正体
黒い粘性人型実体。
何処かで見覚えがあると思っていたが……そうだ。数年前に僕が実験で作ったものにそっくりなのだ。
国の方からもう死刑囚だからとくれた死刑囚を使って行った人体実験。
その果てに僕も黒い粘性人型実体を作った覚えがある。
極限にまで人間性を削り、魂からありとあらゆる情報を抜き取り、その精神を崩壊させてやった結果。
その体がどろどろに溶けて黒い粘性人型実体が出来上がった。
「……あれを作る段階でもう人間性は消失している。既にその肉体も、精神も、魂も死んでいる」
壊すのは一瞬だが、詰み上げるのは難しい。
サクサクと壊していった死刑囚もとい黒い粘性人型実体であるが、彼らを元に戻すことはどうあっても不可能だった。
「そ、そんな……それじゃあ、つまり……もう、戻らない、ということですか?」
「そういうことになるね。あっているよね?エウリア」
「……」
僕の疑問の言葉に対してエウリアも静かに頷く。
「……あぁ、そういえばそう」
それを受けてショックを受けるミュートスに対して、リリスが思わずと行った形で声を上げる。
「見たことがあるような気がしていたが、確か以前にネージュが実験作っていたことがあったものな……あれで、人間性を再度取り戻すのは難しいか」
そして、そのままリリスは余計なことを口走りやがる。
「……えっ?」
「おい?」
リリスの言葉にお姉ちゃんが疑問の声を上げると共に、僕が慌てて声を上げる。
「ねぇ、どういうことな」
「ひっく」
そして、そのままお姉ちゃんが疑問の声を上げようとしたところでミュートスの瞳から涙が流れ、その流れが止まる。
「……嘘です、そんなこと……あるわけがないんです」
「お姉ちゃん……」
そのまま静かに涙を流しながら現実逃避のような言葉を漏らすミュートスに対してマリーヌが呆然と声を漏らし、そのほかも視線を下げる。
「……ッ」
そんな中で、魔神が動き出そうとしているのを察知した僕はそれに対して素早く視線を送るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます