第16話 未来の荷物が到着するまで爆買い無双する葵2

『さあ次の商品の紹介に参りましょう!

 次に紹介する商品はこちら、東京都江戸川区にある老舗和菓子店”茶庵ちゃあん”の水ようかんです!

 店主が自ら小豆を求めて名産地である北海道の十勝にまで足を運び、生産者達と直接会い、自らの目と舌で確かめた末に選び抜いた小豆を使って作られた拘りの水ようかんです。

 ですがそれだけではありません!

 この水ようかんは何と全て手作業により作られているのです!

 店主曰く”手作業でなければ小豆の味を最大限に引き出せないから”とのことです。

 このような苦労と思いから作られた水ようかんが美味しくないわけがありませんよね?

 ということで早速試食して見たいと思います!

 ……これは美味しいですね! 滑らかな舌触りと小豆本来の甘さが絶妙なハーモニーを奏でています!

 美味しすぎて手が止まらなくなっちゃいます!

 ……えっ?早くお値段の紹介をして下さいって?

 もうっ! まだまだ食べていたいのに~っ!』


(……カンペに対して文句を言うなよ。

 食べたいなら自分で買えばいいじゃんかよ)


「この女優さん、面白いわね!」


 テレビの中で文句を言う姉にそう思っていると、未来がクスクスと笑いながら言った。


(確かに面白い、とは思うが……生放送中だってことをもっと自覚して欲しい)


 そう我が姉に対して思ってしまう俺。


『さ、さて気になるお値段ですが……この番組限定での販売ということで、1セット2本入りで3000円です!

 全て手作りということで、限定50セットでの販売となります。

 なくなり次第終了となりますので、お早めにお電話を!』


 これは早く購入しないとなくなってしまうかもな。

 番組限定での販売、ということは店で売っていないってことだと思うから。


「ねぇ葵?」


「ん?どした?」


「番組限定での販売って言ってたから気になって店のサイトを調べたら、店頭にもないらしいしオンラインショップでも販売してないみたいよ?」


 どうやら自分でも気になって店のサイトを調べてたらしく、俺にスマホ画面を見せながらそう言った未来。


「やっぱりそうだったのか。

 これは今すぐにでも電話してゲットせねば!」


「あ、私も食べてみたいから宜しくね~!」


 あの水ようかん、未来も食べたかったのか。

 そう言う未来に「了解」と返答してから電話を掛ける俺。

 やり取りの末、何とか最後の1セットを買うことが出来たことにホッと一安心した俺。



 それからも複数の商品を買っていった俺。

 その間のやり取りは以下の通りである。


『このドラム式全自動洗濯機(70ℓ)が何と驚きの7万9800円でのご提供です!』

「あ、もしもし? 今のドラム式全自動洗濯機ですが──」


『こちらのドレッサーのお値段は2万円ジャストで──』

「あ、これ欲しいわ!」

「分かった、買っとくよ」


『こちらの旬の野菜詰め合わせセットで──』

「これも買おっと!」

 ちなみに値段は3000円なり。


『こちらの高性能炊飯器は3万円ジャストでのご提供──』

「これも欲しいから買っとかないと」


『こちらのダブルベッドは9万8800円での──』

「葵、これは絶対に買いよ」

「……何故?」

「葵と毎日一緒にから!」

「何か含みを感じるんだが……」

「ナ、ナニモフクミハナイワヨ?」

「何で片言なんだよ……まあ買うけど」

「よしっ! これで自分のベッドは必要ないわね……フフッ♡」

 ……女の子が決してしちゃいけない顔をしてますよ~?


『女性に大人気のこちらの美容セットを、何と今だけ2800円でのご提供です!

 私も欲しいから見てたら買ってね、弟君!』

「これも欲しいわ、葵」

「了解!」


(姉よ……絶対に買わねぇからな!

 欲しけりゃ自分で買うんだな!

 それと再三言ってるが……生放送中だって言ってんでしょうが!

 次に会ったら説教確定だから覚悟してろよバカ姉!)



 そして気付けば最後の商品紹介となっていた。


『いよいよ次が最後の商品紹介となります。

 さて皆さんは私の目の前に置かれた台の上にある布を被せられている台座が見えますでしょうか?

 次いでに私が手袋をしていることにもお気づきでしょうか?

 何故これだけ厳重な扱いをされているのかと言うと、それだけ皆さんに紹介しようとしている商品が高額で取り扱いに気をつけなければならないからです。

 勿体ぶるのもアレなので、いざご対面!』


 そう言って姉さんが被せられた布を取る。

 布の下から現れたのは”ダイヤモンド”だった。


「綺麗…」


 現れたダイヤモンドを見てうっとりとした顔をしながらそう呟く未来。

 俺は俺で、まさか最後にダイヤモンドが出てくるとは思わずに驚いて声を上げてしまいそうになる。


『これは見事なカットをされた綺麗なダイヤモンドですね!

 手元の説明書を見るに、このダイヤモンドは0.5カラットの大きさのようです。

 ちなみにこの番組でダイヤモンドを紹介するのは、今回が初とのことです。

 何時までも眺めていたいくらい美しいダイヤモンドですが、視聴者の皆様が気になっているお値段の発表に移りたいと思います!

 そのお値段は50万9900円です! そして1点物です!

 ですので最初にお電話頂けた方にのみ購入権を得ることが出来ますので、プロポーズを考えている男性は特にお早めにお電話下さい!

 尚、販売終了時間はこの番組が終了するまでとなっていますので、予めご了承下さい』


 この時点……いや、ダイヤモンドを見た段階で実は電話を掛け始めていた俺。

 婚約した証として未来に婚約指輪を送りたいと思ったから。


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