第2話
山の奥、
森のさらに奧。
だれも足を踏み入れない、木々や草花が生い茂り、動物達の住んでいる場所のもっと奧、そこに、精霊達の住処があった。
聞こえてくる鳥の声。
それが止むと、
森のざわめき、
風、
木漏れ日、
生物の姿はどこにもいないのに、音が溢れていた。
森の声がした。
自然達が歌っていた。
流れる川の水、清い清い水、朽ちた倒木、苔、大きな木、岩、大きな岩。
遙か太古の昔からそこにいたのだろう、生きている、自然は生きている。
大きなムカデの翅の生えた虫が飛び、大きなコガネムシのような虫が木に登り、光る蝶が飛び、七色に輝く魚が川を跳びはね、大きな角と体を持った鹿達が道なき道を駆けてゆく。ふわわ、ふわわ、と風船のようなふわふわしたモノ達が空を漂う。
風が吹き、
葉が揺れる。
ここは精霊達の森。
そこに二人の子供がいた。十歳くらいの男の子と女の子だ。
男の子は、手からツタをのばして、ツタからツタを渡り、森の木々の間を縦横無尽に跳ね回っていた。短い鹿のような角。茶色いくせ毛の髪の毛、緑の瞳。
シュルルルル、シュルルル。
背の高い大きな木の上を飛び越えて森の上に飛びでた。
良い天気。
「ヒャッホーウ!」
一方の女の子はというと、白銀の髪の毛におかっぱ頭、深く青い瞳、羽衣を纏っている。森を歩くでもなく、宙を浮かんでいた。薄桃色の布を腕にかけて、それがぷかぷかと揺れている。
川の水をひと掬い。
水をうっとりと眺めてから、ふーと一息、息をふきかけると、水が消え、代わりに、川のそばに色とりどりの花々が咲き乱れた。小さな妖精が着るようなドレス姿の花が咲いている。
「あなたたち、綺麗ね」
花達が君もだよと応えている。
「ありがとね」
と嬉しそうに女の子は微笑んだ。
後ろからガザゴソと音がした。
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