27 木材収集!

 今日はとある用事があるので、待ち合わせ場所の噴水に居る。和希は一緒なので、待っているのはあと1人。ちなみに、ギルドバッジの件はやりたい事があるので一度後回しにした。しばらく雑談しながら待っていると、時間通りにやってきた。


「おはようムーン。お疲れ」

「おっ、来たな。サムエルのおっさん」

「おっさんは余計だっつの。で、そっちが……」

「ヤマトです。よろしくお願いします」

「おう。こないだも挨拶はしたが、サムエルだ。よろしく頼む」


 今回、力仕事になりそうなのでサムエルのおっさんも呼んでおいたのだ。それに、一度はこのメンバーでやってみたかったのもある。


「ところでムーン、猫被らなくて大丈夫なのか?」

「あー、ヤマトは例外だから気にすんな。それじゃ行こうか」

「はいよ、出発しよう」


 俺達はフィールドへ歩いて向かう。その途中、気になった事があったのかサムエルから質問が飛んできた。


「なあ、ムーンの職がウィザードになってるのは何でだ? 装備は大剣のままだから本格的に転職って訳でも無さそうだが」

「ああ、ちょっとウィザードに取りたいスキルがあってな。共通スキルで習得レベルも低めだから取っておきたいんだよ」


 PPOのスキルは職依存の《エキスパートスキル》と、どの職でも使える《ベーシックスキル》に分かれている。今習得したいのはベーシックの方なので、覚えてしまえばアタッカーに戻っても使う事が出来る。


「なるほどな。それで素材集めのついでに雑魚でレベル上げって魂胆か」

「そういう事」


 ぶっちゃけ覚えられるくらいレベルが上がるかは微妙な所があるが、転職自体は簡単に出来るのでまた暇な時にやれば良い。

 そうこうしている間に、目的地の森へと着いた。


「さて、今日やるのは木材集めだ。ひたすら木を切ってギルドに運んで、木を切ってギルドに運んでを繰り返す。結構な重労働だ」

「降ろす場所はあんのか?」

「ギルドの庭を一時的な資材置き場にする許可を貰ってある。という訳で、インベントリが一杯になったら一度ギルドに帰るぞ」


 ちなみに、木は切っても勝手に生えてくる。というか、森の木の本数はめちゃくちゃ多いので多少切った所で数は減らない。


「ところで、木を切り倒すのってどれくらい疲れるんだ?」

「俺の体ってのを差っ引いても結構な重労働だぞ。インベントリに入れるまでは実体のままだし、きちんと支えないで当たったりしたら普通にダメージ食らうからな。和希には事前に教えてあるから、まずはサムエルに教える所からだな」

「マジか、結構大変そうだな」


 今サムエルのおっさんに説明したように、実は木を切るのは結構面倒だったりする。最も、基本的にPPO運営のスタンスが『趣味のクラフトは手間も楽しんでください』との事らしいので、方針通りとも言える。

 という訳で、早速作業を始める。と言っても黙ってやるのも寂しいので、雑談を交えながらやる。


「あ、ちなみにクラフト素材しか手に入らない場合は入手時にちょっとだけクラフト経験値入るぞ。良かったな」

「俺はクラフトしねえしなあ……」

「同じく」

「楽しいのに……」


 うーん、同意が得られない。

 ちなみに、クラフトに注力しているプレイヤーの数はそこまで多くない。やはり冒険をしてみたいという需要が大きいようだ。

 一方で、サンドボックスゲームで建築に凝っていたりする人はクラフトにハマる傾向があるようだ。自分の建築がリアルに見る事が出来るとなれば、そりゃ拘る人はハマる。ちなみに俺は建築とか大好きなタイプなので見事にハマった。


「ま、報酬が貰えるなら文句は言わねえよ。結構金欠だからなあ。装備とかアイテム揃えるとソロは大変でな……」

「金なら腐る程持ってるからな、いくらでも良いぞ」

「良いよなあムーンは」

「けどその代わり働いてる時間が長くて全然冒険出来てないからな。そこはおあいこだよ」


 実際、クラフトを始めてからギルドのメンバーからレベルが結構離れかけている。流石に前線職のレベルが低いのは不味いので、そろそろ集中的にレベル上げをするつもりだ。


「しっかしサムエルのおっさんもソロで良くやるよなあ。俺だったら絶対無理」

「ま、正直最近はどっか入らないとキツいかなあとは思ってるけどな。野良パーティはやっぱ限度があんだわ」

「サムエルさんがうちに入ってくれたら結構バランス良くなると思うんですけどね。後衛職3人、前衛職3人になるし」


 確かに、和希の提案通りサムエルのおっさんが入ってくれればバランスが良くなるのは確かだ。


「いやあ、あの若いメンバーの中に俺が入るのはな。正直かなり躊躇するぜ?」

「そうだよな、俺みたいな女の子と一緒に居たら事案だもんな」

「うるせえ。というか事案になると思ってるならムーンは俺を不審者にするつもりで誘ってるって事になるが?」

「ははは、冗談だよ!」


 口調だけならキツいがニヤニヤしながら言ってるので向こうも冗談なだけだ。サムエルはこういうのに乗ってくれるから楽しい。


「まあ、本気で考えてるなら一度話持ってきてくれても大丈夫だぞ。付き合いもあるしな」

「ああ。俺達のギルドはまだ人数も少ないですし、人手が増えると助かりますから」

「ま、考えとくわ」


 軽い勧誘をしているうちにインベントリが一杯になったのでギルドへ戻り、全ての木材を地面に置く。そしてまた森へ戻り、雑魚を捌きながらインベントリが一杯になるまで集めてギルドへ戻るという作業を5回程繰り返した。

 ちなみに意外と経験値も早く溜まり、欲しかったスキルの《フロート》を覚える事に成功した。


「今日はありがとう。これが報酬金」

「ありがとな。……おい、事前に聞かせてもらったより2割くらい多いぞ?」

「今後もご贔屓に代って事で。もしクラフトするならうちに来てくれよな」


 そう伝えるとサムエルがガッハッハと笑う。


「わざわざお前みたいな腕の良い奴以外選ばねえよ。ま、そういう事なら受け取っとくわ。今日はお疲れ」

「ああ、ありがとな。また!」


 そう言ってサムエルと分かれる。

 さて、資材も集まったしこれで準備は整った。


「さあヤマト、明日は忙しいぞ!」

「おう。やり方とかはちゃんと調べたか?」

「もちろん。他に必要な物も揃えた、前準備は完璧だ」


「さて、俺は明日に向けて休む! お疲れ!」


 そう言って、俺は大量の木材を目の前にPPOを落とした。


 さあ、明日に向けて気合を入れないと!

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