9話 少年は泡沫に願い、少女は天廊を舞う3
――同刻、
「何だ?」
不安気な周囲の騒めきに釣られた
騒動の隙を狙い
彼らの視界に映るのは、天と地を結ぶ精霊力の輝き。
「
夜闇にあっても遠くの空を染め上げているのだ、発生元は
それだけの距離を物ともせず、これほど明瞭に朱金の色彩すらも映しているのだ。
間違いなく、
否。あの
朱はより透徹に黄金はより
その色彩を
「――
「……今、何と?」
「いや、何でもない」
無心の内に自身の口から転び出た言葉の意味に思考が及ぶにつれ、
つまりあの輝きは、現世に
本来、神柱へと昇った存在は、現世にその姿を顕すことは無い。
神柱が有する象は、現世の均衡を歪めるほどに重いからだ。
しかし、これには例外が存在する。
龍穴の代替。特異点となる正者の器に神柱を
それは、
――
しかしその両名ともに
つまり、それ以外の誰か。それも、
――
天啓の如く、咲の隣で縮こまっていた少年が記憶に蘇った。
記憶にも残らぬほどに凡庸な少年は、相貌すらもその記憶には朧にしか残していない。
だが、その存在の意味するところを理解するにつれ、一つの単語が脳裏に浮かぶ。
「……
「あの輝き、ご当主どのには心当たりが有りますようで。
――良ければこの至心、相談に乗りますが」
ぼそりと皮肉気な呟きの内容はさて置き、口の動きは至心に届いたらしい。
「何でもない。
――有ったとしても、翁どのには及ばぬ
しかし、
思わず鼻白む至心を余所に、
未だ銃弾の飛ぶ舞台の裏手に回り、隠れて銃撃を遣り過ごしていた守備隊隊長の
「相手の出方はどうか?」
「厄介ですな。
――正直、
取り回しに容易く、当たり所が悪ければ一発で死ぬほどの威力。
しかもそれらが、即席の訓練である程度は賄えてしまうのだ。
対人戦に凶悪な威力。
防人は兎も角、初期に交戦した正規兵には
「ふん。馬鹿にしていたが、中々、如何して。随分と粘ってくれる」
鼻を一つ鳴らして、
「ご当主さま、危険です!」
「気にするな。これは
ここの連中と沖の
「は?
「どうやって情報を抜いたかは知らんが、あの方角からして奴らの目的は
戦闘は終わっているだろうが、後始末程度は間に合わせんと恰好がつかん」
「ですが、奴らの持つ銃は無視できません。
加護の上からでも、衛士を打破できる事実には変わりないんですよ」
「気にするなと云った。――
激しさを増す弾幕の中、そう云い置いて悠然と歩を進める。
静かに膨れ上がる精霊力が、
八家の当主ともあろう己が
「踊れや詠えや――
刹那の後に、
長さは
とは云え、
短銃に対して如何に無知であろうとも、短時間にこれだけ戦闘を重ねれば有効射程程度は大まかにも予想はつくからだ。
充分に距離を取った位置から落ち着いた所作で、
警戒していた本命の教会騎士が詰めているのは、
であるならば相手は陽動、それも後詰を警戒しなくてもいい
艦船までが
「……ならば、遠慮してやる必要も無し。
鏖殺である。伏して素っ首、差し出すがいい」
呟きをその場に残し、
理解しえない事象への驚愕が、その場に立つ者たちの動きを止める。
その隙が見逃されることは無い。夜闇を裂く焔の閃きが幾重にも舞い、その度に賊の身体が斬り飛ばされて宙を躍った。
ひゅるり、しゅるり。雅楽の笙に似た響きが闇を彩る。
共に舞いを重ねる火閃が悲鳴と逃げ
♢
「
咲もまた
紺碧の神域に沈んだはずの領域が、晶の立つ一角からその輝きに塗り替えられていく。
それは正に神話の再現、神代が
咲たちがその光景に対して、何かできることは赦されてもいない。
吹き荒れる神威に対して、片隅で耐えるくらいが精々である。
だが、晶とベネデッタは違う。
神気が見せる世界の奪い合いを前にして、その場に立つことが赦された2人は互いに対峙を果たしていた。
ベネデッタの後背には、玉座に座るアリアドネ。
対する晶の後背には、黄金に燃立つ長髪と蒼く揺らめく焔の眼差しを煌めかせた童女が立っている。
「久しいのう、アリアドネ。
相も変わらず、手癖の悪さは一級品と見える」
「……貴様に云われたくも無いな、
2度も得られるはずの無い恩寵の御子を、随分と粗雑に扱っているみたいではないか」
「くふ。それは
――善いであろう? やらんぞ」
「それは恩寵の御子が決める事。
現世に
「
其方は振られたのじゃ、大人しく帰りゃ」
見せつけるかの如く、童女の繊手が柔く晶を抱きすくめる。
「……仕方あるまい。余の神威を見せつけて、勝利の凱旋に御子を持ち帰るとしよう」
「忘れたか? 既に此の地は余の神域に陥落た。
加えて、貴様は此の地への不可触を約定しているのであろう。
如何に抗おうとも、余の勝利は揺るがんぞ」
「然り。
神柱が交わす応酬の締めに、
晶から
炎が奔る。
虚空を踊り地に
世界を支える五行の一角が、抵抗も赦さずに紺碧の輝きを熔かしてゆく。
朱金の神気が舞い踊り、それほど間を置くことなく世界は元の姿を取り戻した。
「何故……。神柱は不可侵の約定を破れないはず、一体、如何なる御業を行使ったのですか?」
神柱は、嘘偽りを口にすることができない。
己が司る
言葉の重みは人のそれよりも重く、神の一言は誓約と斉しく在る。
言葉が舌先だけの軽さしか俟たないのは、
ベネデッタたちが目論んだ策動は、何よりもこの地に
約定の上で
神域の塗り替えという荒業に及べば、必ず
約定による神柱への
「どのように聴かされていたかは知らぬが、妾は何も。
妾が不可触を約したのは、此の地に
それは其方たちが、自ら抜いてくれたであろう。
何時の世も、
「く…………!!」
勝ち誇る
聖アリアドネの玉座を中心とした周囲のみが辛うじて朱金の侵攻を遮っているが、所詮、模倣にしか過ぎない神子の
それも
宙を舞う
西方の祝福の神域特性は、封じた頁の数に応じて出力を底上げする。
「……感謝する」
その様を見て、晶が口を開いた。
「お陰で俺は、自分のことを少しは知れることができた」
「…………いえ。理解に至れたのは、貴方自身の力かと。
微力なこの身が晶さまの助力足り得たのは、僅かなものです」
真逆、感謝を口にされるとは思っていなかったのだろう。
それが訣別の一呼吸替わりである事に気付き、僅かな瞠目の後、少し寂しそうにベネデッタは微笑んだ。
「……それに、勝利したと思いあがられても困ります。晶さまの神器は西方の祝福にて封じさせていただいている事、お忘れですか?
晶さまが武勲を謳うには、我が身を破り聖アリアドネの神域を退けるだけの一撃が必要なのですよ」
「……………………」
ベネデッタの指摘に、晶は反論が浮かばなかった。
彼女の指摘した通り、
――それでも勝利の確信に、
「
そもそも、――」
促す
自身の中に在った
――だが何故か、
晶は、
「斜陽に沈め――
晶の願いに応え、朱金の炎が昏く燃え立つ。
刹那に輝きは
「なっ……!!??」
その異常な結果に、ベネデッタは己の神器に視線を落とした。
何よりも己が行使した神域特性は確かに、総ての頁を費やして彼の神器を封じた手応えはあった。
「然り、アリアドネの神子よ。
其方は間違いなく、
――残念であったの。妾の持つ残り3つの神器であるならば、こうも行かなかったであろうさ」
――朱金の輝きに照らし出された彼女の影に、西方の祝福の影が生まれていない!
「
如何に
本来ならば日輪に生まれないはずの影を生む。その矛盾が綴るのは、一切の護りを無視して生じた影に干渉する権能だ。
流石に
「……互いに充分、手札は切ったよな。
次で詰めだ」
「――ええ、そうですね」
晶の言葉に、ベネデッタは肯いを返した。
その唇が震えて、紺碧の輝きを守護する障壁と杭の法術が晶の前に立ち塞がる。
後に言葉は要らない。
ただの一振り。灼闇の焔を携えて、晶は
神気が猛り、晶の掌から流星が一筋、流れて尾を引く。
迎え撃つ杭は無尽に生み出され、その都度に
灼闇と光輝の競り合いは終わりも見えず、晶の足には後退の影もちらつかない。
斬って、避けて、砕いて、進む。一歩の度に攻勢は激しさを増し、裏腹に晶の駆ける
そして、
「勢ィィィイイッッ――――!!」
閃く刀と杭の終焉は唐突に。砕け散る杭の群舞を抜けた晶は、障壁に向けて最後の一撃を放った。
――激突。
しかし、
振り絞る晶の気迫に圧されたか、障壁に喰い込んだ
己を構成していた灼闇の焔へと身を変えて、障壁諸共にその身を散らした。
――勝った。
僅かに垣間見えた勝機を、ベネデッタは確かに掴んだ手応えを覚えた。
神器の影を作り出す権能。ある意味に
しかし、所詮は影。神器自体は不壊であろうが、神器の影にまで不壊の特性が及ぶわけはない。
杭で強度を削り、障壁で圧し潰して自壊に導く。
ここまでの近接を赦せば、晶に神器を再度創り出す余裕すら残らないはず。
狙いは的中し、思惑は充全に果たされた。
互いに徒手の手段しか残らないのであるならば、徒手格闘に通じたこの身に軍配が上がる!
ベネデッタは手から西方の祝福を離して、一歩。
彼女が拳を握り締めた先で、虚空に躍る晶の掌に日輪の輝きが宿っている様に瞠目をした。
――彼女の誤算はただの一つ、晶の神器が
響く声は短く小さく、しかし確かにベネデッタの掴んだ勝機を霧中へと消した。
「
――致し方無し。
敗北を突き付けられ、ベネデッタとは裏腹にアリアドネが瞑目し神域が散り消える。
「――
その視界が
その直後、
放たれた灼獄の奔流が、夜闇を裂いて
――それが、戦闘の終結を告げる最後の輝きとなった。
「……
「何とかな。とは云え権能を行使い過ぎた、流石に精霊力は限界だが」
「うむ。
後は、聖女どのを担いで逃げるのが精々かね」
――そして、直前に介入したサルヴァトーレとアレッサンドロに護られたベネデッタが座り込んでいた。
「俺たちの、
「はい。
――そして、私たちの
総てを出し尽くした。
肩で息をする晶を否定することなく、ベネデッタは肯いを返す。
「だったらもう、ここに用は無いだろ。
――さっさと帰れ」
「……追撃はしないのかね?
正直、今は抵抗のしようがないが?」
ちらり。咲と諒太に視線を向ける。
神気の煽りを諸に受けたか、2人とも直ぐに判断に動ける状況ではない。
晶の後背に抱きつく
後で怒られることを覚悟の上で、晶は独断で3人を見逃す事に決めた。
「どうせあんた等も、俺たちを殺す気は無かったろ。
経験不十分な
……特にベネデッタの戦闘が一本調子だしな、
「危なかったのは確かですよ。
ですが勝利はしないと云う、こちらの意図を汲んでくれて嬉しいです」
「…………どう云う事だ、ベネデッタ・カザリーニ」
肯定を返すベネデッタの後背で、息も絶え絶えのアンブロージオが瓦礫を掻き分けて立ち上がった。
「
それでも
片腕が無く、止血も侭なっていない。
吐く
「……護るためですよ、アンブロージオ卿」
「貴様が敗けると云う事は、アリアドネ聖教が崩れると云う事だぞ。
売国の汚名を晒して故郷に帰る
「崩れませんよ、アンブロージオ卿。
崩れ去るのは、この聖伐を企図したソルレンティノ卿が率いる主戦派です。
彼らが沈むだけで、聖教の教義には揺らぎも生じないでしょう」
「なん、、だ、と」
目の前の少女が何を口にしているのか、霞が
「――貴方が真なる教義と信じているものは、500年ほど前に制定された
分かり易く、聖伐に繰り出しやすく、
西巴大陸を平らげるために作られた教義です」
「そ、…………」
辛うじて残った木材に寄りかかり、アンブロージオは視線を彷徨わせた。
「分派を作り、決定的な敗北を避ける。
……この構造は非常に上手くいきましたが、アンブロージオ卿も知る通り、分派の総数が飽和しています。
このままでは、主戦派の教義が原典を汚染しかねない。
故に分派の整理が、
それが今、成ったと、淡々とベネデッタは語った。
「教皇が不在になりソルレンティノ卿が筆頭となって、次代の権力構造が確立する
――時機の整合が難しかったのですが、無線、でしたか?
もう直ぐにでも、ソルレンティノ卿と追従した分派の失墜は避けられないものになります」
「…………………………、」
言葉は最早、続くことは無い。
ずるりと背を預けていた木材から冷えかけた地面へと、アンブロージオは静かに崩れ落ちた。
その姿に一瞥のみを遺して、ベネデッタは晶に視線を戻す。
「…………残る目的は知っての通りです。
そもそも、源流たる龍穴を支配する神柱相手に神格封印が及ばないことは、最初から分かっていました。
ですが、涅槃教の神器を引き抜くことが出来れば、この風穴の支配権は一時的に空白になります。
涅槃教から奪った風穴の支配権を取引条件とすれば、晶さまの
私がこの地へ来訪した、それが目標の総てです」
こちらは叶いませんでしたけどね。自嘲気味にそう零して、アリアドネ聖教の聖女は踵を返す。
引き連れる2人の騎士の背の向こう側で、ベネデッタは晶に微笑みだけを
「これ以上の騒動が起こる前に、私たちは故郷へと退散すると致しましょう。
――晶さまに又、お逢いできることを願って。この身を憶えておいていただけるならば、このベネデッタ、幸せに
――――――――――――――――
「――善く頑張ったのう晶、それでこそ妾の見込んだ比翼ぞ。
――む?」
ベネデッタたちの姿が木立の向こう側へと消えた後、
するりと宙を滑り晶の両腕に幼い肢体を収めると、朱金の輝きが散りゆく瞬きに唇を尖らせる。
「……なんじゃ、もう刻限かや?
久方振りの現世ぞ。もう少し留めておいても好かろうに、の?」
「……力不足、申し訳ありません」
己の中から
「善い、機会は幾らでもある。伽藍で待っておるぞ、直ぐに帰ってきてたもれ
――そうそう、咲と云ったな?」
晶の腕の中で肢体を捩り、
「……………………はい」
「今は妾と晶の時間じゃ、
……やらんぞ?」
「……………………は」
「善い。現世に傍で在り続けることは赦してやる。
……晶や、帰りはもう少しであろ?」
「はい、直ぐに。
「くふ。晶の武勇、
その言葉を最後に、呆気なく
完全にその輝きが晶の内奥から失せてから、晶は大きく息を吐いて残った石段へと腰を下ろした。
「……っはあぁぁぁぁぁ、、、」
「――お疲れ様、晶くん」
「はい。
咲さまも、ご無事なようで安心しました」
神威が消えたことで、漸く身体の自由を取り戻すことが出来たのだろう。
その隣に、有無を云わさず咲が腰を下ろす。
「まあ取り敢えず、これで終わりかしら?」
「いえ。『導きの聖教』の一件が残っています」
「
「それも有りますが、もっと根が深いです。
――ベネデッタの祝詞を覚えていますか?」
「祝詞?」
「穏やかな風。『アリアドネ聖教』の神話に
「……そうだった、わね?」
正直、憶えていない。その表情のままに曖昧に肯いを返す。
「はい。
ですが、『導きの聖教』の祝詞には、風の記述が一切入っていない。
神柱を顕す事物ですよ? 絶対に変更できない点なのに、です」
――確かに。
村で聴いた祝詞には、
肯定を返す咲を、晶は真剣に見返した。
「風の要素を完全に無視して、それでも『導きの聖教』の信徒たちは疑問にも思っていなかった。
つまり『氏子籤祇』、ベネデッタが云う『
晶の推測に、ぞくりと咲の背筋が粟立った。
それでも、晶の言葉は終わらない。
「以前の謀叛でも今回の神託でも、一致した事物は『
……これがアリアドネ聖教の事を指していないのであるならば、」
――彼らは一体、
晶の
その沈黙だけが、2人の間に横たわる。
暫くの後、和やかに腰を下ろす石段の前に、諒太と回生符に癒されて意識を取り戻した
「…………おい」
「は……、ぐっ」
ばきっ。
眉間に皺を寄せた諒太が思い切り振り被って、顔を上げた晶の頬を殴り飛ばす。
「ちょ、っ――」
突然の暴行に咲が
確かに
それ以外に選択肢がなかったとしても、この場を預かっている者として一言は在っても文句は云えないだろう。
――だが、
「いいか、
手前ぇの能力に、
「……は、」
投げ掛けられた言葉の斜め上さに、見逃した責を問われると覚悟していた晶と咲は呆気に取られた。
2人並んで仲良く呆気に取られるその姿に、諒太が更に言い募りかける。
しかし気勢が削がれたのか、言葉の持って行く先を失い、舌打ち一つ顔を背けた。
「俺
休んだら晶
そのまま晶たちの返事を待たずに、諒太と
最後に一つ、
「……何だったんでしょうか?」
「さあ…………」
諒太の真意も図れぬままに、2人揃って首を傾げる。
殴り飛ばされた衝撃からか、『導きの聖教』を取り巻く謎からの不安は薄れてくれた。
如何にかなる。努めて楽観しながら、咲は話題を変えた。
「
「え?」
「
結構、気に入られたんじゃない?」
「さあ…………」
「来ても、迷惑なだけだとは思いますが。案外、直ぐにでも再会するかもしれませんね」
――まぁ、そうかもしれない。
晶の返答に、咲は無言で首肯を返す。
残った謎は意図も見えないままに、
逃げた
そして謀られたのは、
何れ事態の収束に、
――それでも、気付いたことがある。
「ねえ、晶くん」
「はい」
「先刻、私の事、『咲』って呼んだでしょ」
「え……え?」
「ねぇ。もう一回、呼んでみて」
「や、あの、それは……戦闘の最中でしたので」
「別に戦闘の最中じゃなくても良いでしょ、ほら」
「――申し訳ありませんっ!」
「怒ってないわよ。謝るくらいなら、ほ~ら~」
「勘弁してください、お嬢さま!」
腰を下ろした石段の領地を、2人並んで奪い合い譲り合い。
微笑みしか残さないその戦争の結末を知るのは、
――静かに見下ろす、月の明りのみであった。
♢
TIPS:ベネデッタの目的。
神託を受けた時点で、敗北することは確信していた。
そもそも勝利しても統治のための資本も用意できない以上、
であるならば敗北することで、これ幸いにのさばっている主戦派に属する分派を切り捨てて整理することを決める。
だが同じ神託で、
つまり敗北することと恩寵の御子の奪取が、彼女の目的となる。
そのためには
この矛盾に対する救いは、風穴の支配がベネデッタの勝利と等しくはないこと。
アンブロ―ジオに
その後に晶に勝利することで、風穴の支配を
どれだけ敗北しても責任は主戦派に行くため、穏健派であるベネデッタは自由に動けた。
余話
――
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