逆襲の僧兵~魔法とサイバーパンクなディストピアで、俺は超ブラック企業の社畜戦士になってでもダンジョン配信でバズって義妹を取り返す!~
GameOnlyMan
第1章 立身出世・入学編
第1話 世界が変わった日! 俺とアヤの出会いと別れ。
今から10年ほど前、西暦20XX年の春。
世界は、急激に変貌を遂げた。
突然、『ダンジョン』と後に呼ばれる迷宮の扉が世界中に開いた。
そして、そこから神話や童話で語られる魔獣、魔物たち。
後にモンスターと総称されるモノ達が溢れだし、人々を襲いだした。
後に「世界の覚醒」と呼ばれた事件。
今では並行世界からの侵略だとも、宇宙人が関わっているとも、時間遅れのマヤ歴の最後の日が来たのだとも陰謀論界隈で言われている。
ただ現在判明しているのは、「あの日」以降世界に「マナ」と呼ばれている不思議な力が出現、いや復活をした。
◆ ◇ ◆ ◇
あの日の夜、俺は両親とはぐれて燃え盛る街の中、ひとりさ迷っていた。
そんな時、俺はアヤに出会った。
アヤは、俺と同じく親とはぐれたのか、一人地面に座り込んでいた。
「キミ、どうしたの? はぐれちゃったの? 俺と一緒に逃げよ? 俺はね、ハルトって言うんだ。キミの名前は?」
「? 〇〇×× あーや?」
俺よりもとても小さく、泥や煤に汚れていたけれど、高級そうな服を纏う幼女。
亜麻色とも栗毛色とも見える柔らかそうな髪。
俺を見上げた大きくてこぼれそうな瞳は涙で一杯で、回りの火災の色に照らされて金色っぽく見えた。
幼いながらも鼻筋は通り、小さくも可憐な唇は恐怖に震えている。
炎に照らされた神秘的な美幼女。
それがアヤの初印象だった。
……この子、とっても可愛い!
命の危険があるこんな状況なのに、俺はアヤに一目惚れをした。
そう、してしまったのだ。
……ああ。今思えば、俺の運命はこの時に変わったんだ。
あの頃、俺は幼稚園の年長で六歳。
アヤは更に幼く、三歳前くらい。
俺の言葉が分からない様子だった。
「キミ。さあ、一緒に逃げよ?」
俺はアヤの小さな、しかし柔らかくて暖かい手を握り、一生懸命引っ張った。
生まれ育った街が燃え盛る中。
二人して逃げ惑う人たちの間を逃げるが、幼児の脚では早くないし遠くまでは逃げられない。
俺とアヤは吹きあがる炎とモンスター達に急かされ、いつのまにか行き止まりに追い詰められていた。
「キミ。絶対にお、俺が守るからね」
背後に震えるアヤを庇い、俺は怯えながらもそのあたりに落ちていた木の棒を構え、ブンブンと振り回した。
怖くても、女の子を守るのが男だと父さんに教えてもらっていたから。
「お前ら、こっちに来たら。い、痛い目にあうぞ!」
しかし俺たちを見て舌なめずりをする、俺とあまり体格が変わらない小鬼たち。
後にゴブリンというモンスターだと知ったが、彼らに囲まれてしまい後がない俺たち。
絶体絶命、もうダメだと思い恐怖で眼を閉じ、ゴブリンに背を向けアヤをぎゅっと抱きしめた。
しかし、俺たちの元に救いが訪れた。
「おりゃー!!」
ドカドカという音が響き、急に静かになった。
恐々目を開けて振り返ってみると、ゴブリン達は何処にも居なかった。
代わりに背を屈めニコニコと俺たちに微笑みかけている、初老で黒衣をまとう僧侶が居た。
「坊主! 小さい子を良く守ったな。後はワシに任せな。 おうおう、雑魚鬼ども! お前らは地獄に帰りやがれ!!」
それが師匠、
師匠は、とにかく強かった。
ゴブリン達を杖、後に
また、呪文を唱えながら何かの魔法も使いモンスターの群れを一掃。
後からメガコーポ私設軍や自衛隊が到着するまで、師匠は俺たちだけでなく他の多くの人々も助けていった。
……今思えば、『世界の覚醒』以前から
その後、救援に来た自衛隊の人に保護された俺とアヤ。
しばらく、施設で両親が迎えに来るのを二人共に待った。
数日後、他の保護された子供たちには続々と迎えが来た。
しかし、結局最後まで俺とアヤに迎えは来なかった。
……アヤの場合、本人が上手く自分の身元を説明できなかったのもあったんだろうけど。
両親の死を知り悲しむ俺を、ヨシヨシと小さな手で慰めてくれたアヤ。
俺は、小さなアヤをぎゅっと抱きしめ泣いた。
「坊主、それに嬢ちゃん。行くところがないなら、ワシんちに来るか? ワシの寺は幼稚園や孤児院をやってんだ」
その後、アヤと名付けられた彼女と俺は
「ハルおにーちゃーん。まってぇ。アヤ、そんなにはやくはしれないんだもん」
「アヤ、こっちだよぉ」
……結局、アヤの身元は分からずじまい。本人が名前らしき言葉としてしゃべった音から
「こ、これ!」
「アヤにくれるの? おにーちゃん、ありがとー」
俺が誕生日に髪飾りをプレゼントしたときも、アヤがとても喜んでくれていたのを、今もはっきりと覚えている。
・
・・
しかし、幸せな日々は長く続かなかった。
突然の別れが、俺とアヤに訪れた。
「ハルおにーちゃーん! おじーちゃーん! いやぁぁ!」
「アヤ! アヤ! ちきしょぉぉ! 離せ、離せぇ! 爺ちゃん、どうしてぇ」
俺が小学三年生になった頃、アヤはメガコーポ、フチナダ重工の魔法研究部門へ半分無理やりに保護、いや誘拐された。
「世界の覚醒」事件より数年前から急速に力を持ったのが、超巨大多国籍企業体「メガコーポ」。
ゆりかごから墓場まで。
ご家庭から職場、戦場まで。
生活すべてに関わる超巨大企業グループ、メガコーポ。
所有地内での治外法権すら取得し、警備という名目で私設軍まで所有していた。
彼らは不思議な力、魔法や超未来技術を駆使し、私設軍によってダンジョンから溢れるモンスター共を駆除。
ダンジョン地域を自社管理地とした。
その後もダンジョン関係の様々な事件、事故があり、対応できなかった国家の影響力は失墜。
いつのまにか、世界はメガコーポ数社の支配下に落ちた。
「すまん、ハルト。ワシには、もうどうにもできんのじゃ」
メガコーポは世界を支配する上で全人類にIDを割り振り、それにはDNAなどを含む多くの個人情報が紐づけされた。
その際、魔法能力、世界にあふれるマナに対する耐性も合わせて調査された。
「どうしてぇ、どうしてなの、爺ちゃん。アヤがどうして!」
「アヤにはな、ものすごい魔法の才能が有ったんじゃ。こんな貧乏寺で育つよりは、メガコーポの豪邸で暮らすのが、し、幸せになれるんじゃ!」
俺をギュッと抱きしめながらも、唇を噛みしめ涙をこぼす師匠。
今になれば爺ちゃん、師匠が血を流すくらい悔しかったのが分かる。
自分が持つ法術ではどうにもならない敵、メガコーポに対して幼子すら守れない無力な自分に対し、とても悔しかったのだろう。
「ハルおにーちゃん!」
「アヤ、俺は絶対にお前を迎えに行く! だから! だから待ってて!」
多くの大人達に連れ去られていくアヤ。
彼女に向かって俺は叫んだ。
必ず迎えに行くと。
「うん! アヤ、ずっと待ってる! おにーちゃーん」
振り返り、俺に向かって泣きながらも無理やり笑顔を見せるアヤ。
その髪には、俺がプレゼントしたピンクの髪飾りが輝いていた。
・
・・
アヤと別れて後の俺は、勉学にも修行にも力を入れた。
アヤを救い出す力を得る為に。
そして、アヤ同様にマナを操る才能が有った俺も「魔法使い」となった。
◆ ◇ ◆ ◇
「師匠。俺、ここまで来たよ。メガコーポ、フチナダの中で偉くなって、絶対にアヤを取り戻してやる」
今、俺は大阪。
フチナダが管理しているウメダ・ダンジョンの前に来ている。
近くにあるフチナダ私設軍士官学校に入学、フチナダの内部に入り込み、アヤを奪い返すために。
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