第10話「潜んだ悪」

命なくして

死はない

僕は死ぬ

無論、君もね

だけどその節、君は死にたいなんて思ってない

生きてて当たり前とさえ、説いている

そうかな


生きてるから生きてるなんて

君は本当にお気楽だ

殺すために生きてる者もいるんだ

常に標的にされるのは

日常を生きる無垢なもの

悪は喰いものがあるから悪になっている

君の正義感は悪の標的だ


それも知らず生きるとは

なかなかこの世知らずなのか

はたまた、自分だけは大丈夫と

そう、世話にならない考えをしてるのか


いづれにしても

非常を知らずに

昼間を歩いて

夜には家族と談笑する

絵に描いた幸せ者だね


ほんと呆れるよ

君ときたら

今日流れた血の色を見ずに

ただ暖かなトマトスープを飲むんだ


該路地で死んでる死体も

一番星も知らない独房で夜を過ごす亡者も

君は全て、知らないんだ


なぜそこまで

幸せになれたんだ

いい性格をしてる

いい生き方をしてる


だけどね

一つ言おう

僕にはね、その幸せを奪える

力があるんだ

君はいつも通り歩けばいい


じゃあね。


君は知らずに生きればいいさ。

悪の見えない、悪の潜んだ道を行けばいいさ。

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