第14話 未来の荷物が到着するまで爆買い無双する葵1

 遅めの朝食と片付けを済ませた俺と未来はソファーに2人並んで座り、テレビを見ていた。

 今はショッピング放送の時間だったらしく、有名女優の【 綾香あやか】がMCとして様々な商品を紹介する人気通販番組である。

 ……お察しの通り俺の”実の姉”がこの番組のMCをしている。

 姉のことは一先ず置いておくとして、MCが現在紹介中の人気コスメに未来が目を輝かせる。


「あっ! このコスメ、私が欲しかった物よ!

 でも人気過ぎて品切れ続失中で買えなかったのよね…」


「へぇ~、これが話題となっていた女性に大人気のコスメか。

 今この時間だけの限定販売で、次は何時入荷するか不明なのか。

 しかも100セットで早い者勝ち…」


「そうなのよ! それに今なら通常価格4860円…えっ、今ならその半額!?」


 未来が欲しかった……と聞いた辺りで俺は即座にスマホを操作してテレビ画面に表示されてる番号へ電話を掛け始める。


「あ、もしもし? 今紹介されてるコスメを買いたいのですが…。

 ええ、えぇはい、1セット…いや2セット購入したいです。

 はい、住所はですね───ええ、代金は一括カード払いで。

 ではそれでお願いします」


 電話を切って無事に購入出来たことに満足して隣を見ると、未来が口をポカンと開けながらこっちを見ていた。


「ん?どうした未来? そんな鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をして」


「ど、どうしたって……今掛けた電話って、もしかしてよね?

 まさか、よねぇ?」


「さっき掛けた電話?

 勿論、購入する為だけど?

 コスメ、欲しかったんだろ?」


「ええ、欲しかったわよ?

 ……えっ? 購入したの!?」


「うん、購入した。

 値段も安かったし未来が欲しがってた物でもあったから」


「あ、ありがとう葵!!」


 そう言って嬉しそうな顔をして抱きついてくる未来。

 この笑顔を見て購入して良かったと俺は思った。

 未来に抱きつかれながら再びテレビ画面に視線を向けると、MCが次の商品を紹介し始めた所だった。


『次に紹介するのはこちら!

 有機栽培で丹精込めて育てられた大振りなトマトを使用した【ミートソース】のレトルトになります!

 ミートスパゲッティやドリア、コロッケ等を作る時に重宝すること間違いなしの商品です!

 特に弟が作っ……失礼しました』


(生放送なのに何を言いかけてんだよ、あの馬鹿姉は…)

 余計なことを言いそうなった姉に心の中でツッコミを入れる俺。


『500g入り×20袋1セットでお値段が5000円となり、限定100セットでの販売となっています。

 ですが今回に限り20%引きの4000円でのご提供です!

 無くなり次第販売終了となりますので、お早めにこちらの番号までお電話を!』


 スマホを手に持って呟く。


「うん、これは買うっきゃないな!」


「えっ、葵? また買うの?」


「うん、買うよ」


 そう未来に返事して俺は電話を掛けて購入を完了させた。

 通話を終えて画面を見ると、丁度次の商品紹介に移った所だった。


『さ~て次の商品の紹介に参りましょう!

 規格外となってしまった林檎を廃棄するのは勿体なさすぎる! 味も変わらないんだし!

 もっと沢山の人に食べて貰いたい!

 そんな生産者の願いから作られたのが、こちらの【訳あり林檎のアップルパイ】です!

 このアップルパイは5品種の規格外となった林檎をふんだんに使っていて、1個につき1品種の林檎を使っているようです。

 それを今回は5ホールを1セットとし、7000円でのご提供となります。

 また、5品種をギュギッと1個に詰めたスペシャルバージョンもご用意しており、こちらは2ホール×1セットで5000円での提供となります。

 何方も限定100セットとなりますので、お早めにお電話を!

 あ、洋生菓子ですので届いたらお早めにお召し上がり下さいね!


 はぁ~、弟の手作りアップルパイが食べ……またやっちゃった…てへっ☆』


(だから生放送だって言ってんでしょうが!!

 それに、てへっ☆は要らんでしょうが!)

 などとまたツッコミつつ、俺は電話を掛けて購入する。


「また買ってる…」


「大好物だから買うの一択だった」


「葵はアップルパイが大好物だったのね」


「よく自分で作るくらいには、ね♪」


「そうなのね。

 なら今度でいいから作ってね?

 私も葵の手作りアップルパイを食べてみたいから!」


「分かった」


 そう未来とやり取りしてると次の商品の紹介が始まったので、会話を止めてテレビ画面を見る。

 特に俺は馬鹿姉が再びボロを出さないかの監視も兼ねて。


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