第20話 どこかで見たような……

 吹っ飛んだイグニスの落下地点に土煙が立つ。にしてもすっげぇ速さで飛んでったな……。これは流石にやったか!?

 流石に生きてはいないだろうと安心しきって死亡フラグを立てる。いやまぁこれは回収されることはない……


 そう思ったのも束の間、土煙の中からキズと汚れだらけのイグニスが歩いてきた。……オイオイどうなってんだよ……!


 イグニスは煙が無くなったところで立ち止まり、胸ポケットから何かを取り出した。

 紅い光を放つ黒い木の枝。……どこかで見たことあるような気がするんだよなぁ。


 [ユグドラシルの枝(不死鳥)の効果が発動しました クールタイム 71:59:42]


 ユグドラシル……!!


「あぁーっ! お前か!!」


 突然叫んだ俺にイグニスも驚く。


 そうだ、このアイテムは……!

 間違いない。あれは俺が苦労の末に手に入れたゴミ、EXアイテム:ユグドラシルの枝だ。

 前のオークションで400万リベラルも出したイグニスってのはこいつだったのか!

 なんか(不死鳥)とかついてるけど、たぶん「所有者によってその他効果付与」ってやつがはたらいてるのだろう。イグニスが炎を使うから不死鳥に変化したみたいな感じか……?


「な、なによ急に変な声上げて!」

「お前かよ! 400万リベラルも出して、そいつを俺から買ってくれたやつ!」

「は? 何言って…………まさか!?」

「フフフ……そのまさかだよ。そのユグドラシルの枝は間違いなく俺が出品したものだ。ということで、この間は俺のために大金はたいてくれてありがとさん♪」


 俺から告げられた真実に絶句した。さあもっと驚くがいい!!


「ちょっと待って。この枝はあんたが手に入れた物なのよね? じゃあEXモンスターを倒したのもあんたってこと!?」

「そうそう。いや〜、あれは強かった強かった。完全に理不尽ゲーだったけど避けてる時の爽快感はもうすごかった」

「……それもう少し聞かせてもらえるかしら」


 ◇◆◇


 俺はイグニスにここに来るまでの経緯を全て話した。


 バグのこと、スライム狩りのこと、ユグドラシルのこと、その他諸々……。


 まぁ当然だがレベル0のところから信じてはもらえなかった。ステータス画面を見せたら自分の頬を何度かつねって現実であることを確認し、驚愕した。

 他のにわかに信じがたいことも全て事実であることを説明し、一息ついたところでイグニスは一言。


「あんた頭おかしいんじゃないの!?」

「類まれなるゲーマーと言ってくれたまえ」


 ん? いや、自分でも思い返せば頭おかしいと思うわ。なんでEXモンスターとか知る前から縛りプレイ始めてんだよ。


「まさかレベル0のプレイヤーがEXを倒していたなんて思いもしなかったわ……!」

「そうだろう、そうだろう? ところで、なんでその枝が本物ってわかったんだ? 周りはみんな偽物だって騒いでたじゃねえか」

「なんかすごそうだったから50万入れてみたらどんどん値段が上がっちゃって、負けたら嫌だなーって思ってたくさん入れたのよ。本物なんて確信は無かったわ」


 ……えー、ここで新情報。イグニスは負けず嫌いのバカらしい。俺とは違う方向の。


「ん、そうだそうだ。そのタグについてる王冠ってなんなの?」


 俺はイグニスのプレイヤータグについてる王冠マークを指差して聞いた。


「これは最速最高レベルの称号よ。リベルタスで最初に何かをしたプレイヤーには称号が与えられるらしいの。現時点では私がリベルタス最強のプレイヤーってこと!」


 イグニスにステータス画面を見せてもらうと、Lv150(MAX)の表記。すっげぇ、俺と150も差があるよ!

 てか最初に何かやった人に称号か……。もしかしてEX討伐の称号とか俺持ってるんじゃね? 後で確認しよ。


 俺とイグニスは他にも自分たちのことや持ってる情報を共有しあい、しばらく談笑した。


 しばらく話したところで、フレンドにもなってもらえた。リベルタス初のフレンドが現時点最強のプレイヤーか……。


 [ イグニス とフレンドになりました!]

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