プロローグ 2

 西から昇ったお日様が、東に沈んだ夜の世界。

 その暗闇を炎が焼いた。


 火炎が染める灼熱の大地。

 舞い上がる熱波が夜の温度を赤く侵食する。


 カエルはこの時ばかりは歌うのをやめた。

 稲作の天敵であるザリガニも体をつの字にして逃げ去った。


 そうしなければ、ほら。

 あの水田のように蒸発させられてしまうから。


 炎の中には二つの人影。

 一つはゆうに三メートルはあろうかという牛頭のモンスター・ミノタウロス。

 頭部に二本の角を有し、全身を分厚い筋肉の鎧で包み込んだ、まさに野性が生み出した狂戦士。


 対峙するのは一人の〝乙女〟。

 シルエットは随分と小柄で、ミノタウロスよりも頭一つ分ほども小さい。

 頭には背伸びするかのようなとんがり帽子。華奢な肢体に紅蓮のセーラー服を纏い、焔に揺れるスカートの下で眩しき純白が顔を出す。


 乙女はまさに炎の化身。

 そして、この世界に流れ落ちた流星のともしび

 神秘のエネルギーが鋼鉄の体を駆け巡り、顔の中央にある単眼が目覚めるように輝きを放った。


 それは神秘のエトワール。

 ウィッチでエッチなウィザードリィ。

 魔法仕掛けの魔導人形マギアギア


「魔法少女マギアギア☆エリス! ここに完成―――」


 その声は鋼鉄の乙女の中から。

 魔導人形を操る〝少年〟の声だった。


「だぜ☆(きゅぴーん)」

 



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