第14話 第二戦
―――――クソッ!!!
森の入り口で悔しがる声が聞こえる。しかし、その声はどこにも届くことはなく、ただただ静寂の空間に消え去った。
「――――なぁ、もう諦めるしかなくね?」
「諦めきれるか!」
クロエルは木を叩く、いや殴る。
「 そんなこと言ってもよぉ、俺もお前も勝てないんだから、どうしようもないって。あれは俺達が鍛えたところで恐らく勝てるのは数年後だろ」
レガンはクロエルに諭す。
「黙れ!………と言いたい所だが実際には私達が2人同時で奴に挑んだとしても勝てる可能性はあったらいいなぐらいしかない」
クロエルは勢いよく反論しようとしたが、打開策が無いため、なにも言えない。なにも現実は進まない。
「だろ? ならさぁ、もう剣は俺のやつ貸してやるからそれで我慢しろよ」
「………だが」
今のクロエルは赤ちゃんのようにわがままだ。だがそれも今回ばかりは仕方ない。
「俺達の本来の目的はさ、あいつに勝つことでもなく、剣を探すことでもなく、聖域を見つけて、過去に行く魔法を手に入れることだろ?」
「………そうだが」
クロエルは大変悩ましい顔をしている。本人だって本当はこんなことをしてる場合ではなく、一刻も早く聖域を見つけて、魔法を手に入れることだということは分かっている。でも、剣を諦めきれない。
「………だったらこうしよう。俺とタイマンで勝負して、俺が勝ったら剣はもう諦める。お前が勝てば、あの仮面野郎を探す。これでどうだ?」
思わぬ勝負に出た。その提案にクロエルは驚きの顔を隠せない。
「は? どういうこと? 私とお前が勝負してなんの意味があるんだ?」
その質問に対して腕を組み、堂々と答える男が一人。
「――――ぶっちゃけお前の剣が無くなったなんて俺にはどうでもいい。正直面倒くさい。――――そこでだ、お前は忘れているかもしれないが、俺はお前に負けたという事実がある。それが悔しくてたまらない。今すぐにでもリベンジしたい。だから、今回の件にかこつけて、俺と勝負して勝ったらお前に付き合ってやると言ってるんだ」
「はっ!付き合えるかそんなもの。だいたいお前が私に勝てるわけないだろう。――――こうなったら私一人でも探す」
クロエルは顔をそむけ、レガンなど相手にしていないような顔をする。
「一人で勝てんの?」
今までハッキリと答えを言ってきた女が急に黙り込んだ。そこに追い込みをかけるようにレガンはクロエルにゆっくりと近づきながら話す。
「それに、ここでお前と勝負すれば、俺は恐らく成長できる。そうすれば、聖域はもちろん、お前の剣も見つけやすくなる」
レガンは両手を広げ、大げさなリアクションをとりながら説得する。
「……………分かった」
今回ばかりはレガンの言う通りであるので、怪訝そうな顔をしつつもクロエルは従ったのだった。そして二人は黙って、お互いに距離をとり、二人の間隔が10メートル離れた時、お互い振り返り、レガンは剣を、クロエルは魔法陣を構えた。
―――――では、開始!
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