第5話 うつ向いた気持ちに微笑みを

 一人施設を出たノエル。入り口の扉が閉じると、はぁ。と疲れた顔でため息をついた。少しうつ向いて、門を開けると、すぐ側にある木に、ナツがもたれかかって立っていた

「ノエルー」

 ナツが右手をヒラヒラと動かして名前を呼ぶ。スタスタと歩くノエルの隣に駆け寄りうつ向いたままのノエルの顔を見た

「今日も報告したの?」

「うん、いつもと何にも変わらずだけどね。いい加減もう止めてほしいよ」

「仕方ないよ。そのアオイって人のことも魔術のことも、ノエルしか知らないんだから」

 不満そうに話すノエルの背中をポンッと軽く叩く。その後は、ノエルの機嫌を治すため二人で楽しく会話をしながら帰り道を歩く。ちょうどノエルとナツが食後の対戦をした公園に着いた時、ふと見覚えの女の子がベンチに座って空を見ていた

「どうしたの?」

 急に立ち止まったノエルにナツが声をかけ、見つめる先に目を向けた

「ちょっと用事が出来たから、先に帰ってて」

 ベンチに座るその人を見せないようにナツの前に立ってそう言うと手を振り離れていく。置いていかれたナツがすぐ追いかけようとしても、あっという間にノエルの姿が見えなくなった






「やっぱりとてもドキドキする……。一緒にいるのは、たぶんちょっと恥ずかしいかな……」

 ノエルがベンチの前につくと、座っていた青い髪の女の子が胸に手を当てて呟くと、ふぅ。と一つ深呼吸をしてノエルの顔を見てニコリと微笑んだ

「あなたはアオイの生まれ変わり?」

「たぶん違うかな。たぶん、わかんないけど……」

 ノエルの言葉に少しうつ向きながら答えると、ふわりとそよ風が吹いて、青い髪がユラユラと揺れた。それを見たノエルが少し悲しげな顔をしていると、突然ぐぅとお腹の音が聞こえた

「お腹空いた……」

 しょんぼりとお腹をさする女の子の姿を見てノエルが少し驚きフフッと笑うと、女の子がベンチから降りて、ノエルから少し離れると、くるりと振り返りニコリと微笑み話しかけた

「また会いに来ます。またお話ししてくださいね」

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