うちの蚊がメモ帳に何か書いてた。

第1話

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　突然ですが、蚊です。

　１０月２３日に生まれ、奇跡的に今日（１０月２８日）まで生き延びた、蚊です。

　我々の命はとても儚く、脳みそと呼べるほどの物も持ってはいないのですが、私には奇跡的に知性というものが芽生え、更には触覚から放つ念力で電子機器を操作出来る能力まで獲得したものですから、これはまぁ大変ということでね。

　死ぬ前に一丁なにか残したるかと、そう思い筆を執る運びとなりました。何卒よろしくお願いいたします。……まぁ実際には侵入した民家にあった人間のスマホを勝手に操作しているだけですので、『筆』なんてものは実際に持っていないんですけどね。潰れちゃいますよ、あんな重い物持ったら。

　しかしまぁアレですね。

　ついさっき調べたところ、蚊の人生（いや虫ー！）というのは１０日ほどしか無いらしいですね。

　メスの場合は一月ほど生きるらしいですが、私はオスなのでもうすぐ死んでしまいます。多分後５日ほどでしょうか。……どうします？　貴方がお医者さんに余命５日宣告されたら。相当焦るらしいですね、人間の場合は。

　いやでもまぁ私の場合、焦りとかは特に無いですね。

　虫は基本大量に卵を産んで、後は武運を祈る人海戦術（虫ですが）・放任主義でやってきてるんでね。独り立ちするまで子供を育てる人間とはやっぱ違いますよね、死生観。

　知性を得た今ですら、私はただ生存本能に従って生きているだけっていう自覚を持ってます。人間みたいに「生まれた意味」とか「幸福な生き方」とか、そういうものは求めてません。

　ただ生まれて死ぬだけ。命なんてそんなもんです。

　命は皆一度きり。だからなにって感じですよ、蚊からすれば。私の兄弟200匹、殆どボウフラのときに死にました。ま、生きるなんてそんなもんです。蚊は、命を美化しないのです。

　今日は家主が帰ってきたのでこれまでとしましょうか。

　生きていたらまた明日、きっと何かを書きに来ます。

　それでは皆さんさようなら。