第8話

「なんと!」

 男は高く飛び上がった。

 今度は違うページを繰り、本の中から水流がうねるように飛びだしてきた。

 少女が袖を振るう。

 近くを流れていた川の水が蛇のように伸びて、男の本から出た激流と衝突。

激しい勢いで飛び散る水の粒。

 じわじわと男の水流が圧されていく。

「さすがは森の精霊! 押し負けてしまうな!」

 男は本を閉じた。

 龍の姿となった水が男に向かってゆく。

水流が男に直撃。飲み込んだ。

 いや、男は本の違うページを開き、前にかざしていた。

 龍が男を飲み込んだのではない、龍が本に飲み込まれていた。

「本に取り込まれた!?」 

 少女はそれを見て、水の流れを止める。

「あの本、厄介です」

「ほい!」と少年。

 男が地上に着地するタイミングで、樹木が男に向かって伸びた。

「ほいさ!」

 だが、樹木も本の中に吸い込まれていった。

「ああ、飲み込まれちゃう」

 男は駆けだしている。

 少年に向かって突進していたのだ。

トトトトトトトトト!!!

 動物かと思えるほどの速さだった。

 少年は見上げた。

 男が本を広げて、自分に振りかざそうとするのを。

 息を飲み込んだ。

(僕を本の中に封じ込める気だ!)

「ソウ!」

 サラがソウを押して、ソウがいた場所にサラがきた。

「サラ!」

 本が振り下ろされた。

 サラが本の中に消えていく。

「サラアアアアアアアアア!!!」

 少年はそのまま川の中に落ちる。

 鼻と口に水が入る。

 川の激しい流れに押し流されていった。

 本のベージにサラの姿が浮かび上がっていた。

 どんどんサラと男の姿は遠くになっていく。

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