第3話

林からヒョッコリと顔が飛びだした。

「サラ、木の実食べるかい」

 よいしょと言って髪の毛や服に葉っぱをつけた少年が林から姿を現すと、服を籠にして、赤い果実を沢山運んでいた。

「頂くわ、ソウ」

 サラは嬉しそうに微笑んだ後、立ちあがり、ソウから果実を受けとると、一口かじった。

「ちょっと座らせてね、朽ち木さん」

 二人は朽ちた木に腰掛けた。

 さも美味しそうに赤い実を食べていた。

「おいしいね」

「そうですね」

 ソウは寝床の傍に置いてある壺に、持ってきた木の実を入れた。

 二人は大きな大きな樹のひろおい洞を寝床にしていた。干し草を敷き詰めて、そこに寝ていたのだ。

オレンジ色の夕日が、地平線に落ちて幾ばくかの時。森の樹木が赤やオレンジ、黄、青、水色、カラフルに姿を変えていた。踊るように梢が揺れる。森が、葉が、色とりどりの花のような色彩になって終には金色に輝くようになった。そして日が落ちて夕闇色へとなっていく。

 夜になり、二人は星空を眺めていた。

 木々の間から、人の住む町では見られないような無数の星々が敷き詰められた、夜空が見える。

「お休みサラ」

「お休みソウ」

 朝になり森は深呼吸をする。日の光を受けて、木はシュー、と水蒸氣を吐きだした。

 二人は朝日に照らされ目を覚ます、二人そろって伸びをする。

「んー」

「んー」

 オカリナの笛の音が森に流れていた。

 それを聞きつけて、精霊達が近くに集まってくる。静かに聞きいるモノ達や、ふわふわと飛んでいるモノ達のように音に合わせて踊っているモノ達もいる。今日も森の一日が始まるのだ。

 キーン

 何かの高い音が鳴った。

 オカリナの音が止む。

 精霊達も動きを止めた。

 二人は森を見上げる。

 キーン

 また音が鳴った。

 上空で膜のようなものがうねうねと波打った。

「何か来た」

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