WORLD CONQUER ~ rio'z war ~

MICHIO'Z BLOOD

第1話憧れのアイドル

少女が静かに微笑みながら、けれど心の中では爆発しそうな位に気持ちが昂る。


あたいもあんなふうになりたい!

なれるかなぁ~


アイドルの歌声とファン達の声援が少女の心に流れ込む。

ドキドキが止まらない、そこらじゅうを駆け回って大声で叫びたい。

だが少女はそんな性格ではなかった、

どこにでもいる普通よりも少し可愛いがちやほやされる訳でもないので内気に拍車がかかる。


遠く見える人気アイドルの名はまい、少女と同郷なので想いも一際であるのだ。


ライブコンサートが終わりファンがぞろぞろと会場を後にする。

余韻に浸る少女の手にはノートが1冊収まっていて、少女のまいに対する想いが詰め込まれていた。


周りには誰もいなくなりしーんと静まりかえる会場内で、


よし、これをまいちゃんに見てもらおう。

勇気を出して楽屋に行くんだ!


そう決意し楽屋の側まで移動する。

楽屋前には会場スタッフや事務所スタッフ、そして芸能記者達が右往左往していてとても挨拶出来る環境ではなかった。


側を通った若い男性スタッフに声をかけてみる。


あのぉ、まいちゃんの生まれ育った地元に住んでるファンなのですが、


小声で伝えると男性スタッフは


あぁそうなんですね?えぇとそれじゃぁ、あっマネージャーさぁん、お~い。

あっ良かった、こっちにきてくれる。


向こうからぽっちゃりとした男性が歩いてくる。


あらぁどうしたのぉ?まいの次の御仕事まであと1時間しかないって言うのに。


いゃぁ、この娘さんがですね?まいさんと同郷って言うものですんでね。


そうなのぉ?へぇ~、まいと同郷。

まぁいいわ、ちょっと待ってなさい、今まいに話してくるからね♪


マネージャーはひと言少女に語りかけると振り返り、雑多な群衆に向けて大声で叫ぶ。


ごぉら~どかんかぁい~

まいにお客人がいらしてる、一同道をあけろぉ~


楽屋前が静まり皆こちらを向く。


あっ気がつきませんで本当にすみません。


手前にいた責任者みたいな男性が少女にお辞儀をすると、少女を楽屋の入口まで案内する。


コンコン、まいさぁ~ん、ちょっと宜しいですか?


はぁ~ぃ、どうぞぉ?


失礼しまぁす、本日はお疲れ様でした、まいさん。

この娘さんがまいさんにお逢いしたいそうで、宜しいでしょうか?


責任者の男性に促されて少女は楽屋の中に入る。


あらぁ、うらみちゃんよね?

大きくなったから一瞬誰かわからなかったけど。

そんなところにいないでもっとそばにきて?


少女がもじもじしていたのでまいが側に来るように促す。

意を決して少女がまいの側に立つ。


それじゃぁ、後は御願いしますね?


そう言って責任者の男性は楽屋を後にする。


ごめん、ふたりきりにしてもらえる?


スタッフにそう告げると


次があるんですから手短に御願いしますね?

10分ですよ?いいですね?


言い残して去るスタッフ。

扉の閉まる音がする、静まりかえる楽屋にふたりきり。


 ねぇうらみちゃんはいくつになったの?

7歳です。

 そう、もうそんなになるかぁ。

はい、まいちゃん、じゃなかったまいさんが地元を出るって聞いたのはあたいが幼稚園の時だったから、あれから2年は経ちます。

 そうよね、わたしうらみちゃんのオムツ変えたことあるのよ?知ってた?

はい、おかあさんから聞いています。

とても良くしてくれたお姉さんなのよぉって。

 おばさんには色々相談してたからね、慌ただしい時は御手伝いもしたし。

ですね、おかあさん、根は優しいんだけど人使いが荒いから。

 ふふふっ、わたしもみっちり仕込まれました。


そう言ってふたりで笑い合う、何とも微笑ましい光景だろうか。


 それで?今日はうらみちゃん、ひとりで来てくれたの?


はい、おかあさんにおねだりして。どうしても行きたいのならおうちの御手伝いするのよ?って。


楽屋にふたりの笑い声が響く。


 おばさんらしいね。

それと、ここに来るのも試練だから独りで行きなさい。って言われてですね…

 そう、わざわざ来てくれてありがとう。どうだった?

えっと、そのぉ、まいちゃん別人だった、あっまいさん。

 いいわよ?まいちゃんで。

えぇ~そういうわけには行きませんから。

 まぁ色々あったけどやっとこのステージに立てて、ファンの皆様がたくさん。本当に嬉しかったなぁ。

ですよね!凄かったですもん、歓声が。

 そろそろ時間が…ごめんね?折角来てくれたのにゆっくりおはなし出来なくて。

いえいえそんなお気になさらずに、えぇっと最後に…これっ、見てもらえますか?

 なになに?ノート?


少女はまいにノートを差し出す。


 うらみちゃん、これって…

わたしの想いをどうしても書き留めたくてノートにその時の気持ちとか書いてました。

 凄いね?これって全部あたしの事なの?嬉しいなぁ❤️

お恥ずかしいんですけど、ね。


突然、まいが最初のページを少女の目の前で引き裂いた。


まいちゃん、なにするんですか!

 なにってこれをうらみちゃんだと思って持ってようと思っただけだけどいけなかった?

えぇ~、それは光栄なんですけど。

 けど?

何か恥ずかしいじゃないですかぁ、字がへたくそだし。

 そんなことないよ?凄く嬉しかったもん♥️


コンコン、まいさん、そろそろお時間ですよ?


 はぁ~い、今支度してまぁ~す。

 さぁ、これはわたしが大事にもってるね?あとはこれ。また応援してね?


まいがノートを少女に返す。


まいさん、貴重なお時間ありがとうございました。地元にもどってまたノート書きますね。

 うん、そうしてくれると嬉しい。

それじゃあまた、からだ大事になさって下さい。

 大丈夫よ?これでも体力には自信あるんだから。


まいが両腕でもりもりポーズをする。

少女がそれを見て微笑む。


帰りの電車内でノートを見つめる少女。

破られたページを見て考え込むのであった。

 






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