第40話 またもう一度

「はぁ。疲れた……」

 寝室の片付けを終えたノエルがぐったりと疲れた足取りでリビングに戻ってきた。椅子に座ると、残っていた紅茶を飲み、ふぅ。と一つ深呼吸をすると、ソファーでゴロゴロと休んでいたアオイがクスクスと笑った

「おかえり。片付け遅かったね。魔術使ってさっさと終えたらよかったのに」

「魔術は今は使いたくないの」

 そう言ったノエルの側に、キッチンに隠していた二人の好きなお菓子がふわふわと浮かんでリビングに来た。アオイがそれを見るなり、飛び起きてノエルの向かいにあった椅子に座り、二人向かい合って

会話をしながら食べていると、ノエルがアオイがゴロゴロしていたソファーにふと目を向けた

「また寝ているの?」

 ソファーの側にあるテーブルで本を布団代わりにスヤスヤ眠るアオイを見つけ、ノエルがため息混じりに呟いた

「そう。お菓子だけ沢山食べて、さっき眠った。今回はすぐに起きると思うよ」

「あまり無理させないでって言ったのに」

「無理なんてさせてないよ。体調くらいは分かるよ」

 ノエルの言葉にアオイが返事をしながら二人でスヤスヤ眠る姿を見た

「まあでも、もう私の本を読んで、理解するのはしなくてもいいかもね」

 そう言いながら最後のお菓子を食べると、うーんと背伸びをしたアオイ。その様子をノエルが少しボーッとしながら見ていると、リビング中に散らばっていたアオイの本が、突然寝ている方のアオイに集まりはじめた

「なにを……」

 ノエルの側に落ちていた本もアオイに集まりはじめ、本が次々に眠るアオイを囲うように固まりはじめ、あっという間に姿が見えなくなった。ノエルが呆然と見ていると、真向かいにいたはずのアオイがいつの間にか背後に来て、ノエルを後ろからぎゅっと抱きしめた

「私とあの子に、あの魔術をもう一度出来る?」

 ノエルの耳元で呟いたアオイ。その言葉を聞いたノエルは、頷くこともなく目を閉じた

「おやすみ」

 また耳元から声が聞こえて、そっと目を開けた。家の中にあったほとんどの本が眠るノエルのいる場所を中心にソファーの周りに集まり終え、その本の上に座るようにアオイがいた。ノエルと視線が合うとフフッと笑って、ゆっくりと姿を消した。二人のアオイが眠り静かになったリビングに、紅茶をティーカップに注ぐ音が聞こえ、ノエルが気持ちを落ち着かせるように、ふぅ。と一つ深呼吸をした

「居なくなっても、わがままで意地悪は変わらないままね。本当、困った人だ」

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