うたた寝の記憶に絡まれて

朧田ハスキー

こんにちは、僕(?)




 椅子に座らず、座り慣れた床に座り、モノとゴミが散乱した生活区域を見渡す。

 薄笑いがこみ上げる、平日の午後。

 「……やばいな。これは」

 顎に手を当て、さも他人事のように事を軽くしようとしているのは自分の悪い癖である。

 いつかいつかと思いはするが、そのいつかいつかは片付けをせず、別の“方”の片付けを身に付けてしまったようで。

 ソレがこのザマだ。


 いつ、これがいつもの景色になってしまったんだろうな。

 ため息が落ち……いや、これもいつもの昼夜逆転の生活行いかと、事実が見えた途端に脳は全てを諦め、捨てた。

 これも私とってはお得意な考え方である。


 頭は重くて首で支えきれず、自然と後ろに倒れ、目線は上を向く。

 天井には長年の汚れが薄々と付いてるのが見える。知らぬ間に付いた生活汚れや、キョウダイと遊びじゃれた時の笑い汚れもある。

 懐かしいなと思いつつ、あれぐらいの綺麗なさまで自分の生活区域を片付けられたら、良いんじゃないか? そうしたら自分はよくやったと思うし、今の私は凄いとそう思うが、そんな気はおきないし、さらさらない。



 思うのは自由である。

 そして行動するのも自由である。


 だから何を“決める”のも私の自由である。

 




 この、ぐーたらな自分が。普通それなりの人生を生きれない自分が。

 先に行ってみたいワタシを待たせる。

 このままだとダメだと分かっていても、ふと別の事をやり始めたら忘れているのが根本の私。

 根本的な自分は変われてないまま、日常を喰い荒らしてる。

 日々を、時間を、無駄にしてる。


 あーあ。

 だから今日も、部屋も私も散乱したままで。

 ぐちゃぐちゃのままの毎日で。

 相変わらずなぐーたらさで。

 頭がぱー、な自分。

 ダレからか、なまけものと言われているようで。昔の言葉も消えない。


 じゃあ身体が怠けてんなら、頭もさぞ空っぽかと思いきや。いやいや、そうそう世の中は上手く行かないもんだ。


 頭ん中は好きな音楽がいつまでもループしてて、あるところまでいくとそれが止まらなくなる。頭ん中は変わりがわりに騒がしい。

 しかも頭に残るフレーズと曲が多くて、止めるのが大変。止めようとするけど、抜け出せない。

 何がなんであろうと再生し続け、終わりを知らないように、終わりなんてありもしないように私の頭は飽きもせず、流れ続ける。

 カセットテープのような終わりを告げるカチッとした音みたいなのが聞こえないくて。私のカセットテープは壊れて、無限をかいているようで。

 そこに宇宙があるようで。

 頭の中にブラックホールがいるようで。

 あの小さなプラスチックの箱に底がないみたいで。


 いつぞや来る、サビとイントロのタイムループには抗えない。沼にハマり続けるのだ。

 私はその音が止まることを知り得ないだろうか、このまま雑音に食い覆われて、私は何を得られるんだろうか。


 ただの虫食いか?


 人生を、時間を喰う。虫食いか?

 そりゃ、楽しそうだな。

 そりゃ、美味そうだな。

 そして凸凹の穴だらけになって、ぼーっと何かをなくしたと、消えてなくなったと思ってしまうだろうな。


 難しい。難しいな、ニンゲン生活。

 私には向いてないな。

 やっぱり、向いてない。


 不満が溜まってきたら、だんだん起きるのも、生きるのも嫌になってくる。

 なのに睡眠だけは馬鹿みたいに取りたがるこの身体。おかしいよね。

 睡眠で人生の糸を繋げてるみたい。


 少しずつ“生活”が出来なくなってくる。辛くなる。生活しなきゃなのに。ニンゲン生活。

 ニンゲンだから、それなりの人間生活しなきゃなのに。


 全てが、めんどくさくなる。

 そしてまたそこもループしてしまう。

 身体と心に意欲がなって段々と全てのスピードが落ちていく。


 食べることもめんどい。

 風呂入るのもめんどい。

 何をするにも、めんどい。

 “外”は輝いて見える、チカラはあるのに。

 めんどい、めんどい。

 全てがめんどい。


  





 “本当”を言えない自分が。

 “やりたい”を出来ない自分が。


 また頭の中でふつふつと沸騰し、ぶつぶつと言い蓄えた思いを、自身の身体の中に吐き出してる。血のように心臓で奇麗にならなくて、巡りもしないそれは、痛いを循環してる。


 自分でもそう思ってる。


 味気ない自分がいつまでもいつまでも体育座りで座って、目の前にある自分の両膝の間に、頭と背中を抱え入れるように丸くうずくまってる。

 それの状態が私のココロの造形姿。

 あーあ、つまらんつまらん。つまらん姿だな。

 そんな自分はどんな味がするだろうな。

 きっとくだらない味をしてるんだろうかな。

 でも美味しくないのは確かだろう。だって私は、味気ないのだから。当たり前だろう。


 一気に言葉が駆け巡り、ぼーっとした頭と、身体には疲れ老いたような感覚が身体に鈍刺ささる。 

 なんか、いつかの話を思い出しそうだ。


 『僕ね、最近別荘の管理人になったんだ』


 ぼやけた頭に知り合いの話が頭に浮かんだ。

 それは訳アリな話で。聞いた時は世間話のひとつと聞いていたのに、何故か気持ちが持っていかれる。

 そこに行けば、何か変わってくれると思った。

 この味気ない、ストレスに苛まれる日々に。どこかに帰りたいと日々、歌う身体に。 

 何かしてあげれるんじゃないかと思った。

 そこ行けば。そこ行けば。何かが変わると。


 ……自分は生きてもいいんだって思えるんじゃないか、と。



 その瞬間、ふっ________と少し意識が変わる。

 眼の前の景色になんか意識が向かなくなった。そして頭の中の中心に意識が行くようで。

 意識の表面はふわふわな思考だけど、だけどその中心部は冴えてるような。そんな感覚がする。

 でもそれは怖くなくて、それが私の思考を一瞬にして支配し、先導するかのように頭に消え馴染むから、何も恐ろしくはない。

 だって、たまにあるやつだから。

 そして次の瞬間には、ぱぁぁぁぁっっっと中心部が急に冷えて、でも目だけは力冴える様な、そんな感覚が追ってくる。



 あ、いけないいけない。

 逃しては、いけない。



 これは、逃してはいけない。よ。

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