DDDD(ダンジョン・ディテクティブ・ダイヤモンド・ダスト)
平行宇宙
プロローグ
第1話 追放・・・1つめ
「キーンキ騎士団カーサオ第3師団所属レベッカ・キーンキ。本日をもってキーンキ騎士団を除名とする。」
「えっ?」
「即刻騎士団証を返納し、全装備を返還。この場より立ち去れ!!」
騎士団員1300余名の立ち並ぶ中、カーサオ第1師団長にしてキーンキ騎士団総長であるマゴーン将軍の口から、大音声で告げられる。
マゴーン将軍の口はニチャリとゆがみ、その瞳は目の前に頭を垂れて震える少女に歪んだ愉悦を湛えていた。
「どうして・・・」
弱々しい声が少女の口から漏れる。
「どうして、だと?図々しい。おまえは上官の命に従わず、ステータスが高いことを鼻に掛け、同僚を足蹴にしては無駄飯を食らっているではないか。高ステータスだろうが役立たずに用はなし。だいたい誇りある騎士団の鎧を、市民ですらないスラムの孤児が纏うなど、侮辱も甚だしいのだ。適材適所。ゴミはゴミ溜めへと帰るが良いわ。アハハハハハ・・・」
アハハハハハ・・・・
ドッと、地から湧くような笑い声が場を包む。
将軍の嘲笑に乗せる騎士たちの嘲笑は、どこまでも低く昏く少女に襲いかかった。
肩をふるわせ耐える少女。
が、すでに爆音と化した嘲笑の中、下を向いたまま、一歩、二歩と後ろずさり、そのまま、きびすをかえすと、集会場としていた第一訓練所を走り去る。
そのまま、寄宿舎としてあてがわれていた4人部屋の自身のスペースへと駆け込み。震わせた肩をさらにふるわせて・・・・
「アーハハハハハハ、ハハハハ、ヒィ、腹が腹が笑いでねじれるぜ。アハハハハ・・・」
身体をぐるりと回して反り返らせ、大口を開けて笑い出した少女。
その目からこぼれたキラリとした液体は、悲しみや悔しさ・・・・を、一切湛えていなかった。
何を隠そう、どう見ても屈辱を耐えて震わせているように見えたその両肩は、単に笑いを必死でこらえていたためであったようだ。
目からこぼれる涙とて、笑いの反動というやつか。
腹を押さえ、あふれる涙を指で拭いながらも、ヒイヒイと過呼吸を誘発しつつ笑い転げる少女。
他の騎士団員が集合して、決して目撃され得ないと分かっているからこその醜態だが、本人はあっけらかんとしていた。
ある程度、笑いの発作の収まったのを機に、少女は乱暴に騎士団であてがわれた鎧一式を外していく。
現れたのは、少年、とも見えなくはないスラリとした肢体。
そのスカイブルーのカーリーな短髪が、少々猫目気味な丸くつり上がったワイン色の瞳によく映える。
少女は私服の焦げ茶色の短パンと同色の短いジレを淡い緑のシャツの上に着ると、少ない私物を肩に提げた。
「レベッカ・・・」
ちょうど支度が終わった頃、同室の同僚が戻ってくる。
4人部屋だが同室はレベッカを入れて3人で、いずれも平民だ。
騎士になれるのはそもそもほとんどが貴族。
貴族は新兵とはいえ個室を与えられる。
地位によっては、従者を連れていて共に住むことも認められるため、一人で複数の部屋を与えられていた。
個室は役付きになれば平民でも与えられる。
女で、平民、しかも階位のない者はこれで全員、ということだ。
最年長のサーシャは8年目、もう一人は3年目のケアリー。
そして、3ヶ月にして無事除隊になったのが、レベッカ、というわけだ。
レベッカが住むのはキーンキ大公国という。
キーンキ大公国はここカーサオ・ダンジョン都市を首都とする5つのダンジョンからなる国だ。
魔物が跋扈する地上を捨て、遙か昔、偉大なる王たちがダンジョンに住居を移すよう決めたという。各王は複数のダンジョンを支配し、それぞれを国としているが、いずれもが地上と、決められた階層以下の移動は許可制を取っている。
その許可を得るには学校を卒業せねばならず、あるステータス以上の者はその学校に入学は義務づけられる。その学校の費用はバカ高く、平民には高嶺の花。とはいえ義務がある者は入学し払えぬ者にはさらなる義務が課される。すなわち指定機関での10年の任務だ。
この10年の間には給料から定額が天引きされ、借金の返済に充てられる。返済しきったとしても、この10年の任期は減じられない。そう、クビにでもならない限りは・・・
レベッカ・キーンキ17歳。
学校を卒業し、騎士団に強制入隊して3ヶ月。
本日付で、騎士団を除隊。
狙ったとおり自由の身になったのだった。莫大な借金と共に・・・
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