時を掛け蕎麦して年越し蕎麦もしてしまう少女
菜月 夕
第1話
へい、お客さん、代金は800円で
えと、一枚、二枚、三。
タイムリープ!
六枚、七の八。まいどありがとうございやしたっ!
「えー、センパイぃ。それオカシクないですかぁ」。
「三百円払ったとこで六百円のとこまで時間を飛ばしたんだからそれで良いんだよ。納得いかないなら試すんだね」。
へい、お客さん。お代は八百円で。
一、二、三。
「え、と。え、と。確かタイムリープを…」。
四、五、六。
タイムリープ!
三、四、五、六、七の八。
ちようど800円。まいどです!
「あ、アレぇ。センパイの分迄ぇ」。
お客さん、時間を操作しましたねぇ。
知らなかったんですか?
時間はパラドックスを修復するんですよ。
だから前回の分もお客さんに行ったんだねえ。
ましてやここはソバ屋。
前回の代金は掛けになってたんだよ。
「せんぱいぃ、ひどいですよぉ」。
「申し訳ない。時間の強制力が君に向かうと迄は考えなかった。
そうだ、この手なら何とかなるはず。
昔はその年の勘定は年内に済ませないと帳消しになるという風習が有ってね。
これは時間の修復力が年内のみである事を示しているんだ。
幸い、あのソバ屋は小さくて大晦日でも深夜までやっている。
そこで支払いをする時を年越し間際にしてそこでタイムリープをするんだ」。
「あ、除夜の鐘もそろそろだ。勘定よろしくぅ」。
へい、お代は800円で。一、二、三…
「タイムリープつ!」
六、七、八
「あ、成功したぁ」。
へい、お客さん。今回はオロシ蕎麦なので代金の足りないとこは棚卸ししてますので、オロシた分も払ってくださいね。
「うーーん、またやられたぁ。せんぱいの莫迦ぁっ!」
時を掛け蕎麦して年越し蕎麦もしてしまう少女 菜月 夕 @kaicho_oba
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