第38話 瀬戸内ダンジョン 攻略戦その4:ダンジョン第二層!

「ありがとー。アヤ、もっと頑張るからね」

「もー。アヤちゃんが可愛いのは当たり前じゃないの!」

「情報、ありがとう。では、次の休憩時にまたコメント返しするね」

「オレの活躍どうだい?」


 今、俺たちはダンジョン第二層、一層目からの階段直ぐフロアーに待機中。

 現在、午前九時前。

 支援部隊が二層内で調査、『清掃』をする間の休憩だ。

 補給部隊も俺たちの元に来てくれて、弾丸などの補給をしてくれている。


 アヤやナナコさん達は、行動食を摘まみながらコメント返しをしている。

 俺のイルミネーター上に表示されているチャットウインドウにも、コメントがいっぱいだ。


『指揮官のハルトきゅん、カッコいい!』

『多才なメンバーだねぇ』

『アヤちゃんをもっと映せー!』

『オマエ、ナナコちゃんやアヤちゃんだけでなく、他にも女をはべらかすのかよぉ!』


 ……こいつら、女の子だけ見たいのかよ? だったら、アヤやナナさんのチャンネルに行けば良いのに。


「声援ありがとうございます。ただ、アヤやナナコさんをモノ扱いなさるのは嫌です。発言にはご注意を」


 俺は、水筒から水を一口飲み怒りを込めた声でコメント返しをした。


『ハルトきゅん、カッコいい!』

『坊やかと思ったら、良い殺気!』

『ちきしょぉー』

『並みの奴じゃハルトくんに勝てる筈ないじゃん』


 まだコメントがうるさいが、俺は気にしないことにした。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「接敵まで十五秒。オーク五体!」

「各員、斉射!」


 斧や棍棒を構えたオーク共が迫りくるが、そんなの敵じゃない。

 俺も含めての射撃で殲滅される。


「これ、楽すぎる仕事じゃね。雇い主さまさまだねぇ」


「そんな事言って、ボス戦で『こんなはずじゃなかった』って言わないでくださいね、ジャックさん」


 一見、重戦士っぽい印象のジャックさん。

 皮膚装甲まで使っている重装甲タイプ。

 なのでタンク的な戦い方も出来るそうだが、本職はハッカー。

 電脳化もしていて本来は情報戦が専門。

 銃撃戦は、そこそこ出来るタイプらしい。


 ……俺も勘違いしちゃったからな。考えてみれば戦闘専門職なら、マサアキさんが簡単に勝てる筈も無いか。


 見た目の豪快さと違い、案外繊細なジャックさん。

 今も戦闘の合間を見つつ、マイさんやアンナさんに水や行動食を渡している。


「では、小休憩後。先に進みましょうか。もう少ししたら次の階段ですし……」


「ハルトくん。その前に敵の大群が迫ってくる。おそらくゴブリンライダー達。何かに追われてこっちに来てるよ」


 イルミネーターの動体センサーには小型の標的が多数、こちらに向かっていると表示されている。

 そして、その背後に何か大型のモノが居る。


「ここは一気に吹き飛ばそうぜ。射線に味方部隊はいないんだろ?」


「はい、タダシさん。ジャックさん、ナナコさんお願いします。他の皆は撃ち漏らしたのを片付けて! アヤ、防御をお願い」


「あいよ」

「まーかせて、ハルトきゅん」

「うん、おにーちゃん」

「了解」


 ジャックさんとナナコさんはパンツァーファウスト3を構える。

 ターゲットがソフト非装甲なのでHEAT成形炸薬プローブは伸ばさない。


「皆、二人の背後から避けて」

「アヤも、じゅんびばんたんだよ」


「後方確認OK! いっきまーす」

「撃つぞ!」


 パズンという音と弾薬チューブ後方から金属粉が反動を消すために吹き出した。

 二発の弾頭が前に向かって進む。


 そこに飛び込んでくるゴブリンライダー達。

 一発がゴブリンに当たって爆発。

 もう一発はそのまま突き進み、ゴブリンライダー達を追いかけていた大型ターゲットに着弾した。


「ひょー! すげー!」

「マイちゃん。はしたない事言わないで!」


 爆炎と金属破片がダンジョン内を飛び交う。


「精霊さん。アヤ達を守る壁をお願い!」


 しかし、俺たちの前にはアヤの作ったプロテクションがあって、何の影響もない。


「アヤちゃん、すごーい」


 ゴブリンライダー達は、流石に全滅。

 しかし、燃え盛る大型モンスターは俺たちに尚も迫る。


「うにゃー。焼きガニだぁ」

「確かに焼きガニだね、マイさん。でも油断はしないでね」


「あいよ、マサアキ!」


 燃えながらダンジョンの奥から出てきたのは、化けカニというか、ヤドカリか?

 甲殻類には違いないが、流石にパンツァーファウストを喰らっては死にかけだ。


 ……斥候同士、マサアキさんとマイさん。結構仲良さそう。


「一気に仕留めるよ」

「はいな、ハルトきゅん!」


 後は皆からの一斉射撃でカニは倒れて、マナの煙になった。


「モンスターを倒したら魔石以外にアイテムがドロップすることがあるって話だけど、魔石以外には何も出ないんだな。せめて焼きガニ位出たら良いのに」


「ですよね、タダシおにーちゃん。カニ、おいしそーだったもん」


「あ、ああ。そうだな」


 魔石をお気に入りの茶巾袋に入れているアヤに、おにーちゃんと呼んでもらって嬉しそうな御曹司、タダシさん。

 彼も、アヤの癒しの波動には勝てないのだろう。


 ……一番アヤに勝てないのは俺だけどな。


 こうして第二層も大した問題も無く制圧。

 同行する別動隊らも各部屋を確認するも、宝箱すら発見されない。

 エンカウントした敵からも魔石以外は何もドロップなしだ。


 ……そういえば、ウメダ・ダンジョンでも俺たちはドロップも宝箱も見ないな。もっと下層に行かないと見つからないのかな?


 認定された配信冒険者の映像でも、アイテムドロップはめったに見ない。

 宝箱もミミックだったり、爆発罠とかで中身ごと降っとんだ事もある。


 ……宝箱を見つけても、罠解除スキル持ちは俺たちのチームには居ないから危険は犯せないよな。

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