ミステリーを生み出すには

 前回、自分たちでミステリーに新しい風を吹かせよう、と書きました。そうはいっても、読むことはできても、いざ書くとなるとかなりハードルが高くなります。私もそうでした。


 そこで皆さんに数冊の本を紹介します。まず一冊目、その名も『ミステリーの書き方』。この本、日本推理作家協会が出版しています。


 そして本書は有名ミステリー作家が独自の創作論を惜しみなく披露してくれます。東野圭吾に赤川次郎、宮部みゆきに有栖川有栖をはじめ総勢43人の作家が携わっています。ミステリーを書くにせよ、読むだけにせよ、本書は読み物としても面白いです。


 本作の目次を見ただけで「これを求めていた!」となりました。「アイデア発見のための四つの入口」、「プロットの作り方」、「視点の選び方」、「文体について」など。これらはミステリーに限らず一般論としてためになりました。ミステリーばかりを書くわけではないので。


 肝心なミステリーについての項目は「手がかりの埋め方」、「叙述トリックを成功させる方法」、「本格推理小説におけるプロットの構築」などなど。ミステリーを書きたい方は必読と言っても過言ではないでしょう。



 そして二冊目。江戸川乱歩の『続・幻影城』です。私は光文社版を持っているのですが、内容が濃い。乱歩のミステリー愛が伝わってきます。


 『ミステリーの書き方』では文体等気をつけるべき点がメインでしたが本書は違います。トリックを類型別にかつどの小説で使用されているかまで網羅しています。ただ、ネタバレのオンパレードなので注意が必要です。一つの方法としては、列記されているトリックをヒントに作品に活かすのもありだと思います。


 ミステリーは先人たちが多くのトリックを考案しており、なかなか斬新なトリックは出てきません。斬新なトリックを思いつけば、ミステリーの公募で受賞間違いなしです。


 でも、どのトリックが既存のものか分かりませんよね。だって、ミステリーを片っ端から読んでたら数十年かかりますから。そこで『続・幻影城』の出番です。

 三題噺のように一つのトリック、例えば「一人二役」で一作書く、とすれば面白いように思います。


 カクヨムのミステリーに関していうと、読み切りもしくは1万文字以内の完結作がトップ3を独占しています(2023年12月10日時点)。残念ながら10万文字を越えると文字数を見て読むのを忌避する傾向にあるようです。私もせっかく書いた長編が、読者が少ないです。悲しい……。


 『続・幻影城』を読み一つのトリックに絞りショートショートのように書くと良さそうです。あくまでカクヨムでミステリーをメインにするならです。公募を目指す方は複数のトリックを出し惜しみせずにいきましょう。

 一つのトリックで一作品、これは私が今実験中です。うまくいくかは分かりません。



 三冊目、『東西ミステリーベスト100』。こちらは入手が難しいかもしれません。平成25年発行の週刊文春だからです。こちらはその名のとおり、東西のミステリーで有名どころをそれぞれ100冊列挙してくれています。


 本書に書かれたミステリーで気になる本を読めば、ある程度のミステリーを網羅でき、既存のトリックとのかぶり防止に役立ちます。



 最後に『図説 密室ミステリーの迷宮』です。こちらは私が敬愛する有栖川有栖氏が監修しています。本書は密室ものだけにスポットを当てています。ミステリーと言えば密室と思います。密室ものを書きたい方はご一読をおすすめします。2010年発行なのでこちらも入手が難しいでしょう。




 以上、ミステリーを書くにあたって参考になる本の紹介でした。

 これらを参考にガチガチのミステリーがカクヨムにも現れることを願って。

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