第122話 俺の場合は(26)

「冴子、俺さ?」


「うん」


「アイツ……。俺の元婚約者だけどさ。俺がアイツの身体を何度も振り払ってクソ爺……。俺の元上司の部長の顔を殴るのを何度も、自身の身体を張って止めるんだよ。俺が本当に大変なこと……。刑事事件になるから辞めてくれと。あの時の怒り狂っている俺からしてみれば。アイツが調子のいいこと……。自分の男、部長をさ、守るのに必死なんだなと思うから。部長に対して嫉妬と憎悪をつのらせている俺は。アイツが止めれば。止める分だけ、部長の顔を一方的に殴りましたよ。もう、それこそさ? 部長が死ななかったのが、運が良かったのか? 俺も悔しいし、悲しいから泣いていたと思う? だから部長の顔を殴るのに力が入らなかったのか? まあ、その辺は、去年のことだから俺自身もすっかり忘れてしまったよ」と。


 俺は冴子に対して、にへらと笑いながら告げる。


「そうなんだ?」


「うん」、「うん」と。


 俺は冴子の言葉に対して頷き終えると。


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