第10話 まだその時じゃない

 次の日の朝、ノエルが通う学校の近くの食堂で、アオイが朝ご飯を美味しそうにたくさん食べていた

「このご飯、とても美味しいです」

「それは良かった。またおかわりするかい?」

 ニコニコと食べる姿につられて笑顔になった店主の叔母さんが、アオイのテーブルにたくさん重ね置かれたお皿を見ながら問いかける。アオイもおかわりをするか悩みつつ重ねたお皿を見ると、ふと食堂の窓から見える道路にアクビをして面倒に歩くノエルの姿が見えて、ガタンと椅子から立ち上がった

「いえ、おかわりは今度にします!」

 店主の叔母さんに大声で言うと、パタパタと走って食堂を出た。ノエルの後ろ姿を見失わないように、早足で追いかけていく。曲がり角に入ったノエルに付いていくようにアオイも曲がった瞬間、ドンッと何かにぶつかった


「あっ、えっと……。こ、こんにちは……」

「まだおはようの時間だよ」

 目の前にいるノエルにあわてふためきながら挨拶をするアオイに、ノエルがため息混じりに返事をすると、アオイが少し恥ずかしそうに顔を背け両手を胸の前に置いてぎゅっとつかんだ

「話ししたくても、今は話せないよ。それに、今一緒に居たら、もう会えなくなるから一旦帰って」

 会って早々、帰るように言われ悲しげな顔でノエルを見た

「話しは今度聞くから。ほら、早く帰って」

「……またね」

 バタバタと走って帰っていくアオイ。すぐに足音が人混みに消えて聞こえなくなると、ノエルも学校へと向かうため一歩踏み出した時、今度はメアがノエルの前に突然現れた


「ノエルちゃん、こんにちは」

「まだおはようの時間ですけれど……」

「ああ、そうね」

 ノエルの返事を聞いてノアがクスクスと笑う。その笑う姿にノエルはムッとした表情になった

「それで、私になにか用事ですか?」

「ええ、ちょっと大変なことになってね。あなたの記憶を管理している魔術師達の魔力が大分無くなってきたようで、管理が出来ないと騒いでいるのよ」

 ノエルの質問に、ため息混じりに答えるメア。その様子がノエルにはわざとらしく見えて、ノエルも不機嫌そうに、ため息をついて聞き返した

「記憶といっても基本は食べて寝てばかりの記憶だから別に無くなっても……」

 そうノエルが言った時、メアの後を追いかけていた魔術師達がノエルを囲うように現れた

「あなたは良くても、大人の世界じゃそれはダメなのだから、ちょっと付いてきてくれる?」

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