30 突然の連絡!
新たな小屋を披露してから落ちてしばらくした後、携帯に思いがけぬメッセージが入っていた。
『志月、お疲れ。突然だけど明日日本に着くからね〜。お土産もあるから楽しみにしてて!』
「……はあ!?」
それは、両親からの突然の帰還連絡だった。
◇
「と、言うわけで……どうしよう……」
緊急の案件なので和希と星奈にもう一度PPOに入ってもらい、プライベート部屋に集まった。
「どうするもこうするも、素直に話すしかないだろ」
「そうだね……どっか行って誤魔化す訳にもいかないし」
「あーもう、なんでもっと早く連絡寄こさないんだよ!」
うちの両親はいつもこうだ。というか、今の状況の件を抜きにしても夕飯の準備とか全く出来てないんだが。
「……まあ良いや。突然帰って来る事になったのは仕方ない。問題はどうやって話すか」
「だよな」
「だよねぇ」
いくらうちの両親が若干頭が飛んでるとはいえ『帰ってきたらあなたの息子は女の子になっていましたよ』を素直に受け止められるかはかなりの疑問だ。
「そう言えば、やたら辛辣な気がするけど志月って親と仲悪いの?」
「ああ、星奈は志月の両親に会った事無かったな。なんというか、ちょっと変わり者というか……」
「和希、言葉選ばなくて良いぞ。ぶっちゃけかなりの変人だから」
「どんな人なの……?」
「なんというか……年中夫婦でいちゃいちゃしてて、人間含めて色んな生き物の行動を事細かに覚えたりするのが好きで、しょっちゅう思いつきで行動する近くに居ると引っかき回されるタイプの人」
「……なんか、随分個性的だね」
「オブラートに包んでくれてありがとう」
まあ、あんなでもちょっと行きすぎなくらい愛してくれてるのは確かなので、もし受け入れられなかったらショックではある。
「でもなあ、どうやったら信じて貰えるだろうな」
「とりあえず俺は説得に参加するぞ」
「助かる。星奈は……いきなりあの刺激に晒されるのはキツいだろうからやめといた方が良いな。更に混乱する」
「そっかあ」
若干同情的な目をされたのは気のせいという事にしておこう。
「じゃあ、とりあえず明日は帰ってくる時間に和希にはうちに来てもらうって事で良いか?」
「ああ、それで良いぞ」
とりあえず和希が居るだけマシ……と思いたい。
「……大丈夫か?」
「まあ、なんとかなるだろうし大丈夫」
「なら、震えを止めてくれないと安心出来ない」
「え?」
自分の手を見るとブルブル震えていた。ああ……やっぱり怖いのか、俺は。気づかなかった。
「怖い時はね、素直に怖いって言っても良いんだよ?」
「星奈の言う通りだ。お前は全部1人で抱え込もうとする悪癖が昔からあるだろ。もっと頼ってくれ」
「けど、ただでさえ迷惑掛けてるのにこれ以上……」
「思ってない!」
突然和希が大声で机を叩き立ち上がる。
「迷惑だなんて思う訳無いだろ! もっと俺を信頼してくれ、いつだって助けになってやる!」
「和希くん」
「……すまん、つい」
呆気に取られる。和希がこんな勢いで捲し立てるのは滅多に見ない。
「私は和希よりは志月と一緒に居る時間短いけど、それでも迷惑だなんて思わないよ。だって、逆の立場だったら志月だって迷惑に思わないでしょ?」
「あ……」
そっか、みんな同じなのか。なんで気づかないんだろう。
「だから、怖いなら怖いと言ってくれ。本当は怖いんだろ?」
「……怖い」
受け入れられないのが怖い。そもそも、こんなの受け入れられる人の方が少ない。
「もしお前なんて知らないって突き放されたらどうしよう。お前なんて自分達の子供じゃないって言われたらどうしよう。そんなの……嫌だ」
「……その時は俺が全力で説得してやる。だから心配しないで、俺の事を信じてくれ」
「和希……」
真っ直ぐな眼を見つめる。力強く、安心出来る眼だった。
「信じてあげて。きっと大丈夫だから」
……もちろん、絶対なんてない事は分かっている。それでも、2人の言葉で安心する事が出来た。
「それじゃあ……明日は、頼むよ」
「おう、任せとけ。大船に乗ったつもりで居ろ」
こうして、出迎える準備を整えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます