆を床に落とした。
「頭でもぶつけましたか?」
「え?」
「今までは目立ちたい‼︎ とか言っていたのに、唐突に真反対なことを言い始めたので・・・・・・」
そういえば、ダイラルが主人公たちの邪魔をしていたのも、目立ちたいからっていうしょうもない理由だったなぁ。
「いやね、万が一王族が悪目立ちするのもよく無いから、目立つことさえなければいいかなって思ってね」
まず、目立たなければ処刑されることはない。陰ながらニーナと主人公を結ばせるように動けばいいだけのこと。
すると、レミはハンカチを取り出して、目元を拭き始めた。
「ダイラル様からそんなお言葉を聞けるなんて、感激です」
「あはは・・・・・・」
レミは咳払いをした後に話し始める。
「王族ということから目立たないってことは難しいとは思いますが、目立ちづらくする方法ならあります」
「それはどんな方法?」
「簡単なことです。クラスで目立つ存在を作ればいいだけです」
(あーね)
それなら簡単だ、シナリオ通りなら俺と主人公は同じクラスになるはずだから。
「ありがと」
「いえいえ、明日から楽しんでください」
「うん」
翌日。
特別クラスに案内されると、そこには主人公や正ヒロイン、ニーナが椅子に座っていた。
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