「こんなにも魔術を使っていても気づかないものなんですね」

　ノエルが本の魔術を詠んでいる最中、ちょっと暇になったアオイがメア達の様子を見ながら呟く。その言葉にノエルもちらりとメア達の様子を見て、すぐに本に目線を向けた

「基本的に魔力がなければ魔術なんて分からないよ」

　一通り魔術を詠み終えたノエルが、ふぅ。と一息つきながら返事をした。二人の足元にあった二つの魔方陣消え、アオイが辺りにあった大量の本から一冊取り出し、ノエルに差し出した

「では、この魔術もお願いします」

　本を受け取り魔術を読む。見慣れぬ魔術の内容に、ノエルが首をかしげつつ、ページをめくる

「この魔術は使っていないし見たことないけれど……」

「これは、とっておきの魔術だそうです。最後の呪文は私が言いますね」

「私もそのとっておきを使っていいの？」

「ええ。魔力も必要ですから。前に現れた時に、少し書き換えたそうですから影響もないそうです」

　アオイの言葉を聞いてノエルがフフッと笑うと、アオイもつられて笑う。本が二人から離れ、空の方に少し浮かぶ。ノエルが目を閉じ、ふぅ。と深呼吸をすると、アオイが少し距離を取り本に書かれた魔術を唱えるノエルを見つめた

「あれ？なんか急に雰囲気変わった？」

　一方その頃、地上ではアオイやノエルを探していた部下の一人が足を止め、キョロキョロと辺りを見渡した。隣で一緒に二人を探していた人達が不安そうな顔を見て、不思議そうに顔を見合わせた

「えー、そうかなぁ？」

「うん、なにか……ねぇ」

　ふと少し離れた場所にいたメアを見ると、空を見上げ動かないメアがいた。部下達が近づいてみても、こちらに振り向かないメアに恐る恐る声をかけた

「メアさん、どうしましたか？」

　声をかけられても空を見たまま動かないメアに、側に来た全員も空を見る。すると、空に視界に入らないほどの巨大な魔方陣が現れていた

「なにあの魔方陣、見たことない……」

「もしかして、あの子の魔方陣？」

　ヒソヒソと話している間にも、魔方陣が大きく段々と声が大きくなり、暗かった辺りを明るくするほど眩い光を魔方陣から放っている。戸惑いざわめきだす部下達とは対照的にメアは嬉しさを隠せず魔方陣に近づこうと一歩足を踏み出した

「素敵ね。あんな魔方陣が見れたのなら魔力が無くなっても不思議ではないわ」

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