無能だとクラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、召喚された異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~
空地大乃
第一章 召喚された生徒編
第1話 妄想の日々
「チッ、こんだけってテメェ約束が違うだろうが! 五万持って来いって言っただろう!」
そう叫んだ直後、高橋 勇人の拳が俺の顔面を捉えた。
「ひぃいぃい! 許してくださいごめんなさいぃいい!」
俺は地べたに頭を擦り付けて勇人に謝罪した。このままじゃこっちの身が持たない! 俺は必至だった。
「ごめんで済むなら警察いらねぇんだよ糞が!」
コメツキバッタの如くペコペコ頭を下げた俺の髪の毛が掴まれ思いっきり引っ張りあげられた。
そして今度は膝が腹にめり込み口からゴホッと息が漏れた。
「おらおら!」
「あぁ勇人切れちゃったよ」
「たく、言う通りにしておけば痛い目見ずに済んだってのに」
勇人の仲間がニヤニヤした顔で俺に暴行を働く勇人を眺めていた。
「ごめんなさいごめんなさい! 生きててごめんなさい! 息してごめんなさい!」
はっきり言えば俺はこの連中からいじめを受けていた。今も手持ちの五千円を奪われた上で、それでは足りないと殴る蹴るの暴行を受けていた。
「おらブタ野郎! 罰だ豚の真似してみろ」
「ブヒィ、もう許して欲しいブヒィ! 勘弁して欲しいブヒィ!」
「はは。マジでやったよ。プライドねぇのかよ」
豚のように鳴く俺を連中が嘲笑した。こんないじめは勿論今に始まったことじゃない。最初は教科書を破られたり机に落書きをされたり些細な物から始まったが、それが暴力に移行するまでそう時間はかからなかった。
このエスカレートするイジメを少しでも軽くする為なら豚の真似事だってなんだってやってやるさ!
「全くこいつは本当クズの豚野郎ですね勇人さん!」
勇人の隣で眼鏡の男がゴマをすった。吉川という男でこいつは薄笑いを浮かべてご機嫌を取るのに必死だ。
「はは。吉川もいい性格してるぜ。こいつ元々はお前を庇おうとしていただろう?」
「はて? そんなことがありましたっけ? もう忘れましたよ」
仲間の一人が呆れたように語りかけると、何事もないように吉川が答えた。
この連中が言うように最初にイジメを受けていたのは吉川だった。それを見て俺は止めに入った。
『や、やめなよ。い、イジメなんて、そ、そんなのぉ、良くないよぉ……』
俺なりに何とか勇気を振り絞ったつもりだったんだがその結果がこのザマだよ! そう。そこから勇人たちのいじめのターゲットが俺に変わった。しかも段々と吉川にも俺へのイジメを強要するようになった。
もっともこいつは言われるがまま俺を殴り、そこからあっという間にエスカレートしていったんだけどな。
今やこいつも立派ないじめっ子の一人だ。
「そろそろ戻らないとヤバいぞ」
「チッ。いいか猟牙言うことを聞かないならこれからはもっと酷いからな」
「ハハッ、ひで」
「それにしてもあいつ完全に名前負けしてるよなぁ」
「というか
「吉川も本当言うようになったな」
「俺は今のこいつキライじゃないぜ」
そんな会話をしながら連中が去っていこうとしたが。
「隙あり!」
「な、お、俺の腕がぁああぁあ!」
「はは。油断したな。俺は本当は暗殺が得意なんだよ。お前らぐらい、いつだって殺せたんだ」
「う、うそだと! いじめられっ子のお前が暗殺者だなんてギャッ!」
「や、やめてください。ごめんなさい殺さないで」
「今更謝っても遅いぜ。オラオラオラッ!」
「「「「「ぎゃぁああぁあああぁあああ!」」」」」
そして俺は謝罪するいじめっ子連中を容赦なくぶっ殺しあたり一面血の海に――
「あいつ、何か一人でニヤついてるぞ」
「キモイ野郎だな」
「本当ですよね。だからイジメられるんですよ」
……そう。いまのは全て俺の妄想なんだ。実際は俺を残して小馬鹿にしながらいじめっ子連中が去っていっただけなのだ。
だけど、それだって今だけだ。そう俺はまだ本気を出してないだけだからな!
そして午前中の授業も終わり昼休みになり学食に向かう。食事を取っていると取り巻きを率いた女が近づいてきた。
「あらあらいつも寂しそうね。可哀想にそんな貴方にこれを恵んでさしあげますわ」
そう言って女、荒北 恵利がペットボトルを置いた。雑誌のモデルをしている女でネットの配信でも登録者が多く人気の女だ。
この女見た目には美人だし胸も大きい。男にも勿論人気な上、女子のクラスカーストで一番だけあって取り巻きの女も多い。
ただし性格には難ありだ。そんな恵利が俺にタダで飲み物を寄越すとは思えない。絶対何か裏があると思うんだが。
「どうしたの早く飲みなさい」
「ほら! 恵利様がこう言ってるんだからとっとと飲みなよ!」
「は、はは。嬉しいぃイィッ! 荒北様から恵んで貰えるなんて!」
取り巻きの女が苛立った顔で声を張り上げたから俺は、出来るだけ怒らせないよう精一杯の媚を売り、渡されたペットボトルを口にした。もれなくして俺は猛ダッシュでトイレへと走った。
女達の笑い声が聞こえてくる。下剤が仕込まれていた。便座に腰を掛けて、うんうん踏ん張っていると上から水をかけられた。
「くせぇくせぇ、臭くて堪らねぇから洗ってやったぞ感謝しな」
そう言い残して複数の足音がトイレから離れていったが――
「どこへ逃げるつもりだ?」
「な! 猟牙!」
「は? なんでトイレにこもってたん、じゃ?」
目の前で呆けた顔をした奴の心臓を俺の手刀が貫いた。奴は何が起きたかわからないといった顔をして酸素不足の近業の如く口をぱくぱくさせている。
そいつを地面に放り投げると地面に尻を付けてガタガタ震える奴らを見た。
「ヒッ、ヒッ、お前何を」
「殺し――」
そう返した直後にもう一人に首を折る。ボキッとあり得ない方向に折れ曲がり横倒しになった馬鹿を後目にアワアワ情けない声を上げながら四つん這いになって逃げようとしている豚の背中を思いっきり踏みつけた。
潰れたカエルのような情けない声を上げ背骨が折れたそいつも死んだ。他愛もない出来事だった。
息をするより簡単だ。そう簡単な筈だ――
「……こんな風に出来たら楽なんだけどなぁ」
トイレの中で独りごちる。いまのもやっぱり全て妄想なのだ。実際にやったわけじゃない。
で、でも俺は本気出してないだけだから! 今は勘弁してやってるだけさ。俺は優しいからね!
「はぁ虚しい。戻ろうかな……」
トイレから出て教室に戻った。周囲のニヤニヤした視線が気になる。机に戻るとその理由がわかった。
菊の花が入れられた花瓶が置かれ机には油性マジックで落書きがされていた。
「酷い……どうしてこんな!」
すると眼鏡を掛けた女の子がやってきて眉を顰めた。委員長の
「誰がこんな落書きしたんですか。こんなの間違ってます!」
聖羽がクラス中に響き渡る声で問いかけた。この子は自分の事でもないのに本気で怒ってくれているようでもある。
このクラスにおいて唯一俺を庇ってくれる存在が彼女だ。実は以前にもこんなことがあった。
その時にも彼女は俺が虐められている可能性があると訴えたほどだ。
「あらあら委員長。貴方、クラスの皆を疑うの?」
さっき飲み物に下剤を仕込んでいた荒北がやってきて委員長に言った。
正直この時点で誰が先導したかなど明白だったが俺は何も言えずただ見ていることしか出来なかった。
「でも、じっさい猟牙くんの机に酷い落書きがされてるし」
「私は彼の自作自演だと思うわ」
委員長の訴えを一蹴し荒北が自分の考えをねじ込んできた。当然俺にそんな覚えはないんだけどな。
「そんな自作自演だなんて……」
「俺はあり得ると思うぜ」
荒北の意見に追随してきたのは高橋だった。
「猟牙はクラスで孤立していたからな。だから俺もなんとかしてやろうと構ったりしていたんだがな。結局こいつは心開かず変わらなかった。でもだからってそんな真似してまで皆の気をひこうとしたなんてな」
「マジかよ。猟牙最低だな」
「根暗だと思ってたけど本当陰湿ね」
「そんなんだから誰も相手しないんだよ」
「…………」
委員長以外の全員があざ笑うように口にする。その様子に委員長も動揺していた。
「おい猟牙お前の気持ちもわからなくもないけどな。おかげでクラスの皆が委員長に疑われたんだぜ? 何か言うことはないのかよ?」
「そうよ謝りなさいよ」
「待って! 自作自演なんて決まったわけじゃ」
「僕見たよ! 猟牙が自分で机に落書きしてるの!」
そう証言したのは吉川だ。周りの連中がニヤついているあたりつまりそういうことなんだろうな。
「ほら見ろ証言者もいたらもう言い訳できないだろう?」
高橋が決定的証拠を突きつけた探偵のごとくドヤ顔を見せる。もっとも捏造でしかないんだけど。
でもこのクラスで俺の味方をしてくれるなんて今も一生懸命声をあげてくれている神女さんぐらいなものだ。
「おい吉川、だったらなんですぐに言わなかったんだよ」
吉川の周囲の連中が決まった台本を読み上げるように問いかけた。
「僕、猟牙くんに脅されていたんだ。言ったら殺す! て……実は前から僕目をつけられていてそれで抵抗出来なくて」
「おいおいマジかよ。お前吉川をイジメてたのかよ最低だな!」
「これは問題ね。委員長。私達を疑う前に彼のイジメについて協議したほうが宜しくって?」
「え? で、でも……」
荒北の詰問に委員長が戸惑っていた。委員長が何も知らないのは確かだろうが何も知らない分なにが真実かも見極められないと思う。
「猟牙あなた本当に最低ね。これは謝って済む問題じゃ、え?」
気がついたら俺は荒北の頭をつかんでいた。荒北が顔を顰めて俺を見る。
「貴方一体何のつも、ぶぎぇッ!?」
荒北が全てをいい切る前に俺はその顔を机に叩きつけていた。机は破壊され荒北の顔は床にめり込んだ。
「は? おい猟牙何してや――」
高橋が全てをいい切る前に俺の腕が胸部にめり込み心臓を抉り取っていた。
教室が悲鳴に包まれるが構うことなく俺は委員長以外を全員屠っていた。あっという間に教室が血の海となりぺたんと座り込む委員長の姿。
「そ、そんなどうして?」
悪いな委員長。これが俺の本当の――
「ちょっと猟牙聞いてるの!」
――ここまでが俺の妄想。現実では荒北が耳障りな声で叫んでいた。うぅやっぱり現実は甘くない。
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