フルダイブVRMMOを遊んだら女の子にTSしてました!
えこだま
1章 変化の始まり!
1 アバターは女の子!?
「やっと発売した……!」
俺は歓喜に打ちひしがれる。今日は待ちに待った世界初のフルダイブVRMMOのパラレルポータルオンライン、通称PPOの発売日だ。今までもフルダイブVR機器は存在していたが、一般人向けとは言えないようなハードルの高いものだった。ところがこのPPOは、一般人向けを謳った初のフルダイブVRMMOなのだ。しかも必要なヘッドセットは低価格で同梱されているというおまけ付き。これのお陰で自分のような学生でも手に入った訳である。ちょうど夏休み期間でもあるため、この夏に遊び倒す算段だ。
さっそく遊ぶために友人の
『これから入るけど、準備出来てる?』
『もう入ってるよ。こっち来たら教えてくれ、そっち向かう』
『OK』
どうやら和希はもう入っているらしい。こっちもさっさと入ることにした。
名前などの基本情報を入れてからキャラクリエイト画面へ入る。
PPOのアバターは基本的にある程度リアル基準である。顔と体格くらいはいじれるが、性別、身長はそのまま。リアルとかけ離れすぎると感覚が普段とズレ過ぎてゲームプレイに影響があるから、らしい。なので本来ならまず自分そのままの姿が出てくるはずなのだが……
キャラクリエイト画面に浮かんでいるアバターは見覚えのない中学生くらいの女の子であった。顔はなにもいじらずとも整っている童顔で、目は深い青。髪はロングで、色は茶髪より少し明るいブロンド。きっとリアルに居たら注目を集めるだろう。問題は……
「この子誰? 全然知らないんですけど……」
リアルの姿とかけ離れていることであった。なんで? リアルでの湊 志月は間違っても女子中学生ではなくれっきとした男子高校生である。
「戻ろう……にも戻れないなこれ」
キャラクリエイト画面から戻ることも出来ないらしい。当然性別を変えるボタンもないため、仕方なくそのまま進める事にする。後で運営になんとかしてもらおう。OKボタンを押して先に進むとプロローグムービーが流れて最初の街へスポーンした。このPPOの特徴の1つに時代や世界観を問わずファンタジーやSFなど様々なロケーションを楽しめるというものがある。どうやらこの最初の街は中世ヨーロッパ風らしい。
職業案内所へ行くようにアナウンスが出たが、その前に和希へチャットを送り合流する。オンラインでの名前はヤマトである。大きい和だからだとか。ちなみに自分の名前はムーンである。そこ、単純すぎるとか言わない。
『案内所前で待ってる。頭の上にネームプレートあるからすぐ分かると思う』
『了解』
他のプレイヤーの頭の上には名前が出るらしい。とりあえずこの姿でも分かってもらえそうで安心した。
マップを頼りに案内所前まで来ると、既に和希が待っていた。元々顔立ちが整っているのもあってあまり弄っていないようですぐ分かった。さっさと声をかける。
「おまたせ」
「……あの、どちらさまでしょうか?」
一応名前は見えているはずだがそれでも怪訝な顔をされる。まあそりゃそうだ。リアルの姿が反映されるのに女の子になってます! とか普通にありえない。仕方がないのでチャットを送る。
『今お前の前に立ってるのが俺だよ』
「……はあ!?」
こっちの顔をまじまじと見つめて素っ頓狂な声を上げる。失礼だな。
「あんまり大きな声出すなよ、注目されるだろ」
「そうは言ってもなお前……」
「まあ良いや、事情は後で説明する。とりあえず人目の少ない所に移動するか」
微妙な顔をした和希を連れて微妙に周囲から注目の目を集めつつ、あまり人の集まっていない場所へ移動した後一連の事情を話す。
「信じられねえな、そんな事あるのか」
「まあ初日だからな、バグもあるだろ。俺も流石に驚いたけど」
「それにしたってなあ。運営に報告したか?」
「これから。後で他のプレイヤーにもそういう報告出てないか調べてみるか」
とりあえず運営に報告メッセージを送った後、今後を相談する。
「こんなになってるし、ムーンは一旦落ちるか?」
「いや、どうせ対応には時間かかるだろうしこのまま進めるわ。とりあえず職業決めくらいはなんとかなるだろ」
そう提案すると和希も納得したようで、2人で職業案内所へ向かう。中はかなり広く、机などで飲食も出来るようになっておりそこそこ盛り上がっていた。
カウンターへ行くとNPCに『どちらの職業をご希望でしょうか?』と聞かれた。
「どの職業選ぶんだ?」
「もう決めてある。アタッカーで」
アタッカーは前衛職である。そもそもこのゲーム、職業はタンク、アタッカー、ウィザード、ヒーラーの4つしかない。運営曰く『あくまで世界観を楽しんでもらいたいため、VRに不慣れなプレイヤーの事も考慮して単純化した』とのこと。ちなみに和希はウィザードである。
アタッカーの特徴はとにかく攻撃力が高いこと。機動力に優れ、物理武器ならどの武器も扱う事が出来る。その代わり、魔法があまり使えなかったり耐久力が劣っていたりする。要は突撃思考の脳筋で向けである。
「細かい事考えられないお前らしいな」
「うるせえ。別に良いだろアタッカー。楽しそうじゃん」
実際自分の体を華麗に動かして戦う姿にはロマンがある。一度やってみたい事のうちの1つだったのだ。
カウンターのNPCに『それではこちらの就職クエストを受注、完了してください』と促され、目的地へ出発する。内容は街の案内も兼ねた街中でお使いをするというものだった。ちなみに、これは他の職業でも同じらしい。
あまり面白くもないので和希と雑談しながら進めていたら、無駄に時間がかかって夕方になってしまった。空腹アイコンが表示され、現実で食事を取ってくださいという案内が表示された。
「あー、無駄に雑談して時間かけすぎたな。ちょっと飯食ってくるわ」
「俺も。後でまた入るからチャットしてくれ」
仕方ないので一旦落ちて夕飯を作る事にする。現在両親は出張中のため実質一人暮らしなので、自分で作らなくてはならない。
ヘッドセットを外すとブロンドの髪が視界に重なって……あれ? なんで?
視点を下に降ろすと服はぶかぶかになっていて、肌も何故か女の子のようにすべすべになっている。嫌な予感がして布団から降りると、目線も低くなっている。洗面所へ急ぎ鏡をのぞき込むと、そこには……
「俺、女の子になってる!?」
先ほどまでVRの中で存在していた女の子が、そこに居た。
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