2章 ギルド活動、開始!
16 次の結束へ!
「それじゃ、乾杯!」
「「「「かんぱーい!」」」」
ミカルフ討伐の後、俺達5人は街の酒場に集まり打ち上げ会を行っていた。
「いやー、疲れた」
「ヤマト、お疲れ。私も疲れたわ……」
ちなみに、タメ口を聞かれてしまったので開き直って和希相手には一人称以外いつもの喋り方にしている。これから先うっかり漏れた時に一々取り繕うのも面倒だし。
「そういえば、なんでヤマトくん相手の時だけタメ口になるんだい? もし良ければ聞かせてくれないかな」
「幼馴染なので、一緒に遊んでるうちに口調が移っちゃって。今もつい出ちゃうんです」
嘘は言ってない。一部の事実を伏せているだけだ。
「なるほどね。でも、結構年齢差あるのに幼馴染なんだね」
「えっ?」
あ、そうか。ルースさんとパメーラには年齢言ってなかったっけ。
「すいません、私この見た目だけど17歳なんです」
「ああ、そうなのか。このゲームを遊ぶには随分若いと思っていたけど余計なお世話だったね、ごめん。どうしても大人だと小さい子相手だと保護者的な目線になっちゃって」
「別に大丈夫ですよ。気にしてないですから」
別に心の中で思ってる分には迷惑にはならないのにわざわざ謝るとか聖人過ぎないかこの人。まあ大人ってのもあるんだろうけど。一方……
「えーっ!? ムーンちゃん私と同い年!?」
「あ、そうだったんですね。じゃあこれからは遠慮なく呼び捨てに出来ます」
「私ムーンちゃんの中でどういう扱いになってるの!?」
どういう扱いって、自分の過去の行動を思い出してみて欲しい。
「あのですね。今までパメーラが私にしてきた事を考えてみてください。守ってあげるだとか抱き着いて良いよだとか、自分がそう言われたらどう思いますか?」
「役得!」
あ、駄目だこの人。それとも女子は同性相手だと遠慮が無かったりするらしいしこれが普通なのか? 裏でひっそり星奈にメッセージを送って聞いてみる。
『なあ星奈。女の子の触れ合いってこれが普通なの?』
『男子よりはスキンシップするけど、これはパメーラがちょっとおかしいだけだから勘違いしないで』
良かった。世の中の女子がみんなあんなのだったらどうしようかと思っていた所だった。
「だってこんなかわいい女の子に抱き着いてもらえたら嬉しいでしょ? カリンもそう思うでしょ?」
「え? それは……うーん……」
いや、何で悩むんだよ。さっきの発言の説得力無いぞ。
「2人ともやめろって。ムーン困ってるだろ」
「そーだそーだ」
和希に便乗する。こういう時心強くて助かる。
「むー……ムーンちゃんは本当にヤマトくんが好きなんだねー」
「いや、別にそんな事は無いですけど」
どう間違ったってそれはない。
「えー、だってさっきの見ててもそういう風にしか見えなかったよ? 明らかに気合が違ったし」
「気のせいです」
別にやるべき事をやっただけだ。あれが防御力が低い星奈やパメーラだったとしても同じことをしていた。
「うーん、そっかー」
パメーラがまだニヤニヤしながらこっちを見てくるが、とりあえず納得してくれたようだ。そもそもどこをどう見たらヤマトを好きなように見えるのか謎だけど。そんな話をしていて、急に思い出した。
「そういえば、アップデートあるんでしたっけ?」
「ああ、お知らせ来てたって言ったね。主に予告されてたサブ要素の実装みたいで、目玉はギルド機能とクラフト要素みたい」
「へー、そうなんですね」
気になったので仮想ウィンドウからブラウザを表示する。ギルドは一般的なものみたいだけど、クラフト機能は結構独特なようだ。
「えっと、『クラフト機能は職業とは別に独自スキルとして実装されます。クラフトレベルに応じて作った物の品質が向上しますまた、本人の器用さに応じて現在のレベル以上の物も制作する事が可能です。ただし、ステータスに影響しない物のクラフトにレベルは影響しません』……ステータスに影響しない物ってどういう事なんですかね?」
「例えばギルドハウスだったりマイハウスの家具だったり、プレイヤーのアクセサリーだったりそういう物にはレベル補正入らないみたい。流石にゲーム補正自体は入るみたいだけど」
「あー、そういうのって拘りたい人は拘りそうですもんね、本人のセンスもあるし。これ家具職人みたいな人も出てきそうだなあ」
というか、自分がなりそうだ。物作りは好きだし。
「でもこればっかやってたら攻略が疎かになりそうですね……それは嫌だなあ」
「いや、そうでもないぞムーン。アクセとか家具製作自体はクラフトレベルが対象にならないけど、制作した時の経験値はきちんとクラフトスキルに入るらしい」
「マジか。つまり家具とか作ってるだけで勝手にクラフトレベル上がっていくって事? なにそれ素敵」
うーん、本気で目指してみようかな、家具職人。
「あ、でも売る相手が居ないか……」
知り合いも少ない上実装直後は需要も少ないだろうし売れる相手が……と思っている時に、ルースさんが素敵な提案をしてきた。
「それならうちに来るかい?」
「えっ?」
「実はね、ギルドを作ろうと思ってて、まずここのメンバーを誘ってみようとは思ってたんだ。良ければ入るかい? もちろん、作ってもらった家具とかはこっちで買うよ」
なるほど、ギルドか。確かに少し気になりはする。メリットもちゃんとあるし。
「条件とか聞かせてもらっても良いですか?」
「もちろん。まず、基本的には緩い雰囲気でやろうと思ってるから強制参加のイベントとかはやらないつもりだよ。もちろん、合わなかったらすぐにやめてもらって構わない。あとはギルド内でのアイテムのやり取りとか、そんな所かな。もちろん今後の追加要素で変わる部分はあるかもしれないけど、ガチでやるって感じにはならないかな」
ふむ、悪くない。
「ヤマトとカリンはどう?」
「今回の攻略楽しかったし、俺は良いぞ」
「私も元から知り合いだし入ろうかなって思ってるよ」
うん、なら決まりか。
「それじゃ、ギルド開設したらお願いします」
「ありがとう! 機能解放されたらメッセージで招待するね」
「分かりました!」
それにしてもギルドか、あんまりネットで特定のコミュニティに入ったりしないから新鮮だ。
「そしたら、とりあえず明日はギルドハウス候補を探そうか。そんなすぐ見つかるとは思わないから、散歩がてらね」
「実はゆっくり会話する時間少なかったしねー」
「うん、交流会って奴だな」
「グラン城下街自体もあんまり観光出来てないから、色んな所行こうね」
「楽しそうで良いですね!」
そもそもこのメンバーがガチ攻略プレイヤーの集まりじゃないのもあるけど、こういうのは友達と集まってるみたいで楽しい。こうやってリアルな距離感で楽しめるのはフルダイブVRならではだなあ……これで体が元のままなら最高だったんだけど。
「あ、みんなお金の事情はどう? 一応補助金はあるらしいし僕はお金貯めておいたからこのメンバー規模のギルドハウスなら多分買えると思うんだけど、最終的にはいくらかは出してもらおうと思ってるからさ」
この人はどんだけ優しいんだろうか。まあ、だからこそ協力したくなるんだけど。
「いくらか、じゃなくてちゃんと払いますよ。財布に余裕もあるし、みんなのギルドですから」
「俺も出せるぞ。それに、せっかくならみんなでお金出しあった方が妥協しないで買えるだろ」
「そうだよー。ルースのそういう所は昔から好きだけど、自分だけが使う場所じゃないんだからさ」
「うん、みんなでお金出して、みんなのギルドハウスにするのが素敵だと思うな」
そしてそれは他のみんなも同じらしい。やっぱり信頼ってこういう所で作られるんだなあ……見習っておこう。
「……そうか。そうだね、みんながそう言うならみんなで平等に出して買おう」
ギルド設立に向けて話がまとまった。ルースさんが立ち上がる。
「それじゃ、一度やったけどせっかくだからもう一回……ギルド結成を祝って!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
さあ、これから楽しくなりそうだ!
――この時、ギルドハウス探しで一悶着あるとは誰も思っていなかったのである。
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