挑発
結界の中で静かに涙を流すミュートスから、意思を託された再び僕は魔神の方に戻ってくる。
「くくく……意外であったぞ?まさか、人の子のような冷血漢からあのような熱い言葉が聞けるとは。あの黒い粘性人型実体を知っているということは、かなりの非道を働いていることだろう?よくも、言えたものだ」
魔神の前にまでやってきた僕に対して、彼女が口にするのは侮蔑の言葉であった。
「我は人の子のことを魔法にしか興味のない男だと思っていたのだが……何故、優しくするのか?知っておるぞ、我は。人の子が世界中に置いている実験室で何を行っているのか」
「……何が言いたいの?」
「何……我としてはただ、疑問であっただけだ。何故、人の子があの女の為に戦うのか。あぁ、そうか。王女の血か。尊き血である彼女をばらし、研究し尽くすために彼女へと尽くし、恩を売ろうとしているのか?」
「……」
「どうした?図星か?」
何を、どんな目的なのか。
魔神は僕のことを挑発し続ける。
「……うぅーん」
本当になんでこの魔神は僕を挑発しているのだ……?目的は、何?この場において魔神はどうあがいても僕を倒す以外に攻略法などないだろうに。
僕のことを、研究室のことまで知っているのであれば、王女なんていう大して価値もない個体よりも魔神という研究体質の方が気になることはわかっていそうなものだが……それに、なんで僕が人でなしだよ!アピールを必死にしているのだろうか。
「……ッ。人の子!」
心のうちに疑問を抱く僕に対して魔神は言葉を続ける。
「お前のような人と思えぬ恐行へと手を染める人の子がま」
「御託は良いよ?これまでいいようにやられているだけの負け犬がどれだけほざいても響かないからさ……何?口を回して、怖いの?」
何故、魔神が口を回すのか。
考えた結果、その答えなど恐怖しかないだろう。
「……ッ!?」
さんざんと言葉を並べてこちらを挑発し続けていた魔神は僕の言葉に一瞬で怒りの表情を浮かべ、挑発に乗ってくるのだった。
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