第6話

 枝の先に上がり、下を見やる。

 水は轟々とうねりをあげて激しさを増し、辺りは水で満たされていった。

「こりゃあ凄いぞ、ここまで来るかもしれんな」

 男の予想通り、もう水は男の上がった木の枝の辺りまで、迫りそうな勢いだった。

 水の水位が男のいる所まで到達すると、男は走りだした。

 水の上を一本下駄で走っているのだ。

「ほっほっほっほっほ」

 水位はそこで留まった。

 男は水の底に目をやる。

 底の方から、うねうねと黒い影が昇ってきていた。

「なんじゃ!?」

 水の竜巻のようなモノが男に向かって迫りくる。

「うわわわわわわわ」

 男は迫り来る水のうねりに飛び乗って、その背を駆け回っていた。

 水の竜巻は男を振り落とそうとするが、男はなんのその、竜巻の動きに合わせて走り回っていた。

 しばらくすると、水が引いていった。周りの土はドロになっている。

「さて、進むとするかの」

 とんがり帽子の男は再び進みだした。

 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう

 森の声が聞こえる。

「申し訳ないことをしているのう」

 男は髭を撫でる。

「すまんが、主様に会わせてくれんかー、どうしても会いたいんじゃー」

 さあああと風が吹いた。

 ドロだった土は乾き、草が生え、川の流れは穏やかになった。

 景色は先ほどの出来事が嘘だったかのように元の森に戻っていた。

 とんがり帽子の男が立っている所から見上げた左右の木の枝に人影がいた。

 右の影から声がした。

「あなたは、何しにここに来た」

 左の影から声がした。

「ここは精霊たちの森、あなたのような人間が足を踏み入れてはいけない森です」

「立ち去りなさい来訪者」

 二つの声が重なった。

「ほっほっほ、かわいらしい御使いさんじゃな、ワシはこの森の主に話しがあって来た。ワシはとんがり帽子じいさんと皆には言われておる者だ。どうか森の主に会わせてくれまいか」

「用はなに」「話はなんですか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る