女子柔道部に見下されている高校生。実は...

@samabuu

第1話

高校の教室。湊は頬杖をついて、にやけながら窓を眺めている。

湊「はー。今日もいい天気だ。これが普通の学生生活だよなー。」


教師「こら杉崎!今は外を眺めている時間じゃないぞ!授業に集中しろ!」

湊「はーい。すいませーん。」2

笑顔で湊は答える!

みんなはクスクス笑っている。

(俺の名前は杉崎湊。常日高校の1年生だ。

部活は帰宅部。週3でコンビニのバイトをしている。)


(昼休み)

湊「さーて、今日は何食べようかなー。」


廊下で先輩の不良集団に肩がぶつかった。

湊「あ、すいませーん。」1


不良「おい!ちょっと待てこら!」

湊「ん?」1

笑顔で振り返る湊。

他の生徒たちは心配そうに湊を見ている。


不良「てめー見ない顔だな。1年か。てめーからぶつかってきてなんだその態度は?

ちょっとこっちこいや!」

不良が湊の腕を掴んで連れていこうとする。

晴香「やめなさい!」

不良「あ?」


晴香「寄ってたかって弱い者いじめ?かっこ悪いわね!」

不良「なんだと、てめー?」


晴香が不良の右腕を取って一本背負いを決めた。

不良「ぐは!」


他の不良「てめー!!」

体育教師「お前たち何してるんだ!」2

他の不良「ちっ、てめー後で後悔するぞ!覚えてろよ!」

晴香「ふん!いつでも掛かってきなさいよ!」


湊「あ、あのー。」

晴香「ん?」

湊「助けてくれてありがとうございます。」

晴香「気にしないで!昔から弱いものいじめってほんと許せないたちなの」

(弱いものいじめかー。ははは...)


晴香「そうだ!あなた部活入ってる?」

湊「部活?いや、入ってないすけど。」1

晴香「ちょうどいいわ。柔道部に入りなさいよ!」

湊「え?でもここって女子柔道部しかないですよね?」

晴香「ええ、そうよ。女子柔道部の練習に特別に参加させてあげる。

顧問の先生には私から言っておくから。

あなたみたいな貧弱男には女子柔道部がちょうどいいでしょ。

あんな奴らに苛められないように私が一から鍛えてあげる。」

(彼女の名前は沢村晴香。2年生で女子柔道部の主将らしい。)


湊「い、いやー。俺実は...」2

晴香「そうと決まれば今日から入部よ!たしか男子も体育用の柔道着持ってるでしょ!今から着替えて柔道場に来なさい!」

湊「え、あ、いやー...わかりました。」


(沢村さんの勢いにおされた俺は、野球部の部室で着替えさせてもらい、

しぶしぶ柔道場に向かった。)

晴香「来たわね!それじゃ、いきなりだけどこの子たちと乱捕りをやってもらうわ!」

湊は苦笑いで言った。

湊「え?マジすか?」2

晴香「言っておくけど女だからって舐めない方がいいわよ。

私達はこれでも区でベスト4まで言ってるんだからね!」


下手くそな演技で湊は代わる代わる女子達に投げられていく。

湊「わー。」


湊「いてー。」


晴香「ハー...あなた予想以上に弱いわね。もういいわ。

今日はもう帰っていいわよ。明日からちゃんと練習きなさいよ!」

湊「い、いや。明日は俺バイト入ってて。」

晴香「そう、じゃあ明後日からでいいわよ。」

湊「うー、はい。わかりました。」

(なにOKしてるんだ俺は!)


コンビニのバイト帰り。

湊「お先に失礼しまーす。」

(はー...ややこしいことになっちゃったなー。

もう柔道はうんざりなんだよなー。)


湊「ん?」

道端で晴香が先輩の不良たち5人に絡まれている。

不良「さっきはえらい恥かかせてくれたな。落とし前つけさせてもらうぜ。」

晴香「なによ!あなた達が弱いものいじめしてるのが悪いんでしょ!」

不良「この人数相手にまだ強気でいられるのか。見上げた度胸だ。」


冴島「へー、この子が例の...」

不良「そうなんです!冴島さん、黙らせちゃってください。」

冴島「へへへ、わかった。じゃあ、少し遊ばせてもらおうかな。」


晴香「誰が来たって同じよ!投げ飛ばしてやる!やー!」

晴香が冴島を投げ飛ばそうとするが、びくともしない。

晴香「う、動かない!」

冴島「んー?どうしたの?俺を投げ飛ばすんじゃなかったの?」


冴島が晴香の腹を殴った。


晴香「うっ!」

晴香がうずくまる。

不良「へへへ。冴島さんはこの前の柔道区大会の個人戦で優勝したほどの実力者なんだぜ。

てめーごときが勝てるわけねーだろ。」

冴島「ちょっとおしおきしなきゃね。連れてけ!」

不良「はい!」


湊「ちょっとちょっと。先輩方なにされてるんですか?」1

不良「て、てめーこの前の。」


晴香「に、逃げて!あなたなんかが敵う相手じゃないわ!

先生にこのことを早く伝えて!」


不良「逃がすわけねーだろ!へへ、ちょうどいい。この前の続きをしてやるぜ。おらー!」

不良が右手で殴りかかってくる。


湊は強力な一本背負いを決め、不良を気絶させる。

不良「ぐは!」


冴島「おー。お見事!君も柔道をやってるんだね。」


湊は無言で冴島をにらみつける。

冴島「おー、こわいこわい。なんかイライラしてきちゃった。」


冴島が湊の左襟をつかむ。


湊は冴島の右足を払い、宙に浮かせる。


浮かせたまま、冴島の胸を押し、地面にたたきつける。

冴島気絶。

冴島「がっ!!」2


不良「さ、冴島さんがやられた!うわー!」2

不良たちが逃げていく。


晴香「う、嘘でしょ。あんなに弱かったのに...」

湊「あれは演技です。中学時代休みもほとんど無しで

柔道の練習に明け暮れてました。2

プライベートなんて一切ない。柔道だけの中学時代でしたよ。

それが原因で俺は柔道が嫌いになり、柔道部が無い高校を選んだんです。」

晴香「杉崎...も、もしかしてあなた嘉納中学の杉崎!!」

湊「はい、そうです。」1

晴香「60キロ級個人戦で全国大会優勝したあの杉崎!?」

湊「はい、そうですよ。だから俺を鍛える必要なんて無いんです。

明日からは練習に行きませんからね。それじゃ、お気をつけて。」


晴香「ちょっと待って!」

湊「なんですか?」1

晴香「...お願いがあるの。」

湊「お願い?」

晴香「私達のコーチになってほしいの。」

湊「へ?」

晴香「私達は決して弱くはない。でも、どう頑張っても区でベスト4止まり。

一度でいいから優勝してみたい...お願い!力を貸して!」

湊「んー...わかりました。でも、力になれるかわからないですよ。」

晴香「ええ、それで全然構わない。少しでも強くなれる可能性があるなら。」

湊「あと、もし区大会で優勝することができたら今度こそ解放してくださいね。」

晴香「わかったわ。約束する。」


(こうして俺はまたもや沢村さんの勢いにおされ、コーチを引き受けた。

練習をみさせてもらって色々改善点があるにも気付くことができた。)

練習中、女子部員達が集合し、湊が部員達に話しているシーン。

湊「皆さんの練習を一通り見させてもらって気づいたことがあります。

沢村さん、ちょっとこっち来てもらっていいですか?」

晴香「え?うん。」


湊が払い腰でフワッと軽く晴香を優しく投げる。

晴香「うわー!!」


沢村が倒れた瞬間、湊が袈裟固めをする。

湊「投げた後、寝技に入るのが遅いんです。

投げたらスムーズに寝技に入れるように意識をしてみてください。」

晴香(ちょ、ちょっとー。やばい。ドキドキが止まらない。

なんでこいつにドキドキしてるのよ!止まってー!!!)


(それから3か月、俺は改善点を色々と見つけ、

徹底的に部員達に指導していった。

その結果、区大会で優勝することができた。)


(次の日の帰り道)

景色のきれいな道端にて。

晴香「ありがとう!湊くんのおかげで優勝することができた。

ほんと、感謝してもし尽せない!」

湊「いや、俺はただ基本を教えただけです。

優勝できたのは先輩達の努力の結果です。

では、約束通り今度こそ解放させて頂きますよ。」


晴香「う、うん...あのさ...い、今だからいうんだけど...」

湊「ん?なんです?」1

晴香「湊くんに急に抑え込まれたとき、すごいドキドキしちゃったの。

男子と寝技の練習なんてしょっちゅうやってたのに、あんなことなんて一度もなかった。

だ、だから...その...いや!なんでも無い!今の忘れて!」


湊「ははは!」2

晴香「笑わないでよー!」

湊「俺も全く同じでした。」

晴香「え?」

湊「平静を装うのがほんと辛かったです。」

晴香「え?そうだったの?」

湊「なんか...どうやら冴島さんのことが好きになっちゃったみたいです。」


湊「では、お疲れ様でしたー!」

湊は恥ずかしくなって走りだした。

晴香「えー!ちょ、ちょっと待ってよー!」


(それからあっというまに12年の月日が流れた。)

ちびっこ柔道大会決勝戦。

5才の男の子が柔道の試合に出ている。


晴香「こらー!修人ー!絶対勝つのよー!」

湊「落ち着けよ。恥ずかしいわ。

勝っても負けてもちゃんと褒めてやれよー。」

晴香「湊は甘い!勝負は勝たなきゃだめよ!」

(こりゃ、言っても無駄だな。

気が強いところは結婚してからも全く変わってない。

修人が負けた時、しっかり慰められるように今から言う事考えとかなきゃな。)


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