Layer4.0 質問
何を質問しようか少し考えてから、立花は姫石に質問をした。
「私が今、行きたいお店はどこでしょうか?」
「えっと、原宿にあるエックスンサングスっていうパンケーキ屋さん!」
姫石が俺を見ながら自慢げに答えた。
そんな自慢げに答えられても、俺は別に悔しくもなんともないぞ。
「どうだ、立花。今の回答で合っているのか?」
「はい、ちゃんと合っています」
「そうか。だが、この内容だとちょっとな……」
「ちょっと何? せっかく
姫石が考えた質問でもないのに、まるで自分に対して言われているかのように振る舞った。
なんでこんなのが頼れるお姉ちゃんみたいな存在なのか理解に苦しむ。
ひょっとして立花は実はかなり変わった子なのかもしれない。
こんなに守ってあげたくなるほど後輩感がある反面、包容力もある子がそんな変わった子ではないと願いたい。
「いや、別に文句があるとかそういうわけじゃない。確かに俺も今の質問の内容はいい感じだったと思う。ただ、内容的にパンケーキ屋に立花が行きたいって話を他の誰かが聞いていてもおかしくはないなと思ってさ」
「つまり、他の誰かから聞いたからあたしが答えられただけかもしれない。だから信憑性が低いってこと?」
「そういうことだ。姫石にしては冴えてるな」
「一言多い!」
せっかく褒めたのに、お気に召さなかったようだ。
「姫石先輩しか知らなくて、絶対に誰にも話していないようなことですか……」
立花がう~んと唸りながら考えこんだ。
「絶対に人に話さないようなことなんて、よっぽどの大切な秘密とかじゃない限りないと思うけど……あ! それってまさにあれのことじゃない?」
「あっ!」
どうやら立花にも思い当たったことがあるようだ。
「それってもしかして、さっき姫石が秘密を共有したとか叫んでたことか?」
「玉宮、あんたよくわっかたわね。なんか勘がいいっていうか、逆に気持ち悪いっていうか……キモい」
俺は褒められて、罵倒された。
新手のSMプレイなのだろうか。
俺にはそういう性癖は無いから何も嬉しくない。
「姫石先輩、それはさすがに玉宮先輩がかわいそうなんじゃ……」
この世の中は立花みたいな優しい女子がもっと増えるべきだと思う。
そうすれば戦争なんかも起きないし、世界中の老害のお偉いさん達が国連とかでごちゃごちゃ話し合うよりよっぽど世界平和に繋がる。
「歩乃架ちゃん、別に玉宮が先輩だからって気を使わなくていいんだよ。素直に言っていいんだよ」
世界から戦争が無くならない理由は姫石みたいな人間がいるせいだと、国連は本気で検討した方がいいと思う。
「私は気を使ってるわけじゃ……」
「けど正直、少しはキモいって思ったでしょ? ちょっとぐらいは」
「……まぁ、ほんの少しぐらいなら……」
やはり最近のSMプレイはこういうのが流行っているのだろうか。
こんなものが巷で流行るぐらいだと、世界平和も夢のまた夢だな。
……
こんな世界、俺が革命を起こして変えてやる! あれ? なんか目から汗が出てきた。
「あ~玉宮が泣き出しちゃった。ちょっとやりすぎちゃったかな? 歩乃架ちゃんもやりすぎはダメだよ。ほどほどにね」
「言い出しっぺはお前だろ!」
こんな人間を野放しにして、日本の警察はいったい何をしているのだろう。
姫石から多額の賄賂でも貰っているのだろうか。
それとも国家機密でも握っているため手が出せないのだろうか。
「ぷっふふふふふふ」
急に立花が笑い出した。
「どうしたの歩乃架ちゃん? 急に笑って。玉宮が泣いちゃったのがそんなに面白かったの?」
さっき自分でやりすぎたって言ったことを覚えていないのか、こいつは!
「そうじゃないんです。ただ、体が入れ替わっているってとっても大変な状況じゃないですか。それなのに姫石先輩と玉宮先輩の会話を聞いてたら、ちっとも大変な状況とは思えなくて。入れ替わりのことなんか気にならないくらい本当に仲が良いんだなぁと思ったら、なんだかおかしくて」
なんだか嬉しそうに、それでいて羨ましそうに立花は言った。
「俺と姫石は決して仲が良いわけではなくてだな」
「そうそう、歩乃架ちゃんが思うほど玉宮とはこれっぽっちも仲良くはないからね」
「仲良くないのなら、お二人はどんな関係なんですか?」
立花がおかしそうに聞いてきた。
「俺達は」
「あたし達は」
「腐れ縁なだけだ!」
「腐れ縁なだけよ!」
……
何で同時に言うんだよ。
「こんなに息ぴったりなのに仲良くないんですか?」
これでは立花に姫石と仲良くないことを信じてもらうことは難しそうだな。
まったく、これは参ったな。
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