自慢じゃないけど、僕は人が死ぬところを見たことがある。

 それは今から六年前、二〇一五年、十一月二十七日、金曜日のことだった。

十二月を直前に控えた町はすっかり冬に染まっていて、学校に行くために外に出れば、ナイフでも仕込んでいるんじゃないかってくらいに鋭い風が頬を撫でた。

見上げれば、太陽の輪郭を不鮮明にしてしまう薄い筋状の雲。息を吐けば白く、吸い込めば鉄の味。アスファルトのひび割れから生えたタンポポも、この寒さに頭を垂れていた。乾燥注意報が出ているだけあって、唇がピリリとする。親指は既にひび割れ、血が滲んでいる。学校に行かなければならないのに、踏み出した足は、凍り付いたように地面から離れなかった。

そんな、画に収められたような。寒い日だった。

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