第21話

 ソウが土手を歩いていると、一人の少女がなにやら、草むらで一生懸命、何かをしているようだった。

(何してるんだろ)

 近づいてみると、虫を捕まえているようだった。瓶もかかえている。指で摘まんだ虫を抱えた瓶の中に入れていた。

 虫が沢山中に入っている。

(……)

「何してんの君」

 少女は顔を上げ、ソウに目を向ける。

「虫さん捕まえてる」

「なんでそんなことするの?」

「好きだから」

「かわいそうじゃない?」

 少女は、その言葉を聞いたあと、瓶の中の虫をじっと見た。

 それからにんまりとした顔を見せた。

「今日はこれくらいにしとくね」

 ソウは不思議な人間の子供だと思った。

 少女は目をソウに戻す。

「あなたのその角はなに?」

 少女は、ソウの頭を観察するために、ぐっと近づいてきた。

 ソウは後じさる。

 金色の目が目の前の少女の顔をじっと見つめた。

「君、虫たちに愛されてるね」

「え?」

「瓶の虫の子らが嫌がってない」

「あたしが、虫さんたちの嫌がることをするわけないよ」

「ふーん」

 キー

 何かが擦れ合う高い音がした。

 少女が音の方を見る。

「あ、おじさーん」

 少女は笑顔で手を振った。

 ソウが少女の視線の先に目を向けると人間の男が手を振っていた。ソウの方を見ているようだった。自転車から降りて近づいて来る。

「君、精霊だよね?」

 ソウは何も応えずにもじゃもじゃ頭の男を見ていた。

「そうなの?」と少女が問いかける。

「うん」

「なんで、こんな人の住む所にいるんだ」

「困ったら、助けてくれるという魔法使いを探しに森からここまで来た」

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