第12話 圧倒

 何分だったのだろうか。あんなわかりやすく数の差で押したと言うのに。


 彼女の力は絶大だった。



「お前は自分の力を試したい。違うか?どこまで自分の高みに行けるのかやってみたい。そんなとこじゃないのか?」

「そんな幼稚なことを考えるようにみられてるなんて……愚考にも程があるよ」

「愚考か……ならなんなんだ?お前の試したいことは」

「?言うわけないだろ?もういいや。やっちゃって」


 僕はそう言うと後方に下がる。数の差は大きい。しかも味方は皆精鋭だ。時を止めることと硬質化程度では敵わないだろう。


「雷帝」


 ピカッ


「!」

「今の声は……そんなまさか」

「どうしたんだ!」

「大友さん、敵の増援です!」

「……相手は?」

「神童、桜野桃です!」


「ら、ららら、ららら、らら、ら」


 降り立った彼女の周りには鳥が一匹舞っていて、不気味な歌を歌っていた。


「妹のピンチに駆けつけてみれば……大友!何あたしの妹に手ー出しちゃってんの」

「げっ…桃姐」

「それにしても酷いなこれ。予想すると細川始末してクーデター起こしたってとこか」

「!」

「まぁいいや。とりあえず、倒れてて」

「桃姐といえども、僕の計画を邪魔させない!撃て!」


「それが答えなのね?」

「ああ。もう始まってしまったからね」

「じゃあ、さよなら」


 その言葉を言われた瞬間、目の前が光で埋め尽くされ、気付いたら僕は地に伏していた。




「さ、いこっか」

「……」

「……」

「おーい!桜?僕?大丈夫?」

「…」

「…」

「やり過ぎちゃったか。2人とも気絶してらぁ」

「それにしても……大友は気づいたんだね。あれに。じゃないと慎重なあの子が動くはずないもん。只、付くとこ間違えたな。突飛すぎるもんこれは」



私は目を覚ます。


「んー姉さん?」

「ん、やっと起きたか。ごめんねー防御忘れてた。あはは」

「防御?ってあ!充史君は?」

「横で寝てるよ。ほんとごめん!ついつい話に夢中になっちゃって忘れてしまった」


姉さんの目線の先には息を立てて寝ている充史君がいた。


「神童が聞いて呆れるよ」

「ごめんって」

「でも、ありがとう。助かったよ」

「桜〜」


私の感謝を言葉にすると、姉は急に抱きついてきた。


「ちょやめっやめてって」


この後ずっと離れなかった。

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